十九箇所目 国立科学博物館 上野
博物館の企画展は、長期間やっていることが多いので、行ける時に行けばよいだろうと思っているうちに、行きそびれてしまったことってありませんか。
あやうく今回もそうなりそうだったのを、所用で出かけた先で見かけたポスターで、あ、もう終わってしまうではないか、行かねば、と思い出したのが、今回本を買いに出かけた国立科学博物館の二つの企画展です。
企画展「
熊楠展は予想外の混雑ぶりで、彼ってこんなに人気があったのかな、と思いつつ、人混みの間から背伸びして、展示物を観覧しました。
南方熊楠は、博物学者、粘菌の研究者として知られていますが、今回の取り上げ方は、現代風な視点で、ある意味図書館学の視点ともいえる、蒐集・収集した資料の情報提供者としての熊楠にスポットを当てた紹介のされ方をしていました。
多岐に渡る資料の収集、蓄積、提供というのは、図書館学における図書館運営の基本ですが、南方熊楠も、興味の赴くまま多彩な資料を集め、蓄積し、必要とあらば提供しようという方向でいたのです。
ただ、正式な手順を踏んでの研究者ではなく、地方在住の在野の研究家であったため、未整理、未発表のものが多くて、彼の研究の評価は確立されていないのだそうです。
そういった意味で、“これからの人”でもあります。
隠花植物研究者の熊楠にちなんでか、もう一つの企画展は、菌類と藻類が共生して進化した地衣類の展示です。
いろいろな地衣類や特殊環境の地衣類がが実物や3D模型とともに紹介されているコーナー。
蛾の模様のマントで地衣類の描かれた壁の前で擬態して写真を撮影できるコーナー。
地衣類の利用のコーナーでは、香水の原料となるオークモスの紹介もされていました。
地衣類が、極限環境の南極や砂漠にまで分布していると知って、人類が滅んだ後に生き残るのは人間の遺伝性を自分に取り込んだ地衣類に違いない、地衣類文明の曙、そして、滅んだと思われていた人類の生き残りとの間に生存競争が勃発、といったような話が思い浮かびました。
それから、展示物の中に、鯨の背に存在していた地衣類というのがありまして。
それを見ていて思いついたのは、生き残った瀕死の鯨と人類の遺伝子情報を継ぐ地衣類の漂流記。
ありそうな話ではありますが、SF好きなので、そういった話もいつか書いてみたいものです。
さて、話は変わりますが、科博のミュージアムショップは面白いですね。
「わくわくドキドキ、かはくのショップへGO!」と記された科博のリーフレットを見ると、バラエティに富んだ品揃えです。
フィールドワーカーやサイエンティスト御用達の実用性とデザイン性を兼ね備えているオリジナルグッズ、生態系を遊びながら学ぶかはくトランプに、バラエティに富んだ化石、鉱物、貝標本、科博発の自然と科学の情報誌『ミルシル milsil』、理科実験器具に、国立科学博物館叢書、限定パッケージのお菓子、化石チョコetc
一度ショップに入ったら、なかなか出て来られなくなってしまいます。
入ってすぐの左側のガラスケースに飾られている、アンモナイトの貝殻のきらめきを文字盤にした時計は、珍しくて美しくて、ちょっと見入ってしまいました。
企画展の関連商品コーナーで、南方熊楠の生涯についての本を買いました。
それから、ショップの奥にある本のコーナーで目に入ってきたのは、「コーヒー杯のがまんで買える マニアックな人が作るミニ写真集」との謳い文句の踊る雑誌『マニマニ』です。
「マニマニ?ゴーギャンの絵の関連雑誌?」
と、とんちんかんなことを思いながら手にとると、雑誌の謳い文句がふるってました。
「今、あなたの健康に必要なものは クリニックではなくマニアックなのかもしれません。」
今回購入したマニアックターゲットの本は、「マニマニvol.5」で、蘭研究家の方の「百花狂蘭」という特集です。
ワインセラーで蘭栽培など、独自の工夫が紹介されていました。
個性的な人物に、個性的な植物の企画展を見て、個性的な人と植物の本を買った、科学博物館でのひと時でした。
<国立科学博物館 上野>
最寄駅 JR山手線「上野」駅他
関連ホームページで、詳細をご覧いただけます。
<今日買った本>
『世界を駆けた博物学者 南方熊楠 南方熊楠顕彰会編』
中瀬喜陽他執筆 中瀬喜陽監修
南方熊楠顕彰会発行
『マニマニ―MANIAC MANUAL vol.5』
サプラニア編
サプラニア発行
追記
国立科学博物館は、土日は夜八時までやっています。
常設展の地球館「地球生命史と人類」、日本館「日本列島の自然と私たち」などを見学するだけでも、十分楽しめます。
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