第28話 スライムと大根

青くてツルッとした小さい魔物がこちらを見ている!


(まあ、どう考えてもスライムだな。しかし、もっとグロいのかと思ってた)


ドロドロでは無く、ツルッとしているし、大きさも30センチ程しかない。


(この世界のスライムはどっちだろうな?)


最弱か、物理がきかない厄介な敵、まあ厄介と言ってもグィーノも居るし万が一のことは無いだろう。


(あれ?何か違和感が?)


アワリティアは、首を捻っていた。


アーティ達はスライムを見るなり、


「「あ!」」


「きゃあ!」


興味を持ったものが2人、驚いたものが1人だった。


「え...?なぜアーティ様とリズ様はそんなに驚かないんですか?魔物ですよ!」


「大丈夫だよ、ジェニー。青いスライムは草食で人を襲わないんだよ」


「そうなんですか、アーティ様は物知りですね!」


グィネヴィアに褒められて嬉しそうなアーティは、生えている草を持って、スライムに近づくと。


「ほら、こうやって草を持っていると近づいて来るんだ。ひんやりしていて気持ち良いよ」


アーティの近くに来たスライムをグィネヴィアは、恐る恐る触った。


「本当だ!ひんやりしてプニプニしてる!」


アーティとグィネヴィアは、2人で楽しそうに笑っている。


(アーティ、俺たちの事忘れてたりしてな...)


グィネヴィアに会ってからあっちに目が行ってしまっている。すると、


「アランとエリンもスライム触る?」


とリズが言ってくれた。


(ちょっと触りたいな)


(私も触りたいです!)


(私も〜)


エリンがいきなり念話に入ってきたことにアランは、


(どうしたんだ?いきなり)


(うーん、スライムって美味しそーだなー、と思って)


(...確かに言われてみれば美味しそうではあるがな)


リズに連れられてスライムのところまで来た。早速触った。


(確かに気持ち良いな)


(......やっぱり美味しそう)


(...そうだな、野菜でもやってみるか。アワリティア、俺の手だけ結界頼む)


(はい、わかりました)


(何が良いかな)


そこら辺にある雑草に似ていないと怪しまれてしまう。


(じゃああれなら良いかな?)


アランが想像魔法で出したのは大根の葉の部分だった。


(金平糖より魔力使うんだな。まあいい、食べるかな〜っと)


アランが葉を差し出すとスライムは、近寄って来て体に取り込んだ。すると、スライムは、止まって動かなくなってしまった。


(ん?どうしたんだ?)


しばらく動かないスライムをエリンが指でつついてると、いきなり飛び跳ね始めた。


(うお!何だ?)


スライムが飛び跳ねると同時にグィーノが近くにいた。


「大丈夫ですか」


「大丈夫だよ。ただ跳ねてるだけだよ」


「そうですか、しかし随分とアラン様に懐きましたな」


スライムは、飛び跳ね終わった後、アランにまとわり付いていた。


(うわ、やばい...癖になりそうだな)


そのスライムは、まるで座った人をダメにするクッションのようだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る