第5話 スキ

 ――午後十時半。


 美舞は、お風呂と歯磨きを終えて、白と水色のボーダーパジャマ姿であった。

「父さん、母さん、お休みなさい」


「はい、お休みなさい」

「お休みなさい、美舞」


 二階の自室に入った。


 美舞は、キルティングのカバーをしたベッドに腰掛けて、スマホを出した。

 コミュニケーションアプリでぴこぴことメッセージを送った。


 ピロリン


 ……………………………………………………

           [こんばんは、玲君]

                  └美 

 [こんばんは]

  R┘

      [明日、バレンタインデーだよ]

                  └美

 [そうみたいですね]

  R┘

       [渡したい物があるんだけど]

                  └美

 [え! お煎餅ですか?]

  R┘

       [かなり、怒られたいかな?]

                  └美

 [何の冗句でもありませんよ]

  R ┘

     [えー。結婚を前提にお付き合い]

     [してくださいは嘘だったの? ]

                  └美

 [気張らなくたっていいのですよ]

  R ┘

          [僕の婚約者なのに、]

          [受け取れないの? ]

                   └美

 [強迫ではないですよね]

  R┘

             [強制って事で]

                  └美

 [それでは、お休みなさい]

  R┘

      [もう? 早いよ。語りたいよ]

                  └美

 [明日、学校で会えるでしょう]

 [楽しみにしています    ]

 [お休みなさい       ]

  R┘

   [今日はね、素敵な        ]

   [『バレンタインデーイブ』だったよ]

   [明日を楽しみにして、寝ますね  ]

   [お休みなさい みまい      ]

                  └美

 ……………………………………………………


 アプリを切ると、やっぱり寂しかった。

「玲君……」


「玲君さ、いつもさらっとし過ぎだよ。あー、もう、私は寂しがり屋さんか? 甘えん坊さんか? 恥ずかしい」

 枕にぼふっと、耳迄真っ赤になって仕方がない顔を隠す様に埋めた。


「んー、恋愛って難しい。人生みたい。生きるって何かな。人から教わらない事だよね、きっと」

 

 ふと、色々と教えてくれたウルフを思い出した。


「今日は、ウルフ父さんとのいい想い出になったな。ファザコンって呼ばれてもいいよ。僕は、小さい時から好きなんだもん。だって、優しいし、僕と格闘ごっこから今の護身術迄いつだって一緒にいてくれた。大好きなんだ……」


「急に土方玲ひじかた れい君のそんなウルフ父さんに似ている所が最初に惹かれたな。急に、空手部の大会で僕が負けたから、結婚を申し込まれたり、ドキドキしたよ。殆ど知らなかった事ばかりだったけど、甘い物が好きだったり、僕より格闘が強くて、内面もつよい所なんて、すっごくやられちゃったよな。一目惚れってあると思う」


「ふあー。眠い。父さん、玲君、お休みなさい」


 ライトを消して、胸がむずむずすると思いながら寝た。

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