供述調書(ト書き)

天霧朱雀

ト書き

供述調書


某所:警察の取り調べ室

犯人:「僕が彼女を殺したんです! 信じてください!」

 (犯人ディスクに乗り上げ )

刑事:「そう言われましてもねぇ、あなたにはアリバイがあるではありませんか」

犯人:「だーかーらー、防犯カメラに写っていたのは僕と双子の弟なんです」

刑事:「戸籍を調べさせて頂きましたが、あなたにご兄弟はいらっしゃらないではございませんか」

犯人:「そっそれは、父が出生届を出すときテンパっちゃって僕と弟の名前を同じ名前で書いてしまった挙句、役所の手続きがおかしくなって弟の戸籍がないんですよ。ここに来た時お話したじゃないですか」

刑事:「ではその弟さんを連れてきてください」

犯人:「彼女を殺したときに喧嘩してそのまま東京湾に捨てちゃいましたって、これもさっき言いましたよね?」

刑事:「弟さんにつきましては捜索致しましたが遺体が出てきていないんですよ。目撃者も証拠も無いあなたを起訴する事は今の法律では難しいのです」

犯人:「その前に、彼女を殺したのが僕だっていうことも忘れないで下さい」

刑事:「そちらの、彼女というのは彩崎麗華の話ですか? 彼女は他殺ではなく密室での自殺。それも隣のマンションの住人から一部始終を見ていたという証言も、彼女の遺書もあります。こちらも証拠不十分でしょう」

犯人:「どうしてわかっていただけないのですか! 僕は二人も殺した殺人犯なんですよ!」

刑事:「失礼ですが、そんなひ弱な百五十センチの中学二年生に言われたところで警察は騙されませんよ」

犯人:「身長なんて関係ないじゃないですか」

刑事:「では仮にあなたが殺人犯だとしたら、証拠不十分、アリバイも完璧なのになぜのこのこと自首しにきたんですか? 私が犯人なら完全犯罪に酔いしれた挙句、高飛びしますけど」

犯人:「に、日本警察はクズだ」

刑事:「こほん、それで? 自首した動機を述べなさい」

犯人:「僕に命令しないで」

刑事:「生意気な餓鬼だな、」

犯人:「クズ警官がなんか言ってるよ」

 (刑事不機嫌)

犯人:「僕が自首したのは、僕が彼女を殺したせいで僕自身の心が壊れてしまいそうだったんだ」

刑事:「というと、」

犯人:「僕はもともと小心者で、事故で死んだ両親にもバカにされるほど臆病だったんです。だから、自分が彼女や弟を殺してしまったと思うと、怖くて怖くて夜も眠れません」

 (刑事溜息)

犯人:「誰かにこの罪を告白して、さっさと法で裁かれればすこしはこの胸のもやもやが晴れるかとおもって自首をしたんです」

刑事:「しかし、証拠不十分でございますが?」

犯人:「そーなんですよ! 僕としたことが、完全犯罪なんてやらかしたもので、あとで後悔しても誰も裁いてくれないんですね! ドラマの万能警察なんかが僕の事を検挙するんだろうなって思ってずっとびくびくしていたのにいっこうに来て頂けないんですもん」

刑事:「さりげなく侮辱するのやめていただけますか? 名誉毀損で訴えますよ」

犯人:「異議ありですよ!……まぁ罪状は殺人でなら検挙されたいです」

刑事:「とにかく、お話はわかりましたが物的証拠が出てきていない以上、こちらも処分保留で釈放というカタチで対応する事になっています」

 (おもむろに書記をしている同僚に精神鑑定へって相談しはじめる)

 (犯人察したように、)

犯人:「ちょ精神病院に連れてく手配はしなで下さい」

刑事:「マスコミにばれたら証拠不十分なのに学生を起訴したことで事件になる。警察としてはそっちの方が迷惑極まりない損失ですので」

 (刑事ほとほと嫌々そうに)


場面:犯人自宅へ帰り

場所:路地裏


犯人:「僕は重大な犯罪を起こしたのに、誰も信じてくれなかった」

犯人:「どうしよう、このままじゃ僕、罪がつぐなえない」

犯人:「……そうだ、それなら新しく罪を作っちゃえばいいんだよね」


 (ホームセンターで包丁を購入)

 →(でも結局、犯人通り魔をしようとするんだけど怖くてできなかった。)


犯人:「ふえぇ、知らないヒトを殺すのは怖いよぉ」

犯人:「でも僕って引きこもってばっかりだったからいつも家で顔を合わせる弟とアイドルの彩崎麗華ちゃんしか知ってるヒトがいないよ」

犯人:「まじつらぃ、死のう」


→東京湾で自殺する。


(沈んだ死体の弟のモノローグ:心の声)

死体(弟):これだからにぃさんは。



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