二十八箇所目 東洋文庫ミュージアム 駒込
桜に誘われて、街歩きをするうちに、立ち寄ってみたのは東洋文庫ミュージアムです。
受付で、近くの六義園のセットチケットをすすめられ、並ばずにすぐ入れるとのことで、そちらを選びました。
では、いざ!東洋文庫ワールドへ。
と、最初の展示室で吸い寄せられてしまったのは、展示もさることながら、遷画コーナーでした。
作業に夢中になってしまいまして、気が付けば30分以上かけてしまっていました。
遷画というのは、約100年ほど前に出版されたシルクロード関連の貴重本に掲載されている絵や写真などの画像を細分化して、テーマごとに再集積した画像データベースのことだそうです。
自分の興味のあるテーマごとに編集することができて、東洋文庫ミュージアムでの体験では、絵葉書としてプリントアウトしてもらえます。ミュージアム観覧のよい記念品です。
画像を選んでいく過程で、その画像がどの地域で出土したかわかるようになっていて、自然とシルクロードの歴史文化に触れることができます。
私は、シルクロードのエンジェルすなわち「飛天」と、紅化粧の「
20種類位まで選べますと書いてあったのをいいことに、散々迷って欲張ってしまいました。
絵はがきもいいですが、マスキングテープにもしたくなる出来栄えで、個人的におすすめスポットです。
専門的知識がなくても歴史や美術を楽しめる「遷画」、面白かったです。
では、次は、二階の展示室へ。
そこに広がっていたのは、本の要塞、と見まごうばかりの豪奢な本の部屋でした。
モリソン文庫。
コの字型に配置された書棚が、天井まで段々に並ぶ姿は圧巻です。
書棚に並ぶハードカバーの背表紙は、インテリアではないのです。
そこにある本は、資料として生涯現役であるということ、この重み。
ここで生まれて、ここで生きて、ここで永遠の眠りにつく人生を望む人がいてもおかしくない空間です。
物語の世界がそこにあります。
よくぞ蒐集、保管しておいてくれました、と、その偉業を成し遂げたモリソン氏にひとこと御礼申し上げます。
オーストラリア生まれのモリソン氏は、大学で医学を修め、その後『タイムズ』紙の記者になり、ジャーナリストとして東南アジア、北京に赴任し、中国を中心にアジア関係の欧文書籍を蒐集して後に東洋文庫の礎となる「アジア文庫」を作りあげました。
こうした国をまたいだ資料は、それぞれの国の情勢によって散逸してしまいがちなので、たいへん貴重なコレクションだと言えると思います。
近代科学の実証的手法で歴史学に取り組むために、とくに日本の東洋学界においては、垂涎の資料だったこのモリソンのコレクションの日本への譲渡に尽力したのは、三菱第三代社長にして東洋文庫文庫創設者の岩崎久彌と、東京帝国大学文科大学史学科東洋史専攻の研究家石田幹之助でした。
とくに「モリソンパンフレット」と言われる、19世紀後半から20世紀初頭にかけての印刷物のコレクションは、書籍以上にまず入手が絶対に不可と思われるものだけに、唯一無二というのも頷けます。
その内容は、小冊子、雑誌論文の抜き刷り、新聞記事の切り抜き、書店カタログ、式典の招待状など多岐にわたります。
これらのものも後世資料になるのかと思うと、ついもらってきてしまって山をなしている美術館や博物館のチラシやリーフレットをますます処分しにくくなるというワナにはまってしまいそうです。
企画展の手前で、すっかり時間をくってしまいました。
もちろん、喜びとともにある時間経過、贅沢な時間の無駄遣いです。
ひとしきり感激しましたら、企画展へまいりましょう。
今回訪れた時の企画展は、「ハワイ日系移民渡航150周年 ハワイと南の島々展」でした。
ハワイを中心とした太平洋の島々についての文献資料が展示されています。
ハワイ、ポリネシア、ミクロネシア、メラネシア、南西諸島、伊豆諸島、小笠原諸島と、それぞれの島々の歴史、文化、自然の貴重な記録を目にすることができました。
最初のコーナーで時間をとりすぎて、ゆっくり見られなかったのが残念です。
さて、実はこのミュージアムの中で、とても恐れている場所が私にはあるのです。
それは、二階にあります。
展示室から展示室への通路である回顧の路の床面の、とある仕掛けなのです。
クレバス・エフェクト。
その仕掛けのところで下を見ると、果ては地獄か奈落の底かといった景色に、吸い込まれそうになるのです。
目の錯覚を利用した仕掛けだとわかってはいても、ここへくると、毎回、足がすくんでしまうのです。
大股で越えるには、ちょっと幅が広くて、それこそ落ちたらどうしようと恐怖が募ります。
今回も、何度も自分に、これは仕掛けだからだいじょうぶ、と言い聞かせて、なんとか先へ進みました。
どきどきしながら回顧の路を通り抜けて、階段を下りてミュージアムショップへ。
ミュージアムショップでは、最近の人気グッズの「科挙の答案」のクリアファイルと、東洋文庫の貴重な資料が紹介されている『時空をこえる本の旅50選』と、企画展の図録『時空をこえる本の旅18 ハワイと南の島々展』を求めました。
これで、東洋文庫ミュージアムのツアーは終了です。
では、そろそろ、六義園の麗しのしだれ桜の御姿を眺めにまいりましょう。
<最寄駅>
山手線 「駒込」駅
地下鉄南北線「駒込」駅
詳細はホームページでご覧いただけます。
<今日買った本>
『時空をこえる本の旅50選』
東洋文庫 編集・発行
『時空をこえる本の旅18 ハワイと南の島々展』
公益財団法人東洋文庫 編集・発行
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