第3話初めての魔法

「バーノン?バーノンってなんだよ」


「......バーノンを知らないのか?初級魔法だぞ」


「いや、知らない。どうやって使うんだよ」


「まぁ、そう焦るな。腹が減っているのだ。食ってからにさせてくれ」


「俺も記憶が無いんだ」


「いや、もういいよ!このやり取り!何回させるのさ!しかもこれでまた体力が無くなってくんだよ!焼くのでさえギリギリなんだから!」


そういうことならしょうがない。待ってやろうか。


「おお、やっと焼けた......じゃあいただきます」


少女がばくばく俺が持ってきたキノコやらなんやらを食べている。


食べ終わって満足そうにしてる少女に俺は聞いた。


「そういや名前聞いてなかったな。なんていうんだ?」


「む、確かに自己紹介をしていなかったな。しかしそれをいうなら私も名前を知らないぞ」


「......俺か、俺の名前は」


俺は記憶をたぐる。この思いだそうとするときにでてくる謎の感覚。フワッとするような、そんな感覚。


「俺の名前は、アキトだ」


「......そうか、アキト」


「いや、待てよ。名乗れよ。なんて名前だ?呼ぶときに困るじゃねーか」


「私の名前は、アリーヤだ」

「アリーヤ!よろしくな!」


アリーヤが驚きの目でこちらを見た。


「どうしたんだ?」


「い、いや何でもない。そうだ!この森から出なければならないな。その様子だと、森からの出方はしらないだろ?」


「森の出方?そうだな。どこから出れるんだ?」


「教えてやる。ついてこい。礼にだしてやる」


「おお、ありがとな。アリーヤはどうするんだ?」


「私はまだ用事がある。アキト、君を送ってからまた戻るよ。」


これは大変だ。まだアリーヤに教えてもらうことがたくさんある。


というか森から出してもらってもそのあとどうすればいいのかわからない。


「待てよ。俺も手伝うぜ?このあとも何をすればいいのかわからねーしな」


「な......!だ、大丈夫だ!それにアキトが手に負える相手ではない!」


はぁ?なんだよ。手に負える相手じゃないって。


「いやだね、俺はアリーヤに付いていく。そう決めたんだ」


アリーヤが呆れた表情をした。


「はぁ......ならいいが、死んでも自己責任だぞ」


......死ぬってなんだ。


「え?何しに行くの?」


アリーヤが自信満々に、そしてドヤ顔で言いはなった。


「ふふ...なぜなら私は魔王だからだ!そしてここには魔王軍となるべき魔物がいる!そいつを仲間にするために私は来た!」


......え?何を言ってるんだろう。


もしかして今さっき食べたのは毒キノコだったのかもしれない。


「ふふ......どうだ?驚いたか?......な、なんでそんな哀れみの表情で私を見るんだ。やめろ!頭を撫でようとするな!」


俺はこの可哀想な子のことを見守ってやろうと思った。それは年上としての責務だ......


「な、なんで涙ぐんでいる?」

「いや、何でもないよ......ところでその魔物っていうのはどこにいるんだよ?」

「いや、知らない」

即答したアリーヤ。


......本当に大丈夫か?


「ち、違うのだ。この森の主は気まぐれな性格でな、よく引き込もっていてそしていつも森の中をほっつき歩いているのだ」


......なんだよそれ。どこのニートだよ。


「だからどこにいるのかわからないし、いつ出くわすかわからないんだよ。だから私達もここをほっつき歩いて、出会うのを待つ!」


自信満々に言っているが、何その行き当たりばったり。


......この先が不安だ。

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