三十箇所目 弥生美術館 竹久夢二美術館 根津

 レトロ浪漫に浸りたい時は、こちらにお邪魔します。

 そして、本や雑貨に散財して、ほくほくしています。

 乙女とレトロと浪漫の宝庫弥生美術館、そして、竹久夢二美術館。


 東大の弥生門と道路をはさんで斜め向かい側にあります。

 かつてはその道筋に、高原の風に吹かれて佇む少女が胸に抱くのにふさわしい詩人立原道造の記念館もあったのですが今はありません。


 弥生美術館は、挿絵画家高畠華宵の一枚の絵がきっかけとなって誕生しました。


 昭和初期、一世を風靡していた挿絵画家、高畠華宵が描いた「さらば故郷!」と題された、凛々しい美少年の絵に、深い感銘を受けた少年が、成人後縁あって画伯との親交が始まり、華宵の死後18年の後に、弥生美術館を創設しました。

 多感な年頃に出会った芸術作品、文学作品は、その人の心に深く刻みこまれるのですね。


 弥生美術館と隣り合って建つ竹久夢二美術館は、同創設者の夢二コレクションが展示されています。

 大正ロマンといえば、夢二美人、夢二美人といえば大正ロマン。

 これほど、時代とイコールで語られる画家もめずらしいと思います。


 いずれの美術館も、年に4回企画展を開催しています。

 弥生美術館の1、2階の展示室では、主に、企画展のテーマに沿った挿絵画家、イラストレーター、漫画家、文学者、レトロ浪漫乙女文化などの作品が展示されます。

 挿絵画家たちの作品は、明治時代末期頃から、大正、昭和初期、戦後にかけて、時代の雰囲気を醸し出しながらも乙女心を失わない愛らしく、美しい少女たちを描いたものです。


 3階は、高畠華宵の常設展示室で、こちらもテーマに沿った華宵作品が、独特のまなざしをこちらに向けてくるのに、ぞくぞくします。


 美術館を入って、受付を済ませると、すぐ左手がミュージアムショップになっています。

 ここは、入場料無しで利用できます。


 ここで、つい、求めてしまった(!?)本をちょっとご紹介しておきます。



『耽美・華麗・悪魔主義 谷崎純一郎文学の着物を見る』大野らふ+中村圭子編著


弥生美術館 2016年3月31日(木)~6月26日(日)開催

「耽美・華麗・悪魔主義 谷崎潤一郎文学の着物を見る ~アンティーク着物と挿絵の饗宴~」展で購入。


 本の表紙の写真の着物は、紅地に大胆な孔雀の羽根の模様が踊っていて、帯も半襟も大輪の花が咲いていて、派手な谷崎美人に似合いそうです。

 この本の帯のコピー「百年経ってもいかがわしい!!」が効いています。

 もちろん、ここでの「いかがわしい」は褒め言葉です。

 文学は人間の心を取り上げて深掘りしたものであるという時点でいかがわしいものだと思っています。

 なので、ことさらいかがわしいと言わなくてもと思いますが、それを心得たうえでのコピーのようでもあって、文学を楽しみましょうという心意気が伝わってきます。


 展覧会は、谷崎文学のヒロインたちのまとっている着物を当時の資料に沿って再現した展示風景が見応えがあってよかったです。



 乙女浪漫ではなく耽美浪漫の一冊でしたね。

 では、次は、乙女浪漫の一冊を。



『竹久夢二 かわいい手帖 大正ロマンの乙女ワールド』石川桂子編

竹久夢二美術館 2016年3月31日(木)~6月26日(日)開催

「100年前に夢二が発信❤ 大正時代の「かわいい」展 ~乙女がときめくデザイン&イラストを中心に~」展


 夢二は意匠デザインにも優れていたのですね。

 千代紙、絵封筒、商業美術、楽譜の表紙、ブックデザイン、半襟の図案など、ただかわいいばかりではなくてモダンでもあるのです。

 用いているモチーフも、花だけでなく、小鳥、フルーツ、キノコなど、多彩です。

 現代でも小物に使われているデザインが多く、人気があるのもうなずけます。


 気に入っている絵は、大きなりぼんを頭につけた着物姿の女の子が、自分の半分くらいもありそうな大きなうさぎを抱きかかえてる絵です。

 夢二は、他にも、大きな猫や、大きな人形を抱きかかえている少女を描いています。

 そのアンバランスさが、少女の小ささ、かわいらしさを際立たせています。



 さて、現在開催中なのは、弥生美術館「セーラー服と女学生 ~イラストと服飾資料で解き明かす、その秘密~」、竹久夢二美術館「竹久夢二 暮らしを彩る小さな美 ―大正ロマンのかわいいデザイン―」です。


 弥生美術館の今回の展覧会では、館蔵資料の他に、武内直子『美少女戦士セーラームーン』の原画や、イラストレーター中村佑介の最新作を含む原画も展示されるそうです。

 毎回、展覧会にちなんだツーショット写真がとれるコーナーが設営されていますが、

 今回は、「約100年前の美少女女学生」とのツーショット写真がとれるそうです。

 以前の展覧会では、『はいからさんが通る』のイケメンキャラたちや、『日出処の天子』の厩戸皇子との記念撮影コーナーがありました。


 興味深いテーマで、乙女レトロ浪漫文化を紹介し続けている弥生美術館、竹久夢二美術館。

 この貴重な場では、本に散財してもいいよね、と、訪れるたびに自分に甘くなってしまうのが、困ったものです。

 でも、それがいいのです。




<最寄駅>

地下鉄千代田線「根津駅」

地下鉄南北線「東大前駅」

詳細はホームページでご覧いただけます。


<今日買った本>

『耽美・華麗・悪魔主義 谷崎純一郎文学の着物を見る』

 大野らふ+中村圭子編著

 河出書房新社発行


『竹久夢二 かわいい手帖 大正ロマンの乙女ワールド』

 石川桂子編

 河出書房新社発行


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