このルートを選ばせる。

水無瀬

第1話

「ただいま。」

「おかえりなさい。」

「全員そろってるわね。感心感心。」

「久しぶりに戻るから家に居なさいって言ったのは母さんだろ。急すぎて、店長に平謝りだよ。」

「そうだったっけ。ごめんごめん。」

次男である晴の言葉にちっとも悪いとは思っていなそうに、母親は笑う。

「なんか用があるんだろ?」

俺が促すと、母さんはきょろんとした顔をして

「ああ、大した話じゃないのよ。」

そう前置きして

「近々家族が一人増えるから。真冬の隣の部屋掃除しといてね。」

「…?」

全員が一度絶句した後、代表したように、ナキ兄が手を挙げる。

「質問。」

長男であるナキ兄が妥当な質問をする。。

「母さん再婚するの?というか父さんと離婚するの?真冬ももう高校生だし反対はしないよ。な。晴、愛希、真冬。」

揃って頷く。でも、たぶん違うな、と全員が思っているのもまた事実。思った通り、母は首を振る。

「いや、しないわ。結婚は志岐でお腹いっぱいよ。」

両親は喧嘩別れしたわけではなく、あまりに父は情けなく、母は強すぎたというだけの話だった。2人は恋人としては一流だ。父と別居して長いが、離婚もせず、恋人に戻っている。

「じゃあ何、まさか妊娠…。その年で。」

違うとは思いつつ、俺が言い終えるか負えないかの間に、拳がクリティカルにヒットした。母は普通に強い。男四人を育て上げてるだけはある。そしてナキ兄曰く、"内面的には1番愛希が父さんに似てる。"それが、俺の殴られる理由らしい。

「愛希。」

「どういうことなの?一体誰が来るの。」

真冬は殴られた兄を気にも止めない。いつものこととはいっても、少しは心配してほしい。

「来るのは、18の娘。歩と言います。」

「は!?」

沈黙を守っていた晴がついに切れる。

「いい加減にしろよ。母さん。それは誰なんだよ。」

「あんたらの従兄妹。」

晴は頭を抱える。

「お願いだから最初から最後まで説明してくれ…。結論だけを告げるのは母さんの悪い癖だ…。」

「そうだよ?僕たちに従妹がいたなんて初耳なんだけど。」

「正確にはそれも微妙なんだけどね…。」

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