十八箇所目 Bunkamura ブックショップ ナディッフモダン 渋谷

 テキスタイルデザインに特化した展覧会を見たいなと思った時、まずサイトを見るのは、文化学園服飾博物館かBunkamuraザ・ミュージアムです。

 

 そうしてサイトを見ていた時に、“北欧のかわいい”についても調べものをしていて、何か本が欲しいなと思っていて、その時に目に入ってきたのが、Bunkamuraザ・ミュージアムで開催中の、大胆な色柄で知られているフィンランドのデザインハウス「マリメッコ」の展覧会でした。


 もう一年以上経っているのですが、その年まわりは、Bunkamuraザ・ミュージアムでは、デザイン関連の展覧会として、夏に、フランスの王妃マリー・アントワネットが愛した田園模様のファブリック「西洋更紗トワル・ド・ジュイ展」も開催されていました。


 さて、マリメッコ展に足を運んだのは、展覧会の観賞もさることながら、フィンランド発のデザインハウスなので、ミュージアムショップに北欧関連の本が並ぶであろうとの予測からです。

 “北欧のかわいい”に関する本は、折からの北欧雑貨ブームもあって、次々と出ていました。

 そうした本を一覧するには、展覧会に足を運んで、ミュージアムショップをのぞくのがいいだろうと思っていました。


 Bunkamuraに、ブックショップナディッフモダンは、二箇所あります。


 一つは、展覧会会場内。

 展覧会に入場しないと行けません。

 もう一つは、パティオに沿ったカフェレストラン、ドゥ マゴ パリの並びの、パティオに面してる側が全面ガラス張りの開放的なつくりのショップです。


 この本屋では、デザイン性の高い洒落た本や、美術、写真など、眺めて楽しむ本が多く扱われていますが、もちろん、読む本もあります。


 ショップに入ってみると、きれいな本たちに交じって、作家もののアクセサリー雑貨も並んでいて、セレクトショップのような趣です。


 ここでは、『北欧 食べる、つくる、かわいいと暮らす』という、北欧ビンテージショップの店主さんの書いた、読んでいるだけで、北欧暮らしをしている気分になれる本と出会いました。

 どのページもきれいな写真やかわいい北欧雑貨、お料理などが載っています。


 読んでいて目に留まったのは、日本ではあまりなじみがない興味深いメニューの「春を呼ぶイラクサのスープ」です。


 イラクサといえば、デンマークの作家、アンデルセンの童話が思い浮かびます。

 この本では「白鳥の王子」と紹介されていましたが、私が子どもの頃読んだ童話では「野の白鳥」でした。

 魔法にかけられ、野を飛び去って行く王子たちの姿は、ギリシア神話の変身譚とはまた違ったような、心に訴えかけてくる哀しみがありました。

 残された妹姫の痛みの伴う健気さも、また。

 成長のための通過儀礼といってしまうには、この物語の美しさが印象的でした。


 北欧では、温めたカップにアルコールと角砂糖とカルダモンを加えて火をつけ、アルコール分をとばしてから深煎りコーヒーを注ぐカルダモンコーヒー、クリスマスのパンに欠かせないサフランなど、カルダモンやサフランがよく使われるそうです。

 異国情緒溢れるスパイシーな香りが、北欧の食生活で馴染み深いのは、8~10世紀頃にバイキングが川を遡ってトルコに侵攻していたからなのだとか。


 日本の中の北欧といえば、北欧の児童文学は、日本ではけっこうアニメ化されていて、馴染み深かったりします。

 「ムーミンシリーズ」、「小さなバイキングビッケ」、「スプーンおばさん」。

 いずれも、なつかしい風合いのアニメーションです。

 「長靴下のピッピ」はドラマ化されていましたね。


 パティオでコーヒーを飲みながら、『北欧 食べる、つくる、かわいいと暮らす』のページをぱらぱらとめくっていましたら、カタカタ音がして、スプーンがことり、とソーサーからテーブルに転がりました。


 スプーンをソーサーにもどすと、しばらくしてまた音がして、ころり、と。


 小さな人というのは、西洋の童話によく出てきます。


 ミュージアムショップの輸入品にくっついて、日本観光に来た誰かさんがいるのかもしれません。



 スプーンはそのままにして、コーヒーをひと口。


 そういえば、ムーミンたちは、よく、コーヒーを飲んでいたなと思い出しました。

 コーヒーと、それから、オープンサンドも美味しそうでした。

 北欧のオープンサンド、そう、スモーブローです。

 『ムーミンパパ 海へいく』 では、「チーズ、ソーセージ、つめたいじゃがいもとサージン、マーマレードなどがのったサンドイッチ」と、具材がパンの上にのっているサンドイッチが描かれています。


 トーベ・ヤンソンの自伝『島暮らしの記録』では、島暮らしの季節には、岩礁でコーヒーを沸かして飲んだと記されています。

 この本には、パートナーだったイラストレーターの彼女トゥーリッキ・ピエティラが絵を添えています。



 気の合う友でありパートナーとの島暮らし。


 岩場で火を焚き、コーヒーを沸かす。


 聞こえるのは、波音と海鳥の声ばかり。


 ここは、ファンタジーの生まれる場所。


 

 飲み終えたコーヒーカップの底に見えた模様は、満月でした。

 カップにかざして満月をスプーンに映して、そっとソーサーに置きました。


 そろそろ帰ろうかと席を立って歩き出すと、ひっつめ髪の小柄なおばさんが、そそくさと目の前を横ぎっていきました。


 「もとの大きさにもどれたんだ、よかったですね」


  と、走り去る後姿に声をかけ、本を片手にエスカレーターへ。


 帰ったら、今日買った本に載っているスモーブローを作ろう、そして、北欧の児童文学を読み返そう、できれば、ムーミンたちのようにアウトドアコーヒーを楽しもう。


 そんなことを思いながら、その日は家路についたのでした。



<Bunkamura ブックショップ ナディッフモダン>

最寄駅 JR山手線「渋谷」駅他

関連ホームページで、詳細をご覧いただけます。


<今日買った本>

『北欧 食べる、つくる、かわいいと暮らす』

三田陽子著

辰巳出版


追記

北欧オープンサンド、スモーブローを食べたくなったら、こちらもどうぞ。

「図書館カフェでスモーブローを君といっしょに食べたかった」

 https://kakuyomu.jp/works/1177354054883124432

 大阪中の島図書館併設カフェを舞台にした恋愛ショートストーリーです。

 

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