第10話

 アイラside


 ウミおにいちゃんにかしてもらった本を読む。四角い形をした本は、わたしの知っているものとは少し違っている。けれど、おにいちゃんが本だといっていたので、そうなのだろう。わたしの知っている本は、紙をくるくる巻いて、文字だらけだから。こんなに、絵がいっぱいあるのは初めて見る。いつも、難しいのを読めと言われて、それをどれくらい覚えているのか聞かれるというのに。これくらいのないようならすぐに覚えてしまえる。

 あぁ、でもおばあちゃんは一度も私に覚えているかは聞かなかったな。おにいちゃんはどっちだろうか。

 漢字、というやつは読めない。ひらがなというらしい簡単な文字は、見たすぐは別の絵に見えるのに、ぱちりと一回瞬きするとそれが意味を持った文字に変わるのだ。不思議な感覚。でも、それは元から知っていたような感覚でもある。

 おにいちゃんが漢字を教えてくれるといっていた。それだったら、最初に見せてくれた絵の少ない本も読めるようになるのだろうか。それは、楽しみだなぁと思う。どうせ覚えろというのならば、ワクワクするような、おにいちゃんが読むようなのが良い。


「あがったよ。」

 

 おにいちゃんがお風呂から帰ってくるまで、夢中になって本を読んでいた。絵がいっぱいで、文字が少ない本だったので、もしこれで内容を言えと言われても問題はないだろう。


「うん。」

「本面白いか?」

「うん!」


 …おにいちゃんは、私に内容を聞いてこなかった。面白かったなら良かった、といって頭を撫でてくれる。きっと聞かれないなら、それでいいのだろう。

 おにいちゃんとであったこのにほんという国は、私の知らないことがいっぱいある。知らないことで出来ている。私が何これ、って聞くたびに、おにいちゃんはこれもしらないのか、って驚くことがある。聞くのはいいけど、おにいちゃんに変なこと言いたくない。

 そんなことをおもいながら、私は笑っておにいちゃんに抱き着いた。

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