第11話 究極の爆焔魔法誕生秘話




「ん…………」


屋敷にテレポートで戻り、

以前ダクネスが住んでいたままに保っていた部屋にダクネスを寝かせて部屋を出る。


ごめん ダクネス。

俺が悪かった。


今回の件での最大の功労者で最大の犠牲者は間違いなくダクネスだ。

こんな結果に終わったのは、俺がダクネスの身を余りにも案じてなかったからだ。

起きたらどんな罰でも受けてやるからなララティーナ。

今はゆっくりと休んでくれ。


部屋の前で呟いて広間に戻ろうと踵を返すと、めぐみんとアクアが。


「そんな顔しないで下さいカズマ。あなたはよくやりましたよ?

あんな戦い方私たちでは思いつきもしないんですから…」

「そうよカズマ。あなたが居なかったらみんな死んでたと思うわ」

「―――」


ありがとうともなんとも言葉に出来ない。

見かねためぐみんが


「お茶でも淹れますね。広間に降りましょう」



****************




「ん」


めぐみんがブラックコーヒーのはずのカップを渡してくるのを黙って受けとる。

めぐみんはアクアに紅茶を入れながら


「めあねすはどうですか?」


「ぐっすりと寝てるわ。よっぽど恐かったんでしょうね。

今は…大丈夫。心から安心しきってる」


「良かった……」


めぐみんは

自分の紅茶を両手で包むように持って俺の隣に座りながら

ため息混じりにそう呟く。

あんな絶望的な力を持つ世界最強の大魔導師でも、ひとの親だもんな。

心底ほっとしてるめぐみんを見て、俺もやっと力が抜けた。


「きっと、アクアが居るからですね…本当に良かった……アクアが戻ってくれて…。あの子小さい時から毎日毎日、アクアかあさまにお祈りしてたんですよ? 起きたらすぐに、今日も一日お守りくださいとか…寝る前は、今日も一日楽しかった。ありがとうねって」


それにアクアは


「うん……見てた…。 私も、こんないい子に育ってくれてありがとうってずっと言ってた……。 抱きしめたいけど、身体がないって苦しかったわよ? ほんとこんなに可愛くて…可愛くて……どうしようもしてあげられなくて………――─」


最後は嗚咽で聞き取れなくなった。

涙をぐじぐじと拭いたアクアがめぐみんに向き直って


「ありがとね♪ めぐみんのおかげよ。 本当に感謝します」


と、今度はくもりのない満面の笑顔でそう言った。

それを聞いてめぐみんはうつむいて、目を閉じて、しばらくアクアを見なかった。



****************



「なぁ?アクア。 お前めあねすが起きたらもう出てこれないのか?」


めぐみんが

私はちょっと色々片付けてきますと残し出ていってから、今はアクアと向かい合って二人きりになっている。


「そうね。 私の身体はもうこの世界では実体化出来ないの。 本来の女神の力も全くないし。  天界にも行けない。 ただ、せめて残りの力でめあねすを護るだけ…」


うつむきかげんで話すこいつは珍しい。

よほどつらいんだろうな。

俺は大きく嘆息して、言ってみる。


「あの時も、今でもずっと、言いたかったことがあるんだけど、言っていいか…?」


すると

アクアが珍しくおどおどと


「いっ いやぁ~。カズマ? そう言えばめぐみんの魔法ってなんなの?凄くない? あんなの 主神さまだって撃てないわ?  名前…なんだっけ…!?」

「エクスプローデッド・ノヴァ?」

「そうそうそれっ! あれってなんなの? あんな火力の魔法なんてこの世界にも地球上にも存在しないわよね? シリウス並の熱量でしょ? それにめぐみん、あれをコントロールしてた……凄い魔力じゃない?」

「あれはあれから毎日毎日あいつが撃ち続けた爆焔魔法の究極型なんだよ。 あいつの魔力の容量は紅魔族でも世界的にも史上最強だ。 ウィズもバニルも保証してる。 あれから毎日毎日毎日撃ち続けたんだよ。 したらあいつ、あのエクスプロージョンを一日三発撃てるようになっちまったんだ」

「一日に三発も!? 身体もつの…!?」

「もつようになったんだ。 三発目には鼻血出てふらふらにはなるけどね」

「そりゃそうでしょうねぇ…普通の人間なら二発も撃てば白髪になって脳が溶けて干からびちゃうもの…」

「だけどあいつはそうならない。 だから俺はあいつに聞いてみたんだ。 そのエクスプロージョンって、魔方陣一個につき杖から一本しか出せないのか?ってな。 あいつは寝耳に水だったみたいで、それから練習してエクスプロージョン魔方陣を同時に三個創ることに成功したんだ。 ……あとは、杖から出す爆焔の流れを敵に向けて放てるのなら、放つ最中に杖を動かしてみたら操れないか?って言ってみたんだ」

「――っ」


アクアがごくりと唾をのむ。


「そしたらあいつ、毎日毎日練習してそれをものにしたよ。出来るかどうか半信半疑だったみたいで、出来た時には泣いて跳ねて喜んでた」


もはやアクアは相槌だけで

こくこくと相づちだけで声も出ない。

俺はそれがおかしくて笑いながら


「最後に、じゃぁ三本の爆焔と三個の魔方陣を一気に爆発させてから、向きをお互いの爆発に合わせて融合させたら、核融合みたいに原子と原子、分子と分子、粒子と粒子が誘発を繰り返して、より強大な熱量と爆発力を得られるんじゃないか?と。 そしてそれを自由に動かせるんじゃないかって言ってみたんだ」

「―――」


もはや何も出ない。


「あいつはやっぱり天才だ。 俺が言ってみた可能性をすべてものにしてみせたんだ。本当に凄いやつなんだ。だからさ。信じれたんだよ。可能性があるんなら、あいつなら必ず手に出来るってな。

今までも

何度も仲間のピンチですら、爆裂魔法しか使えないからって哀しんでただろ? だったらいつでも仲間を救えるような魔法を、俺たちで産み出せばいいって言ったんだ。爆裂魔法しか使えないのなら、

爆裂魔法を使ってフレキシブルな魔法をこれから俺たちで創って、爆裂魔法を究極の魔法にしようって」

「―――そんなめぐみんは確かに規格外に凄いけど…それより何よりもほんっっとカズマって凄い突拍子もないっていうか……とにかく凄いわね…? 太古より伝わる究極魔法を軽々と造り変えて超えてしまうあんたが神より何よりも恐いわ!?」

「めぐみんは惚れ直してくれたんだけどなぁ…」


声をあげて二人で久しぶりに笑った。



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