挿話 王都復興のより道
──ベルゼルグ王城逗留4日目
「カズマ様!この漬物召し上がって下さい!」
「勇者様ー!今夜はウチの自慢の料理を!」
「勇者さまー!ぼくたちの秘密基地見せたげるー‼」
「ニーナちゃんあそぼー!シーナちゃん抱っこしてー。」
「リヴァイアサン様ー!お神酒呑んでって下さいな!」
王都復興も順調に進み、カズマたちも適材適所、いろんな手伝いをして回っていた。
アクアは怪我人の治療に救護室に詰めっきりだし、めぐみんは主に調理場へ。ダクネスは戻ってきたベルゼルグ王と共に、隣国エルロードとの連携や、支援物資の手配や、復興支援までバタバタと忙しそうに飛び回っている。
カズマはと言えば、
王都に降りて、民たちの住居や破壊された交通路など、得意な鍛冶スキルや土木スキルでサクサクと直していっていた。
力を要する土木作業なども、ドラゴン娘たちやリヴァイアサンの力を借りて、周りの民たちが退くほどの勢いですっかり片付けてしまった。
今ではニーナシーナもリヴァイアサンも、すっかり王都の人気者だ
おかげで街をちょっと歩いただけで、山盛りの収穫。
手伝えるとこを探してるのに。
まぁ、かと言って、もうそんなにやることはないんだけどね。
そろそろアクセルに戻らないと。
ウィズとバニルとターニャさんが居るからなんの問題もないけど。
「カズマ様? 今日はどうされますか? 私たちがお手伝い出来そうなことももう余りないように思うのですが…。」
ニーナが後ろから控え目に言った。
シーナは呑気に
「ねーねー。今日は酒屋のベルクさんちでご馳走になりましょーよー? いいお魚が手に入ったんですって。ねーカズマ様ーいいでしょー?ねー。」
こいつは…
双子のクセに性格がまるっきり正反対なんだよな。ニーナは真面目で控え目でたおやかな純和風テイスト。シーナはまったくのじゃじゃ馬アメリカンテイストで、性格もアクアっぽい。いつもニーナに怒られてばかりいる。
なんかアクアが二人いるようで末恐ろしい。
俺的にはやっぱりニーナのほうが好みなんだよなー。
と、ニーナをちらりと見ると、頬に手を当てて真っ赤になり、うつ向く。
「やだ…カズマ様?あまり見ないで?恥ずかしい…」
うん。かわゆい。
比べてこいつは…
「…え。欲情しちゃいました? よかったー!夕べ頑張ってスカート丈切って、皮のコルセットもチョキチョキして露出増量したんですー!ほら?おへそ。胸もいつもより谷間倍増しちゃってません?今夜は寝かせませんからねー!」
「お前ほんとにドラゴンか?! サキュバスなんじゃね?!」
…ったく。親の顔が……あぁ。知ってるわ。どえらいひとだわ。
なんだか照れてるダメなほうのドラゴン娘に
「今日は俺、やること出来たからさ。ニーナシーナで御使い頼まれてくんねーかな? ひとっ飛びかーちゃんとこまで。」
****************
「というわけなんだ。」
「ぶー。」
「なんでスネてんだよ?」
「ぶぅー。」
ニーナシーナを御使いに出してから、アイリスとクレアを捕まえた。
王都が破壊されて、大規模な建て替えも必要になってる区画を利用して、かねてより考案していた小中高の学校を設立しようと提案したのだ。
これにはクレアが大賛成で、手を叩いて喜んでくれた。
義務教育という概念がこの世界には無く、誰もが等しく教育を受けられる権利など夢のようだと。涙を流してまでクレアは喜んだ。
カズマはもっと具体的に話を詰めて、初等中等教育は義務化し、国からの援助を行い、高等教育は自由化して専門的な教育を行うこと。
優秀な人材で、資金の援助を必要とする場合は奨学金制度を導入し、国が全面的にバックアップを行うこと。
その際の国の援助資金として自分の知的財産権をいくつか譲渡し、その収入を当てること。
そして、生徒たち自らにも知的財産のいくつかを実際に製造販売マーケット管理などをさせ、生涯学習として学ばせたいこと。
加えて、ミツルギの経営する太陽の家を公的機関にして、0歳児から預けて学習の出来る保育園、幼稚園兼託児所兼児童館として機能させれば、働きたくても働けない一人親の家庭でも、安心して子供を預けて収入を得ることが出来るし、何より王都の雇用が増えて、新たに先生職という枠も増えて、税収も上がる事に繋がる。
とか何とかつらつらと説明したのだが、当のアイリスはぶー垂れている。
「なんだ?俺、なんかしたっけ?」
アイリスは相変わらず不機嫌な様子。
クレアがたまらず泣きながら口を挟む。
「アイリス様? この素晴らしい提案が理解出来ないと仰るのですか?! カズマ殿の成されようとしている事の尊さが! 勇者として世界を背負い命を賭けてこれを成し、今度は民たちの境遇を憂い、それを救おうとなさっている。カズマ殿!あなたは本当に本当に貴い方だ!もしも御結婚されてなければ、私がすべてを投げ打ってでも尽くし添い遂げよう!くっ…これほどまでに悔しい思いをしたことはない。心底ダスティネス卿が羨ましい‼ 」
胸をかきむしり、涙を堪えながら熱弁を奮うクレアにいささか退きながら、カズマはアイリスに向かう。
「なぁアイリス? 俺がなんか悪いことしたんなら教えてくれよ?」
アイリスはうつ向いたままで口を尖らせた。
「………だってお兄ちゃん…王城に居るのにちっともアイリスに会いにきてくれないんだもん……」
激マブ!かわゆ!!
「アイリスっ!!」
「きゃっ?!」
カズマは全開でアイリスを抱きしめて撫でなでした。
「よしよ~しよしよ~しアイリスいい子だ~‼ 今日一日中一緒に居ような~!」
「うん♪いっぱい遊ぼ?」
グリグリと撫でくり回されるアイリスはすっかり上機嫌だ。
クレアがムッとして叫ぶ。
「カズマ殿?! 学校の件は?!」
「あー明日でいーや。よしよ~しよしよ~し。」
「ふふ。お兄ちゃーん大好きー!」
「あぁっ!アイリス様ずるい‼ 私もしてほしいー! カズマさーん!」
とまぁ。
こんな日もアリかなという昼の一コマ。
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