第22話 Break these chain




「こんなものですかね。」



リンゴやニンジンやトマトやセロリや玉ねぎなどの野菜と果物、数十種類の香辛料とハーブを煮込んでいる小さな寸胴の蓋を閉める。



「次はキャベツを切ってと…。」



今夜の夕飯は[オコノミヤキ]。


これはカズマの国であるニホンの郷土料理らしく、以前にカズマが作ってくれた。

これが絶品で、以降みんなどハマリしてしまった1品だ。


特にダクネスの食旨を撃ち抜いたらしく、彼女は自身の世界三大好物のひとつに数える様になったそうだ。


今夜はそのオコノミヤキの中でも、レアで非常に手間のかかる[ヒロシマヤキ]にしてみようと思っている。


ヒロシマヤキは、

作るのは非常に難しいが、大量に食物繊維を摂れるだけでなく、アミノ酸、たんぱく質、ミネラルと、健康な身体を維持するのに必須な栄養素を無理なく摂取出来る。

甘めに仕上げたソースと卵とキャベツのハーモニーが絶妙で、見た目の大きさに反して、女性でもペロッと一枚平気で食べることが出来るので、産前である大食漢アクアの体調管理にも最適なヘルシーフードだと言える。


以前カズマに、アイリスとともに王都でヤキソバを作った時にソースの仕込みも習ったので、そのレシピにアレンジを加えた私オリジナルソースを一緒に仕込んでいる。


ソースには砂糖を使わず、ハチミツと酒精で優しい甘みに仕上げてみた。

砂糖然とした甘さはいささか母体には悪いからだ。


「材料はこれで揃いましたね…

…。あぁ。忘れていました。魚粉とノシイカですね。」


そぅそぅ。

ヒロシマヤキには魚を乾燥させ粉にした魚粉というものと、乾燥させたイカが欠かせないらしい。

幸い、今はカズマの発明した冷蔵庫もあるので、あらゆる食材は大体ストックしてある。


「ソースもそろそろ煮詰まる頃ですし、焼いていきましょうか。」



同じくらいの大きさのフライパン三枚に油をひいて煙が出るまでカンカンに熱してから一度冷ます。

こうすることで、鉄と油が馴染んで皮膜ををつくり、何を焼いても絶対に焦げなくなるのだ。

ちなみにこの作業をプロの世界では[鉄板を作る]と言う。

逆に焦げる鉄板を[火が入った]と言い、上記の手順で最初から鉄板を作らなければいけない。

鉄板の世界は奥が深い。


冷めたフライパン一枚をもう一度火にかけ、程よく温まったところに、小麦粉に出汁を入れ水でさらさらに溶いた出汁生地を拡げる。薄さは2ミリ程度で良いだろう。


そこに魚粉を振り、ノシイカを敷きつめ、キャベツの千切りを大きい3掴みのせててんこ盛りにする。

驚くほどのてんこ盛りになるが、後に蒸されてしぼむので気にしない。


さらに魚粉を満遍なく振り、塩コショウを振り、天かすをのせ、最後に肉をのせる。


その上から溶いた出汁生地を回しながら軽くかけて、もう一枚のフライパンをかぶせる。

そして、かぶせて合わせたフライパンごとひっくり返し、弱火で5分ほど置いておく。


その間に、もう一枚のフライパンに麺を入れて焼いていく。

この時、麺はオコノミヤキの大きさに形を整えておく。形を整えた麺は動かさず焦げる手前まで焼く。

味は付けないでおく方がより美味しい。


蒸されてしぼんだオコノミヤキを焼いた麺にのせる。

鉄板はすでに作っているので、麺を焼いているフライパンにオコノミヤキのフライパンを傾けるだけでつるんっと入る。


それに丸皿をかぶせてひっくり返し、麺を上に向けた状態で置いておく。

空いた熱いままのフライパンに油をひき、ごく弱火にかけて全卵を割り入れ、オコノミヤキの形に拡げ整えたら、半熟のまんま麺の上につるんっとカバーしてオコノミヤキの焼き上がり。


ソースをたくさん塗り、魚粉を散らし、仕上げに乾燥させて粉砕したニンニクをパラパラ程度に散らし、粗挽きの黒胡椒をかけて完成。


うん。

かなりのクオリティで再現出来たはず。

みんなの喜ぶ顔が目に浮かぶ。

私は勇んで居間へ向かった。




****************




「アクアー。ダクネスー。ごはんにしましょうか。」


しかしダクネスは居なくて、アクアは相変わらずせっせと編み物をしている。

今度は手袋のようだ。それにしても巧い。


そういえばカズマの姿もないが、まだ工房だろうか?


「アクア。 ダクネス呼んで貰えますか? 私はカズマに伝えて来ます。」


アクアは手をとめて


「しょうがないわねー。どっこらしょっと」


とおっさんみたいなかけ声をかけてトテトテ出ていった。可愛い。


それを見送り私は工房に向かった。



****************



「カズマー。ごはんにしましょう。」


工房のドアをノックする。

今度は開けない。

するとすぐにカズマは出てきたが…


「カズマ!?髪が焦げてますよ!?」


見れば、髪があちこち縮れて焦げていた。


「なっかなか上手くいかねぇんだなこれが…。やっぱ先に調整機を作るべきだなぁ。」


と嘆息する。


「カズマ。ゆっくりで良いですから。気持ちだけで充分嬉しいですので。危ないことはしないでくださいね。」


と言うとカズマは私の右手を取って


「お前こそ無理すんなよな。痛いなら痛いって俺にだけは言ってくれ。我慢しないでさ。

何にも出来なくて頼りないかも知れないけど…。

俺が聞きたいんだ。それくらいのこと俺にもさせてくれ。」


「カズマ…」


「一緒に悩んだり痛んだりさせてくれ。

お前が俺たちに逢うまでに独りでしてきたこと全部。

紅魔に生まれてから今までの全部。

それを俺にも分けてくれ。」



…もぅ。このひとは…。


どんだけ私を壊せば気が済むのだろうこのひとは。


こんなこと言われてぐらつかない女の子が居るのなら教えて欲しい。


―どうすればこれ以上このひとを好きになるのを止められますか?―


…私には無理です…。


胸が痛い。息苦しい。頭がくらくらする。

彼を想うだけで私は平常心では居られなくなる。


でも。それが、とても嬉しい。


言葉に出来ない。

言葉なんかじゃとても追いつかない。

この想いを

愛してるとか好きだとか

そんな便利な言葉で伝えたくない。

そんな言葉しか知らない自分がとても悔しい。


だから

渡してしまおう。私の鍵を。


私を開けるのは

あなただけです。カズマ。



「…カズマ。今夜時間ありますか?

もしもよければ…私を……

いえ…。

…あなたの部屋にお邪魔しても良いですか…?」


そう絞り出した私の真っ赤な顔を見て、カズマは微笑んで


「いいよ。いつでも。

さぁメシ行こうぜ」

と、私の手を取ったまま食堂へと歩き出した。



****************




食堂に着くと

何やらアクアとダクネスが言い争って…る様だった。


ダクネスは頭を抱え床にうずくまっていて、その手をアクアが引っ張っていた。


「ダクネス!?見せなさい!

女の子が顔をケガなんて、傷が残ったらどうするの!?」


「ちょっとしたものだから大丈夫だ!心配いらないって言ってるだろう!?ほっといてくれていいから!」


その言葉に私もカズマも驚いて


「ちょっと待て!? 顔をケガ!? ダクネス!?見せてみろ!」


「ダクネス!? アクアに見せなさい!

ヒールかけて貰えば跡形もなくなるんですから…。」


頑なに床に丸まって動こうとしないダクネスをカズマが無理矢理抱き起こそうと…


…したらダクネスは半泣きで顔をあげた。

その頬には大きなガーゼががっちりと貼られていて……。


―あぁ。解ってしまった…。



なおも心配して必死にガーゼを剥がそうとするアクアとカズマ。

それに必死に抵抗するダクネス。


私は大きなため息をついて

カズマとアクアを制し言った。


「カズマ。アクア。

心配は要りませんよ。おそらく大丈夫ですから。」


不思議そうに私を見る二人に首を振り、私はダクネスににっこりと微笑んでこう言ってやった。


「ね。お姉ちゃん?」



ダクネスはもぅこれ以上はないくらいに顔を真っ赤にしてまた踞った。



****************



「あはははははは。ララティーナったらほんっと可愛いわねー。プークスクス」


「そうだな。惚れ直したぜララティーナ。」


カズマとアクアにきっちりからかわれて耳まで紅くしているララティーナが二人に抗議する。


「らっ ララティーナ言うな‼

うっ 嬉しかったんだ!

私は一人っ子で育ったから…妹が欲しくて欲しくて父に無茶を言って困らせていたこともあった…。だから…」


最後はか細く消え入りながら

ガーゼを剥がされたダクネスが私の顔を上目で見る。

その頬には[お姉ちゃん大好き‼ありがとう。]の文字がいまだくっきりと。


「何度でも書いてあげるのにお姉ちゃん?何だったらこれからずっと呼びましょうか?」


私が呆れ半分な目でダクネスを見ながらそう言うと、ダクネスはとたんにぱぁーっと嬉しそうに


「わ 私がお姉ちゃんと!? めぐみんに!? 良いのか!?わ 私なんかで良いのか!? 」


と 肩でぜぇぜぇ言いながら言うダクネスは正直怖いが。


「あなただから良いのですよ。莫迦クルセイダー。だからこんなことくらいで一々喜ばないで下さいね。

いくらでも言ってあげますから。」


とうとう泣いたダクネス。

うん。めんどくさい。


「さぁお姉ちゃん。泣き止んでごはんにしましょう。あなたの好きなオコノミヤキにしましたよ。手伝って下さいね?」


その言葉に号泣しながらも素直に手伝ってくれるダクネス。やっぱり可愛い。


四枚焼いたヒロシマヤキは冷めない様にそれぞれ厚めの小さな鉄板にのせて遠火で温めていたのでまだ熱々だ。

それを小さなコテで食べるのがヒロシマヤキのマナーだそうなので、それはしっかりと踏襲した。



****************



「うー。お腹いっぱい。ごちそうさまでしたー。」


「お粗末さまでした。どうでしたか?」


それにはカズマが答える。


「ほんとにすげぇなめぐみん。俺、一回焼いただけだぜ?よくこのクオリティ出せたな!?日本に帰ったのかと思ったよ。」


自然と顔がほころぶ。嬉しい。

やだ。顔が紅くなってる。きっと。


「私も何度か日本でお好み焼きを見てるけど、変わりないわ。むしろめぐみんの方が美味しいんじゃないの?カズマ?」

とアクアがカズマに確かめると


「あぁ。都内にはなかなか広島焼きの美味しい店は少ないからな。めぐみんのこれなら今すぐにでも都内で店出しても稼げるんじゃないかな。」


とまたも私をメロメロにする。


気恥ずかしさにダクネスを見ると、ダクネスは私のソースをパンに塗って夢中でまだ食べていた。


「お姉ちゃん?足りないならまだ焼きますよ?」


ダクネスはその言葉に顔を紅くして


「 いや。いいんだ。さすがに食べ過ぎてしまう。次回を楽しみにしているよ。

料理の上手い妹が居るというのはいいな。いつでも好きなものを食べられるんだから。」


と天使の様な微笑みでにっこり笑う。


なんだか悔しい気がするが、こんな姉が居てくれるのは素直に嬉しい。



****************



夕食後、

何となくそわそわしていた私はアクアに捕まって


「めぐみん。これ。下に敷いておきなさい。」


と防水のマットの様なものを渡してくれた。

私はとたんに意味を理解し、真っ赤になって


「あ アクア? おねしょする子供じゃないんですから…。」


と抗議する。


「いやー。こないだ凄かったじゃない? さすがにあれだけほとばしったらシーツ交換じゃぁ済まなくなるわよー。」

と楽しそう。


私は嘆息して


「私…自分があんなだとは思いませんでした…。もっと普通の女の子だと思っていました…。」


するとアクアは女神相応の微笑みで


「めぐみん。あなたは普通じゃないわよ? たぶんこの先もどんどん綺麗になってくわ。

10年後20年後 私やダクネスじゃぁ足元にも及ばないくらいの絶世の美女になります。私が預言しといてあげる。」


とても信じられない。


今でも街では[頭のおかしい]呼ばわりされてるし、容姿も際立って目立つほうじゃない。

均整のとれた、女の目で見ても凄いプロポーションをしたアクアや

万人が万人振り向くくらいの容姿とスタイルのダクネスのそばでチョコチョコしているのが私。


爆裂魔法撃てば巨乳になれると信じた時期もあったけれど、生まれ持ったものはしょうがない。

あるえやゆんゆんみたいに胸に栄養は向かなかったのだ。

でも。形には自信あるもん。ふん。


「男のひとって…やっぱり巨乳が良いんでしょうね…。カズマは特に…」


おずおずと聞いてみる。

アクアは

「そうねぇ。そんなひとが多いわね。でも…」


なんだかにやにやして言い淀むアクア。なんだ?私の胸に視線が…


「…まぁそんなこと考えず、めぐみんはめぐみんらしさ全開でいったら良いと思うわ。カズマはきっと忘れられなくなるでしょうねぇ…。」


やけに含んだものの言い方をする。

珍しい。

カズマが私の胸に一家言でもあるのだろうか?


「まぁこれはありがたく受け取っておきますね。じゃぁお先お風呂いただきます。」


と居間をあとにした。



****************



「ふぅ。どうしましょうかね。」



本当はカズマの部屋には

お気に入りの下着をつけていこうと思っていたのだが、いざとなるとなんか狙いすぎでいやらしく思われるのでは…?とかなんとか思ってしまってなかなか決められない。


「まさか…赤はだめでしょうし…。

ほとんどが黒ですからね……

やっぱり無難にウィズが選んでくれたやつにしますか。」


以前、僅かながらに成長期の胸が、ささやかに大きくなって、ブラがほんのりときつくなった時に、ウィズに相談して買い物につき合ってもらったことがあって、その時ウィズが選んでくれた薄い桜色の可愛いセット下着だ。


爆裂魔法以外にさしたる興味もなく、同世代の娘たちがきゃいきゃい言ってるほどの衣服に対する知識も皆無で、自分の身体に合った下着など選べるはずもない私に、どうか年相応でちゃんとフィットした下着を選んで下さいと頼んだら

非常にノリノリで喜んで選んでくれた。


そう言えばあの時ウィズ、アクアと似たようなこと言ってましたね…。


試着室でブラを合わせるために服を脱いでたら――


「―――――‼ めぐみんさん凄い‼

あなたを手にいれた殿方はきっとあなたに夢中になるでしょうねぇ。」


――なんて。


なんだか恥ずかしかったので深くは聞いてないのだけど…

今は無性に気になる。よし。

明日ウィズに聞いてみよう。


ともあれお風呂に行きましょう。



****************




「お。めぐみん。お先ー。」


カズマが上半身裸でそこにいた。


「あ。すみません。出ときます。」

慌ててそそくさと出ようとすると

カズマは


「良いってば。お前にゃ触られた上、ボンドで止められて包茎野郎とまで書かれたんだぜ?

今さら何恥ずかしがってんだ!?

その方が意味わかんねーだろ。」


耳まで紅くなる

ごめんなさい。


あの時は何とかしてあなたをこの世界に繋ぎとめておきたくて必死で…

ほんとよ。ごめんなさいごめんなさい。


ぎゅっと目を閉じて心の中でひとりごと言ってたら突然ぽむって頭撫でられた。


「終わったよ。出てくから入れよ。」


「あ…」


単純にカズマが出てってしまうのが哀しくて引き留めようとしたけど、今からお風呂だし、それも変かな?って思ってたら声が出なかった。


脱衣場出ていくカズマを見て

仕方なく服を脱いでいたら


「あっ 後で…」


「きゃっ‼」


カズマが戻ってひょいっと顔だけ覗かせた。

ワンピースを脱ぎかけていた私は、突然のことに小さな悲鳴をあげてしまった。


「ごめんめぐみん!すまん‼」


謝るカズマに私は紅い顔で


「どうしたんです?」


と聞いたら


「いやっ。しょうもないこと。ごめんな。いや、後で俺の部屋に来るんならさ。コーヒー持ってきてって頼もうかと…。」


「お持ちしますよ。気にしないで下さいね。」


すごい焦ってる。可愛い。


「じゃぁっ。そんだけ。ごめんなー。」

と脱兎の如く去っていった。


ふぅ。今のは私が悪い。

私が小さくでも悲鳴をあげてしまったからだ。


こんなに好きなのに

なんで悲鳴あげちゃう?

好きだから?…かな。


一線を越えたら変わるかな?


いや。きっと。

私はずっと、このままだ。


このままを、

彼は愛してくれるはず

何も偽る必要もない。


私の望みは彼が望むことすべて。

私の持てるものすべてで

彼について歩いていきたい。


私のこの15年の鎖は彼がすっぱり断ち切ってくれる。


私に絡みついて離れない

重い 鎖を。



今夜は私ひとりの身体の最後だ。


今までありがとうね。

明日からはあなたはカズマのものですよ。

辛いこといっぱいいっぱい乗り越えたね。

楽しいこともたくさんあったけど。


でもこれからは

それは何倍にも増えるんですよ。


カズマの後ろについて

これから見えるいろんな新しい景色

いっぱいいっぱい乗り越えて行きましょうね。



ありがとう。



そう言いながら

私はいつもより長く丁寧に身体を洗って、身体のあちこちを触ってお礼を言って回った。


****************



お風呂あがって台所へ向かい、

カズマのコーヒーを用意する。


いよいよですね。


不思議とわくわくしてることに気づく。

失うものの恐さよりも

これから得るものの喜びが勝ってる。


紅魔の血は変化を嫌うのに…


今は血よりも

早く

一秒でも長く

カズマの顔が見たい。



給仕ワゴンにコーヒーのセットと

残りのカスタードパイをのせてカズマの部屋に向かった。



****************



カズマの部屋のドアをノックだけしてみる。

すると中から


「開いてるから入れよ。」


と聞こえた。

私は小さな声で

「お邪魔します。」

とだけ言ってからドアを開けた。



カズマの部屋は広い。


窓際付近に大きなベッドがあり、窓際には簡単なテーブルと一人がけソファが二つ。


部屋の反対側には

いつでもアイディアを思いついたときに書き物が出来る書斎的な重厚な造りの椅子と机がある。


彼は今そこで

何やら書き物をしていた。


「遅かったからもう来ないかと思って仕事してたんだ。ちょっと待っててな。すぐに終わらせるから。その辺てきとーに座ってていいよ。楽にしててな。」


と言って

設計図らしきものにせかせかとペンを走らせ出した。


すごい格好いいんですけど。

思わず見とれてしまう……


仕事してる男のひとって

なんでこんなに格好いいんだろう。

ある意味最強だし、なんかこぅ…無敵に見える。


ベッドに腰掛け、ほぅっとヨダレが垂れそうな勢いでずっと目が離せないでいるとカズマがちらっとこっちを見て


「ごめん。退屈だよな。

寝ててもいいぜ? ちゃんと朝は起こしてやるから。」

と優しい顔で笑う。


きゅぅっ。

うゎ。胸が鳴った。顔がすごい熱い。


抱かれる前に死んじゃうじゃないですか。もぉ。莫迦。


「カズマ見てるだけで退屈しないです。私は気にしないで続けて下さい。コーヒー淹れますね。」


となるたけ平静を装ってみたけれど

顔紅くてバレバレですかね。


コーヒーをカズマの専用カップに入れて、さっき温めてきたカスタードパイをお皿に三つのせる。


「つまみながらどうぞ。」

と彼の机の脇に邪魔にならないようにそっと置く。


「うわ!?カスタードパイじゃん!?

やった‼ 先に貰うよ!」

って言いながら彼は急いでパイを頬張る。

子供みたいに喜んでくれてる。嬉しい。


あまりの可愛さにくぅぅっと胸を押さえて耐えているとカズマが


「そうそう。今日パイ食ってて思ったんだけどな。お前さ。店やらないか?」


相談しようと思ってたところだからちょっと面食らった。


「いや。俺もこれからどんどん忙しくしてくつもりだからさ。お前らとクエストに行ってやれないことも出てくるだろうし…。じゃぁ冒険しない間何もする事ないとお前…寂しいだろ?

お前こんだけ美味くて色々な料理出来るんだから、食堂とかカフェとかしないかなって。

どうかな?」


私は微笑んで


「私は、カズマがしたい様にしたいです。

あなたが望むなら、私はそれを全力でやりたいです。あなたを信じていますので。」


と真っ直ぐに彼を見つめて言うと

カズマは笑って私の方に手を出した。


私がゆっくりその手を握ると

急に引き寄せられた。


「――!?」


カズマはびっくりした私をそのまま抱きしめ

私の左の耳もとに口を当てて小さくささやく。


「さんきゅめぐみん。信じてくれて。」


もぅ。

身体が熱い。顔が熱い。

その声に身体中が痺れる。


逝ってしまいそうなくらい気持ちいい。蕩けてしまう。

このままもう私の中に入ってきて。

お願い。


もう下着も触らなくても判るくらい。太ももの内側をつたって流れてる。


私は彼の腕の中から何とか声を絞り出して


「…カズマ………

私を…抱いて下さい。

…私の中に入って下さい。お願いですから…。愛しています。心から。」


と言うと

カズマは私を抱きしめていた手をほどくと、優しくディープなキスをしてくれた。


それに私の身体中が震える。


魂が震えるキス。

もう私は止まらない。


彼の舌が私の舌を触る度に、彼の胸を掴んで喘ぐ。

たまらず声が漏れてしまう。

キスだけで逝ってしまいそう。


やがて彼の手が私のささやかな胸を包む。


「――――‼」


声にならない声で震える。

ブラ越しに触れただけなのになんでこんなに気持ちいいの!?怖い。


ブラの下から手が入ってきて

ゆっくりと胸が揉まれる。


「あ…んん――ぁん…」


揉まれるのってこんなに気持ちいいの?なんで?揉んでるだけなのに。


ふいに彼の指が乳首をつまんだ


「――――――‼ あ…ぁん‼ 」


頭が真っ白になって軽く身体が何度か痙攣する。

ちょっと逝ってしまった。


カズマは私を抱きしめて

また耳元で言う


「めぐみん。お前の全部。見ていいか?」


私が黙って頷くと

彼はワンピースを脱がした。


そして

下着だけになり、ブラもゆっくり外される。

彼は大きくため息をついて

私を見ている。恥ずかしい。


あまりの気恥ずかしさに目をそらし

「小さくてすみません。」

というと


カズマは

「綺麗だってば。本当。絵に書いたヴィーナスみたいだ。見惚れてしまって触るのが悪い気がするよ。」

と。


私は慌てて


「触って下さい‼ 好きなようにしてください。お願いですから…」

と懇願した。


彼は微笑んで


「じゃぁ遠慮なく。

ぱんつも脱がすぜ?」

と。


私が頷くと彼は

ゆっくりとショーツを脱がした。


「綺麗だ…。どうしよう。

もう止めれる自信ないぜ?」


彼は触るのを躊躇しているみたいなので、私は彼の手を取って私の股間に導いた。


「お願い。触って。

私の中に入って。お願い。」


すると彼が指を私の中に滑り込ませた。


「あぁぁぁぁぁああああぁん――」


何度も痙攣し、ものすごい大量の愛液?が飛び散る。


何度逝くの?私は。

凄い。

凄い気持ちいい。何!?

まだ指でしょ!?


あまりの気持ちよさに涙が止まらない。

彼の指が私の中を動く度に

電撃が身体中を痙攣させる。

だらしないけどよだれが口から溢れる。このまま続けられたら気持ちよすぎて死んじゃう。


「や…あん―ぃや…あん―嫌ぁ……ぁん―ぁん―…挿れ…て―お願…いぃ…ぁぁん―カズマ―カズマの挿れて欲しいの…ぁん―ぁぁん」


必死にお願いしたら

カズマも脱いでくれて私の上に。


涙がいっぱいに溜まった紅い顔で


「カズマ……愛しています。

私を貰って下さい…。」


と絞り出した。


私は

カズマがゆっくりと私の膣穴にカズマのを当てるのを幸せいっぱいに感じていた……時



突然

部屋中にまばゆい光が満ちてきて

空間が歪む


やがてその光は部屋の中央に集まり人の形をつくり――


―エリスが降臨した。

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