三十一箇所目 ここ滋賀 COCOSHIGA 日本橋

 ここはお江戸日本橋……のはずですが、日本橋越えたら、あちらに富山、こちらに奈良、山口、長崎、島根に山梨?


 さすがは五街道の出発点。


 お江戸から全国発へのチャンスをうかがって、日本橋にはアンテナショップがいくつも点在しているというわけですね。


 アンテナショップとは、地元の名産品、特産物の販売をして郷土のことを知ってもらったり、観光情報を提供して観光客の誘致を図ったり、イベントやワークショップを開催して、郷土の文化などに親しんでもらって興味をもってもらう、体験型情報発信拠点のことを言います。



 さて、今回は、昨年秋、日本橋交差点にオープンした滋賀県のアンテナショップ「ここ滋賀」を訪れてみました。


 こちらは、一階にコンシェルジュのいる総合案内、マーケット、イベントエリア、テイクアウト、地酒バーのコーナーがあり、二階にレストランがあり、三階にテラスがあります。


 詳細情報は、webサイトでご覧いただけますので、ここからは、個人的な興味感心の赴くままに記していきます。



 では、早速。


 なぜ滋賀県のアンテナショップへ行ったかって?


 それは、もちろん、本を買いに、です。


 滋賀県には、知る人ぞ知る、滋賀県、近江、琵琶湖にまつわる、自然、生物、食、歴史、酒、伝承、郷土の文化などの情報を発信し続けている出版社があります。

 地方の情報は、その土地で出版されている本に、おもしろい発見があるものです。

 アンテナショップで本を扱っている所は、あまり見かけないので、ここ滋賀は、その点で私の中では注目度高めです。


 と、説明しているうちに、時計は1時半をまわりかけています。

 ランチタイムのラストオーダーは、確か1時半です。

 急がねばと階段を駆け上がり二階のレストラン「日本橋 滋乃味」へ。



 店内に入ってまず目を奪われたのは、窓際に並んでいる色とりどりの一升瓶です。

 ブルー、グリーン、ブラウン、クリアサイダーカラー。

 日本酒の一升瓶って、形は同じでもずいぶんといろんな色があるのだなと見惚れているうち、あ!と閃きました。



――スマートニュースのコンテストで、アンテナショップの地酒めぐり話を書けばよかった!――



 後のまつりです。

 

 だいたい、滋賀県一県だけでも、窓にずらりと並んでる一升瓶の数の多さ。

 からだ壊しますよね、都内のアンテナショップ全部まわってたら。


 気を取り直して、滋賀県産材のテーブルと椅子の設えの席について、ランチを注文し終えて、窓辺に居並ぶ酒びんから視線を下におろしてくると、琵琶湖のヨシのグラフィックが目に入ってきました。


 ヨシはあしのことです。

 夏の日除けに使われる葦簀よしずなどはみなさんもご存知だと思います。


 「葦辺あしべには、たづがね鳴きて 湖風みなとかぜ 寒く吹くらむ 津乎つおの崎はも」 若湯座王(わかゆえのおおきみ) と、『万葉集』でも琵琶湖のヨシは詠われています。


 水辺に人の背丈よりも高く生い茂るヨシの原。


 壁に連なるヨシの原が、ゆらゆらとそよぎだして、そよぎに釣られて視線を泳がせていたら、がさがさと音がして、そんな浅瀬にはいないはずのビワコオオナマズが、ひょっこり顔を出しそうになったので、慌てて目をしばたたくと、テーブルに今日のランチが届きました。



 本日のランチ。

 近江一汁三菜定食。

 滋賀県産の食材の料理が、信楽焼しがらきやきの器に並んでいます。


 いただきます。


 主菜 滋賀県産鶏のこうじ漬け焼 皮は香ばしく、身はやわらかくふっくらとした味わいでした。付け合わせのサラダには、同県産の百花蜜のドレッシングがかかっていて、こちらもほの甘く美味しかったです。


 副菜 近江八幡名物赤こんにゃく入り卵焼き なめらかさが不思議な赤こんにゃくが色どりを添えています。 タテボシ貝入りおから あまりこの辺では見ない貝でした。味は普通のあさりやしじみよりしっかりしています。 滋賀県産トマト 水っぽくなくて甘すぎず美味しかったです。


 香の物 たくあん 昆布の佃煮 たくあんのしょっぱ加減がごはんのおともにぴったりでした。


 お味噌汁 大根の鬼おろし入りお味噌汁 鬼おろしの大根がしゃきっとしていて大根自体の味をしっかり感じることができました。


 ごはん 高島市産コシヒカリ やわすぎずかたすぎず美味しく炊けていました。


 なんだか食レポのようですね。

 一汁三菜でも満腹になりました。


 ごちそうさまでした。



 食後は、階下のマーケットへ。


 マーケット内には、滋賀県各地の観光案内情報のパンフレットやリーフレットが並ぶコーナーがあります。

 忍者の里甲賀市は、まっぷるの特別編集冊子で詳しく紹介されていました。


 ここ滋賀の月刊ガイドブックは『SHIGA’S GUIDE』です。

 レストランのクーポン券がさりげなくはさんであります。


 その他に、首都圏で滋賀の食や文化に触れるためのガイドブック『SHIGA-KU 滋賀区』という冊子があったのですが、これには、「滋賀を読む」というブックガイドが載っていました。

 このページの担当は、長浜市の古本屋さんのさざなみ古書店さんです。


 紹介されていた本のうち、『からくりからくさ』 梨木香歩著と、『近江山河抄』白洲正子著は、読んだことがありました。

『負けんとき ヴォーリズ満喜子の種まく日々』玉岡かおる著と、『恋ちゃんはじめての看取り―おおばあちゃんの死と向きあう』國森康弘写真(いのちつぐ「みとりびと」シリーズ第一巻)農山漁村文化協会は、今度読んでみたいです。

 ヴォーリズの建築見に行きたいなー、って前にもどこかでつぶやいたかな。


 この四冊、紹介文に目を通しましたが、淡海の自然の恵みのような滋味豊かなセレクトだと思いました。


 一通り店内を見てまわってから、本日の本題、アンテナショップで見つけた本を手にとりました。


 『湖魚と近江のくらし』滋賀の食事文化研究会編 サンライズ出版


 先ほどランチでいただいた食材のうち、タテボシ貝というのが気になって、調べてみようと思ったのです。

 ところが、その名では、ページをくってもなかなか見当たりません。

 で、スマホで検索しますと……「石貝」イシガイ……という貝がタテボシ貝のことだと判明しました。


 石貝は載っていました。

 セダシジミやカラスガイとともに、琵琶湖で知られている二枚貝の一種です。

 立烏帽子貝すなわちタテエボシ貝が詰まって、タテボシ貝になったそうです。

 名前の通り、その細長い形は、平安貴族の立烏帽子のようです。


 ぎゅっとしっかり淡水の貝の味が凝縮されています。

 ランチでは、おからのアクセントになっていましたが、炊き立てご飯に佃煮にしたのをのっけても美味しそうです。

 ほかほかごはんに、甘辛い佃煮パターンですね。


 ちなみに、この本は、淡海文庫という、滋賀県の歴史伝統文化、自然などを伝えるために創刊されたシリーズの一冊です。

 

 地元の良きことを伝えるために文庫シリーズをつくってしまう人が出てくるというのは、淡海のもつ豊かさのなせるわざなのかもしれません。



<最寄駅>

地下鉄銀座線「日本橋駅」

地下鉄東西線「日本橋駅」

詳細はホームページでご覧いただけます。


<今日買った本>

『湖魚と近江のくらし』

 滋賀の食事文化研究会編

 サンライズ出版発行



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