第25話 黒マントと村

暗い森の中をマントをかぶった何者かが歩いていた。いきなり立ち止まると、


「...早く出てこい」


「やっぱばれます?流石ですね〜」


そう言って出てきたのは茶髪で人族の若者だった。


「結構頑張ったんですがね」


「無駄話はいい、今度のターゲットはこれだ」


そう言ってマントが紙を渡した。その紙を見て一瞬顔をしかめるが、次第にニヤけ出した。


「いや〜、さすがに無理だと思ったがこれなら大丈夫ですよ。任せといてください。金は色をつけてもらえるんですよね?」


「わかったらさっさと行け。金なら後払いだ」


そう言うと踵を返して帰って行った。


「相変わらず冷たいな〜」


若い男は再び紙に目をやり、


「勇者の孫ね、どんなかな?」


男はその場から一瞬で消えた。





〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜





アランとエリンはユリウス達が出かけてから、アーティ達の鍛錬を見るなど変わり映え無い日を過ごしていた。


(...何も無いし、修行も出来ないし、退屈だな)


(そうですね)


エリンはもうほとんどの時間を寝て過ごしていた。


(なんか起きねーかなー)


そんなことを考えているとも知らずにアーティ達は、話し合っていた。


「最近アランとエリンさ、退屈そうだね?」


「そうだね、まあ同じことを見てればそうなるだろうな」


「どうしようか?」


2人揃って悩んでいると、


「「どうか致しましたか?」」


リーベとグィーノが話に参加した。


「退屈じゃないことですか?」


「そうですね、散歩などはいかがでしょうか?あまり出かけておりませんので」


リーベの答えにユリウスは、


「なるほど、それはいいね」


「お父さんとお母さんに言わなくてもいいのかな?」


リズが不安そうに言うと、


「もちろん許可は取ってあります」


「「さすがリーベ!ありがとー!」」


「それでは私は散歩の準備をしてまいります」


こうして、アランたちが知らないまま散歩の準備をはじめるのだった。





〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜





(あれ?何だ?)


気がつくと馬車があった。


「さあ、散歩に行くよ!」


アーティに言われて理解したアランは、


(散歩か、暇つぶしには良いな)


(何か新しい発見があるかも知れませんしね!)


少しアワリティアと話していると村が見えて来た。


「そろそろ着きますので準備をしてください」


「着いたよ!」


少し大きめの村だった。すると、


「これはこれは、アーサー様、エリザベス様ご機嫌よう」


「「村長、久しぶり!」」


白髪白ひげのまさに村長の鏡のような人が出迎えてくれた。村長はチラリとこっちを見ると。


「ひょっとしたら、その2人がアラン様とエリン様ですか?」


「そうなんだよ村長!すっごく可愛いんだよ!」


「そのようですな。しかし、立ち話も何ですから家に来て下さい。少しボロいですが」


少し歩くと大きめの家が見えた。


(あんまりボロく無いな)


「さあ、上がって下さい」


こうして村長の家に入るのであった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る