第12話

何の脈絡もなく、いつも突然思いだすそれ。



『イズミってさ、変わったよな。なんつーかさぁ。陰キャになったっつーか?』

『あっそれなぁ。付き合いわりぃし、最近なんかぶつぶつ言って気持ち悪いっていうか。暗いし』

『あぁ、それ。トモダチのよしみでいってやるけどさ、アレ。ほんとキモイからお前やめたほうがいいと思うぞー』

『な。この前女子もンなこと言っていたし』


 直接そんなことを言ってきたやつもいた。多分、あれっきりだ。彼らとつるむことはなくなったし、それと同時にクラスの誰とも話さなくなった。皆遠目からひそひそとこちらの悪口を言ってくる。別に、はっきり聞こえるわけでもないが、それでも態度で伝わるものだ。


 あからさまな邪魔者扱いや、僻みやら妬みを隠さない同級生に、別にいい思いをしたわけでもないが、不満に思うこともなかった。

 イジメというほどでもないそれは、確かに俺に問題があったから。


 世の中で起こる大概の問題に、過失の割合が100体0になることはほとんどないという。


 俺は、友達とつるむこともなくなったし、家で趣味もなかったから時間だけはあった。だけど家でずっと一人でいることは変なことまで考えてしまって、とにかく何かをしたくて、勉強した。別に、頭が良いわけでも勉強が好きなわけでもない。けど、ほんとにそれしかやることがなかっただけで。

 だから、テストも随分点数がたかくて。成績だけは優秀な嫌われ者の出来上がりである。


 親は家を空けがちで、広い二階建ての家に一人きりなことがおおかった。寂しい、わけでもなかったが、あの頃は本当に、生きていく目的とかもなかった。

 生きる目的、なんていうと大層なものに聞こえるけども結局のところただぼうっと生きてて、それが無性にむなしくって、でも死ぬこともできなかった。



 うん、あの頃はもう何があったか細かいことはハッキリと覚えていない。けど、虚しさとか中傷的な感情とイメージは残ってる。ただただ泥の中を毎日歩ているみたいな日々だった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る