第60話 水入らずの夜話
「あー疲れた…」
「なんでお風呂あがりに疲れてんです?はいどうぞ。」
風呂あがりの自室。
とは言っても、アイリスに迎賓室を借りてパーティで使用している。
アクアはハイネスヒールの使いすぎで、ソファにぐったりしている。
カズマはその横でアクアにもたれかかる様にしてぐったりしている。
ダクネスとめぐみんは元気で、さっき風呂からあがったところだった。
「ふっ 風呂って広いからさっ!」
「なんで声が上擦っているのだ?」
ダクネスも訝しげに見つめる。
「…まっ まぁ疲れてんだよ。魔界から帰ってすぐだったからさ!」
「「ふーん。そう。」」
ふたりのジト目に耐えきれず、淹れてもらったコーヒーに口をつける。
「ところでカズマ? これからどうするのです?」
めぐみんがミルクティのカップをゆらゆらとしながらカズマの横に座る。
ダクネスはアクアの隣で、愛しそうにお腹を撫でている。
「そうだな。悪魔ともなんとか繋がったし、びっくりするくらい強大な力も手に入れたしな。とりあえず、ターニャさんのお姉ちゃんと話してみて、納得して貰えればよし。無理なら……やっぱり戦うしかないんだろうなぁ……。」
そう言ってカズマは、ソファで伸びているアクアの頭に、自分の頭をぶつける。
結局は戦うのは嫌なんだ。
出来ればリタさんとは戦いたくない。
リタさんの気が済むのなら、俺なんていくらでも切り刻めばいいとさえ思う。
だけど、俺にはまだ大事な使命がある。
俺に神々を圧倒的に滅ぼすほどの力があるのなら、独りでやってやる。
でも、絶対に届かない。今の俺の力を持ってしても、オリュンポスを落として、世界の理を書きかえる事は絶対に出来ない。
俺に、いや、今のこの世界に在るすべての誰にだって、それは不可能だ。
ゼウスも、バニルやサタンも、ニーズヘッグも、最大の敵であるヘラすらも言ってる。
この俺たちの傍らに眠る、世界の愛娘こそがそれを成し得るのだと。
俺たちに出来る事は、すべての道を切り開いて、見定めて、集めて、この愛娘に繋ぐこと。
ヘラを滅ぼすのが目標ではない。
リタさんを止めるのが目標ではない。
明日への道をめあねすに繋げるのが、俺たちの真の目標だから。
アクアにグリグリと頭をすりつけて考えに沈んでいると、めぐみんが俺たちの頭に手を置いてゆっくり撫でる。
ふと、アクアをチラッと見ると、嬉しそうに微笑んでいた。
カズマもその手の心地よさに身を委ねていると、ふいにダクネスが笑って声をあげた。
「ふふ。めあねすが動いてる…。」
アクアもそれは分かっていたようで、楽しげに笑っている。
カズマとめぐみんは起きあがって、アクアのお腹に耳を当てた。
ダクネスもカズマとめぐみんを抱き抱えるようにして、お腹に耳を当てる。
「………うん…。楽しいわよ?ふふふ。」
「…はは。いいぜ?…一番はとうさんだ。」
「……ふふ。お前には立派なレイディになって貰うからな。……そうだ……」
「ふふふ……みんな親バカなんだから…あなたも大変よ?……そうそう……ふふ。」
───愛娘との会話は楽しげに、4人とひとりがソファで眠るまで、幸せにずっと続いた。 ──
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