第19話 めあねす




「落ち着いた?声出せる?」


アクアの優しい声が私たちに語りかける。


私はなんとか身体を起こしアクアを見ると、身体の前につきだした両手の中にある紅い光と白い光を大事そうに撫でていた。

ダクネスもその光の美しさに目を離せないでいる。


「これ。なんだか分かる?

あなたたちの遺伝子情報が詰まった卵子なのよ?

ほんとに綺麗な色…。」


本当に見とれてしまうほどに綺麗な光の珠は、鼓動するように優しく明滅を繰り返している。


「今からこの卵を私の中に融合させます。見ていてね。」


そう言うと

アクアの身体が青く光輝き、大事そうに持っていた珠を自分のお腹へ。


「んっ…」


低くうめいたアクアを紅白の光が包みこみ、やがてゆっくりと光は収束して消えた。


私たちは神々しいまでのその光景に口を開くことも出来なかった。


なぜだかわからないけど

美しくて 愛おしくて泣きそうだった。



「はい。終わり。

ありがとうめぐみん。ダクネス。

この娘は二人の遺伝子をしっかりと承け継いで、私とあなたたちの特徴を持った娘に産まれます。

どこが似るのかはわからないけど、どうか永遠に愛して下さい。」


ぼろぼろと泣きながら微笑んで言うアクアに

私たちも涙も拭いもせず、ぼろぼろの笑顔で言った。


「「永遠にこの娘を愛することを誓います。

たとえこの身がが滅びても、永遠に。」」



****************



それからしばらくはおだやかに時が過ぎて行きました。


あぁ。そうそう。


あの朝になぜカズマの姿がなかったのかと言うとですね――



****************




「そう言えばカズマはどうしたのです?」



やっとすべてが落ち着いた頃に

思い出してアクアに聞いた。


「あぁカズマ?

朝早くにエリスのとこに行ってくるって出てったまんまね。

もう帰って来ると思うけど…。」


「エリス様!? あいつはエリス様にまで気楽に逢いに行けるのか!?

どんだけ破天荒なんだ…?」


「まぁまぁ。エリスって言ったって、ただの泣き虫パッド娘よ?

そんなに畏まることないわよー。」


「いやいやアクア。エリス様は本当に偉大なんだぞ!? まぁお前が身近過ぎてその辺の感覚が鈍ってるのは確かなんだが…。」


そうこう言ってたら目の前の空間が歪む。テレポートだ。



「ただいまー。みんな。

上から見てたぞー。

めぐみんとダクネスのヨガり様に思わずエリス様の前で欲情して鼻血出たぞ!?

ほんと 危なかった…。

アクア容赦なかったなぁ…。」


「てへ。」


っと舌を出すアクアに

私たち二人は顔から火が出そうだった。


「責任取ってくださいね!?

私の下半身を見てください!

もうそれは凄いありさまです‼」


と言って顔をカズマからそらし

ローブを首まで捲り上げて見せる。

もう下着からソファから床までびしょびしょになっている様子に恥ずかしくて顔が燃えるが、私は開き直りの極致だ。


なんのコメントもないカズマに

紅い顔のままちらっと覗けば

カズマは私の下着姿を目をそらさずに凝視していた。


「何をジロジロ見てるんですか!?

私のエロさに呆れたんですか?

じゃぁ貧乳も見せてあげますよ!?どうぞ!?」



とブラも上にめくってカズマに食ってかかると

彼はため息混じりに


「…やっぱり綺麗だよなぁめぐみんは。

それは貧乳じゃなくて美乳だよ?

本当にすごい綺麗だ……。」

と呟いた。


その言葉に胸が、音がするほどに大きくドクンと鳴り、子宮のあたりが燃えるように熱くなった。

彼の目が私の身体を舐めていると思うだけで立っていられなくなりそうに乳首や股間がジンジンしてくる。


「ぅん…」


堪らず声が漏れ

その恥ずかしさに足が砕け床に崩れた。


私…ほんとにダメかも…

おそらく

もうこの快感には抗えないだろう。


「ほんとに…責任取ってくださいね…。」


とかすれる声で呟くのが精一杯だった。



****************



それから

彼は一枚の巻物を取りだし

私たちに見せた。


「これは俺たちの愛娘の名前だ。

エリス様のとこで書いてきた。

アクアから子供が出来たって聞いてから、ずっとずっと一生懸命考えてたんだ。

アクアに頼んで、めぐみんとダクネスの遺伝子を貰うって決定の元にな。」


そう言ってカズマはウィンクして笑った。


アクアは

「私はあなたに任せるわカズマさん。」

と笑う。


ダクネスは

「私たちらしい名前にしたんだろうなカズマ? 美しい名前だぞ?」

と期待全開。


私は…

「ちょっと待ってくださいカズマ。

我が娘に相応しい名前は私のほうが上手くつけれますよ?

一般人の感覚ではとても私たちの娘の神々しさには追いつけないでしょうし…。[てんだー]よし。これにしましょう。」


「「「慎んでご辞退いたします。」」」


私以外の三人が声を揃えて却下するが、てんだー以上に合う名前を三人が思いつく訳がないのに…。

と不満で一杯だ。


「大丈夫めぐみん。お前も絶対気に入るさ。

俺たちの愛娘。俺たちの希望。

その名前は……」



「[めあねす]だ‼」


ばっ

と巻物を開いてカズマは私たちの前に仰々しく掲げた。




****************



「すごーい‼格好いいじゃない!?」


アクアが手を叩いて喜ぶ。


「いい名前じゃないか‼ カズマにしては上出来だ。…めあねす…。

うんっ!しっくりと来るな‼」


ダクネスも最高に気に入ってる。


「…めあねす…?

カズマあなたは…。アクアもダクネスも…それで良いのですか……?」


私が俯いて泣きそうな声で聞くと

カズマが


「良いさ。格好いいし可愛い。

いい名前だろ?

めぐみんは気に入らないか…?」


心配そうに私を覗きこむカズマに

私は小さな声で俯いたまま


「…いいえ……。」


「ん…? 聞こえないよ?」


「いいえって言ったんです‼

カズマ‼あなたを愛しています‼

私たちの娘に相応しい最高の名前をありがとうございます‼」


と叫んで

カズマの首に抱きついて思いっきり長い長いキスをしてやった。


それをアクアとダクネスが笑いながら見ていた…。


****************



――めぐみん、アクア、ダクネス。

最愛の三人の遺伝子を合わせた最愛の娘に相応しい名前[めあねす]。


彼女が豊かで

幸せであるように

4人でずっとずーっと護っていこう。


ずっと一緒に居れますようにと

願いを込めたその名前を

決して忘れぬように

いつも呼びながら―― 。



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