第6話 押してダメなら
ガキーーンッ!
モンスターの背後から放たれた俺の一振りは、鋼鉄のような硬さの
「っー!なんつー硬い皮膚だ。俺の手のほうがダメになりそうだ!」
でも、モンスターの注意を、エルフの女の子から自分に振り向かせることには成功したみたいだ。モンスターは俺の方へと向き直り、今度はこちらへと歩いてきている。作戦成功だぜ!
さて、これからどうしよう!こっからの事何も考えてないよ俺!
大体こういう異世界では、さっき俺が背後から斬りつけた時点で、なんらかのチート能力とかが発動したりするじゃん!それに俺はかけたんだよ!かけた結果何もおこらなかったけどな。
バカバカバカバカ俺のバカ!なんで能力の一つも開花してくれないんだよ・・・。物凄い魔力が剣からほとばしるとか期待してたのに・・・。
とりあえず逃げるか?いや、逃げたら逃げたで、今度はエルフの方へ向かうだけじゃんん!あーもうどうすりゃいいんだ!
ボンッ
そんな事を俺が必死に考えていると、再び魔法が破裂する音がモンスターの背後から聞こえてきた。あのエルフが、2発目3発目の魔法をモンスターに撃ち込んだみたいだ。。
あ!やばい!モンスターがあの子の方へまた向かいだした!
「くそがっ!」
俺に背中を向けたモンスターに向かって、再び背後から斬りつけた。全然斬れてないけどね!でもまあ、彼女に向かっていた足を、再び俺の方へ向ける事には成功した。こいつ体がでかいんで、機敏に体を反転させたりとかは苦手みたいだ。
あれ?ちょっとまてよ?さっきからこのモンスター、打撃や爆発を与えたヤツの方へ注意が向いてないか?いやそうだよ!絶対間違いないよ!
俺はその考えが正しいかどうかを確かめるために、十分な距離を取りながら、彼女が魔法を放ってくれるのを待った。
ボンッ
再びモンスターの背中に魔法が炸裂する。相変わらずあまりダメージは与えてはいないようだったが、俺へ向いていた注意は、今度はエルフの子へと注がれている。
「やっぱりそうか!」
思わず叫んじゃったぜ。たぶん、あのモンスターは、あまり高い知能を持ち合わせてはいないのだろう。自分に攻撃してきた相手、又は方向へ向かう習性みたいなものがあるようだ。これを利用すれば・・・。
「おい!聞こえてるか!?」
俺はエルフの女の子に向かって叫んでいた。現状を打破する為には、協力が必要不可欠だからだ。
「は、はい!聞こえてます!」
「あのね?実はこのモンスターさっきからさ、自分に攻撃を加えた奴に向かって行ってると思わない?!」
「そ、そういえば!私が魔法を使ったらこっちに向かって・・・」
「だろ?だからさ、こいつのその習性を利用して、街の方へ移動しようと思う!」
「なるほど!あ、でも、私、街の方向が・・・」
「こっち!」
俺がそう言うと、エルフの女の子は、俺と同じ進行方向へ走り、そこからモンスターへ向かって魔法をぶっ放した。この3日間、G級ハンターとしてこの森を把握し続けといてよかったぜ!おかげで、森のなかでの方向もばっちりだ。
ボフッ
俺が指定した方向からエルフの魔法が炸裂する。そしてモンスターは、俺の反対側の方向にいるエルフの子へ向かって反転し歩き出した。
Yes!俺Yes!冴えてるな今日の俺!
俺たちの
しかしこのエルフも手際が良いなあ。若いのに大したもんだよ。って、俺もこの世界じゃ15だったっけ?中身は40のオヤジだけどな。それはともかく、この調子で街付近まで誘導だ。
********************
モンスターに変化が現れたのはしばらく経ってからだった。俺の攻撃に全く反応しなくなったんだ。何度攻撃を加えても、エルフの女の子へ向かって歩き続けている。
「くそっ!どうなってるんだこいつ!」
もしかしたら、本能的に彼女の魔法の威力の方が強いことを察知して、とりあえずエルフの方から倒すことにしたとか?
いや、それはわからん。わからんけど、とにかく俺の攻撃では、最早注意を引き付けることも出来なくなったのは確かだ。
見ると、エルフの女の子は相当息があがっている。
そりゃそうだろう、さっきから低レベルとはいえ、何十回と魔法を連発しているんだ。あの体つきでは、体力は多い方ではないはず。しかもレベル1ちょっとだよ。あれだけ魔法を連発出来るのが不思議なくらいだ。
そしてそうこう言ってる内に、エルフの女の子がついに追い詰められてしまったなんでだよ!さっきから攻撃してるのは俺なのに、なんでこっち向かないんだよ!
そしてモンスターはエルフの女の子へ向かってこん棒を振り上げる。
「ちっくしょおおおおおおおお!」
俺は最後の力を振り絞ってモンスターへ向かって走っていった。
日本にはこういう言葉があるんだよ!
「斬ってダメなら刺してみろ!ってなあああ!」
それを言うなら「押してダメなら引いてみろ」だろうが!俺は一人ノリツッコミを入れながら、剣をモンスターに深々と突き刺した。
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