第1話穏やかな日常

 キーンコーンカーコーン


 授業終了の鐘がなった。


 やっぱり6時間目に古典はキツイ。


「山口‼︎おい‼︎起きろ‼︎朝じゃない‼︎下校時刻だ‼︎」


 …どうやら落ちた奴も居たみたいだ。


「な〜、佐竹〜一緒に帰ろうぜ〜」


 俺は、幼馴染の佐竹に声をかけた。


 女じゃないぞ?男だ。


「無理だな」


 即答された。


「何故⁉︎」


「授業が終わったら、掃除とHRだ」


「掃除って…殆どサボってるじゃん。しかも床とか水拭きしないから、俺のリュック見ろよ!底が白くなってる。こんな、なら週一でやればいいだろ」


 やれやれと言った感じで佐竹が肩をすくめる。


「俺に言ってもしょうがないだろう。お前がどうしても我慢出来ないなら生徒会にでも入るんだな」


「ざけんな‼︎今年の生徒会立候補者は全員キャラが濃くて、美少女だってクラスの連中が噂してたぞ‼︎役得があると思うなよ‼︎そういうのはアニメや漫画やラノベだけだ‼︎普通は浮く‼︎今回は立候補するだけでも浮く」


 俺が言うと佐竹は腹を抱えて笑い出した。


「…何でそんなに必死なんだよ」


 笑いながら話しているせいで少し聞き取りずらい。


「うっ、うるせえっ‼︎昔、美少女に関わって酷い目にあったんだよ‼︎アレはもうトラウマだ‼︎今思えばあの頃から、俺は2次元派に片足突っ込んだ様な中途半端な状態に…」


「えっ、お前2次元派なの?初耳なんだけど…それとトラウマというのに関して詳しく」


「くっ、殺せ」


 人のトラウマに首突っ込みやがって…


「お前が勝手に自爆したんだろ?っていうかそこまでトラウマなのか…」


「そうだよ‼︎悪かったな‼︎…あ!」


「どうした?」


「いや、何でもない。ちょっと家にノートを忘れた事に気付いただけだ」


 アレは目立つから普段は無くさないのだが…


「ああ、黒歴史ノートか」


「っるせいな‼︎別に良いだろ‼︎そんな事‼︎」


「おい、お前等早く荷物仕舞って、机つれ‼︎」


 皆んなに不人気な担任だ。因みに『机をつる』というのはこの辺りの地域だけらしい。東京では言ってなかった。意味は『机を運ぶ』だ。


「はーい。…じゃっ、いっちょやりますか」


 佐竹が伸びをしながらめんどくさそうに言った。


「ああ、そうだな」


「そういえば、この前お前『やっとアレが出来たー』とか言ってたけど何だったんだ?」


「…昔ちょっとな」


「例のトラウマか?」


「時期は一緒だが無関係だそして俺のトラウマを平気な顔で掘り起こすな‼︎」


「わー、ごめんごめん‼︎」


「お前等ちゃんと掃除しろ‼︎」


「「はーい」」

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