第2話 クッキング
――午後四時。
レッツ、クッキング!
「先ず、材料からね」
「はい」
基本、書いてある通りに作るのは得意な美舞。
「紙に書いたから集めてご覧? キッチンにあるよ」
「僕、がんばるよ」
にこりと笑って身の丈のあるウルフを仰いだ。
……………………………………………
ホットケーキミックス 一五〇グラム
バター 五〇グラム
砂糖 四〇グラム
卵黄 一個
板チョコレート 適宜
……………………………………………
「美舞、チョコレート刻んで、後で湯せんを頼めるかな? それが肝心要なんだろう?」
「そうだね、やってみるよ。僕は、料理は良いけど、お菓子は馴染みがなくて。バレンタインデーだしね」
やる気満々である。
「刻む迄終わった? じゃあ、ボールにバターは、常温になっているから、ふるったお砂糖様、ダイビング! それから混ぜてねー。上手く出来ているね」
「がんばっているよ、父さん」
「はい、白くなったよ。OK! 卵黄さん入れてあげてね」
「ういっす!」
美舞は、ウルフ父さんに淡い気持ちを抱いていた頃もあったから、ちょっと恥ずかしかった。
「ホットケーキミックスをふるいながら入れて、混ぜるよ。父さんがふるうよ」
「成る程、愛情込めて、美舞混ぜます」
いやーん。
「父娘の共同作業ですって、ケーキ入刀みたいだよ」
二人でにへらと笑って視線を外した。
「よし、生地がまとまってきたな、二等分して、片方に、さっきの湯せんチョコレートを混ぜ混ぜしちゃうよ」
「楽しー。父さん、市松に組んで良いかな? ハートかな?」
「好きにしてください」
ハートとか言われても、こればっかりは、つまらないウルフ。
ちょっとつんとしてみた。
「父さん、
「ラップで巻いて、形を整え終わったら、冷凍庫で眠り姫になって貰おう」
「OK!」
良さそうな場所に置いた。
そう言えば、三浦家に、冷凍食品はなく、アイス枕と氷位であった。
「はーい、固まったかな?」
「大丈夫みたいだよ」
「では、一七〇度に予熱して、生地は、五ミリ幅にカットカットだよ」
「OKだよー。クッキングシート敷いて、焼く生地をオーブンに入れまーす。膨らむから間を空けてっと。楽しいね、父さん」
――待つ事一三分
美舞は天板を手前に引いた。
「かーんせー。父さん! 見た目出来ているよ!」
にこにこ攻撃してしまいました。
「味見してみる?」
ウルフは、美舞に振った。
「うん」
「……。しょっぱ……。しょっぱい」
顔を右寄りにしかめた後で、唾をごくりと飲んだ。
「しょっぱくて、最高に美味しいー!」
アイスボックスクッキーを手に持ち、高く掲げた。
「うん、しょっぱいのか」
ウルフは、美舞が可愛かった。
何度かうんうんと頷いていた。
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