第28話

「ん?なんだこれ」


 メラドーラ討伐後、俺はいつものようにミッション報酬を選択すると1つの腕輪が現れた。

 【鑑定】をかけてみると__


◇◇◇◇◇◇

名称:水聖の指輪ウンディーネリング【ランク:SS】

効果:水系統攻撃の威力30%UP

  水系統耐性30%UP

  水系統攻撃の消費MP50%CUT


◇◇◇◇◇◇


 …多分これもチートとか呼ばれるんだろうな。

 自分自身の運のよさに喜んで良いのかわからずに深いため息を吐いていると、アンリがこちらに走ってやってくる。

 俺は【水聖の指輪】をアイテムボックスにしまう。


「シュウ君!早く潜りましょう!凄いものを見つけました!」

「おい、引っ張るなって!」


 アンリに引っ張られ水中を眺めてみればそこにはタコを討伐した際に発生した光の粒子がゆらゆらと揺れながら水面から少しずつ立ち上っていくというとても幻想的な光景があった。

 アンリは俺の顔を覗き込むとニッと笑う。


「綺麗じゃないですか?」

「確かに綺麗だな」


 俺はこっそり笑顔のアンリと光の粒子を写真に収める。うん、いい思い出になりそうだ。

 光の粒子が消えた後メラドーラの巣らしき洞穴に入ったのだが結局見つかったのは妙な装飾が施された謎のツボらしき物だけだった。何に使うんだこれ。


  ☆


 メラドーラを討伐した俺たちが2界層の主要都市【エルト】に帰り着くとモノリスの前で3人のザ・戦士といった風貌のゴツい男と1人の銀色の装備で統一した魔法使いの美少女が喧嘩をしていた。

 野次馬根性丸出しで近寄ってみると会話が聞こえてきた。


「私も働いた、報酬が少ない」

「ああん?魔法使いなんて後ろでチマチマやってるだけだろーが!」

「俺たちが盾になってやんねーと何もできねーくせによ!」

「違えねえ!」


 そう言ってギャハハと笑う男たちを見て魔法使いの女は悔しそうに睨む。

 そんな男たちを見てアンリが大声で叫ぶ。


「シュウ君見てください!脳筋がなんかほざいてやがりますよ!」


 空気が凍る。

 魔法使いの女はポカーンとした表情を浮かべていた。

 そんな中でもアンリの口は止まらない。


「あんな装備で盾になられても不安すぎて魔法に集中できませんよね!」

「ちょ!アンリやめてやれ!」


 確かに男たちの装備は全体的に貧相でこの界層に来るのは早いんじゃないか、と言いたくなるような装備だった。

 アンリにバカにされた男たちは顔を真っ赤にしながら肩をいきらせてこちらに歩いてくる。うわー、面倒事の臭いがプンプンと…


「おい!お前どういうつもりだ!」

「どうもこうも思ったこと言っただけですけど」

「大体お前は関係ないだろ!」

「近寄らないでください、汗臭いです」

「て、テメェ!」


 赤い顔をさらに真っ赤にしながら怒り狂う男をプークスクスとバカにするアンリ。

 いや、でもね?1つ言いたいんだよ。


「アンリよ、俺の後ろに隠れながらそういうことを言うんじゃない」

「いやいや、魔法使いは後ろでチマチマしないといけないですから!」


 そう言ってアンリは男を見ながらニヤニヤと笑う。

 そんなアンリを見て男は剣を抜いて叫ぶ。


「上等だゴラァ!女だと思って大人しくしてりゃいい気になりやがって!ぶち殺してやる!」

「うわー、怖ーい。さ、シュウ君ちゃちゃっとやっちゃってください!」

「俺任せかよ!?」


 まさかの俺任せだった。喧嘩ふっかけたのはアンリなんだから自分でなんとかして欲しかった。


「ああん?なんだお前邪魔するならお前もぶち殺すぞゴラァ!」

「いやいや、待て落ち着けって。取り敢えず装備整えて出直せって」


 俺がなだめようとすると男は俺に剣を振り下ろす。

 振り下ろされた剣をバックステップで避けると男は怒りの表情で叫ぶ。その際アンリの顔に俺の肘が当たった様だが、天罰だと思って受け入れて欲しい。


「テメェ…!舐めてんのか!ああん!?」

「え?なにが?」


 なにを舐めてると言うのだろうか。俺は親切心でアドバイスしただけなのに。

 そんな俺の態度が頭にきたのか男が突っ込んで来る。

 仕方がないので戦うことにする。まずは壁を出して避けた所を魔法でトドメを刺すか…

 頭の中に戦闘方法を浮かべると俺はそれを実行する。

 グシャッ


「え?」


 何故か男は俺が出した壁に反応することなく激突しそのまま地面に倒れ伏す。ええ…これはどうしたらいいんだ?

 あまりにも呆気ない終了に戸惑っていると遠くからバタバタと人が走ってくる音が聞こえてくる。


「やばいですよ!多分衛兵です!逃げましょう!」

「あ、ああ。でも逃げるってどこに…」


 俺たちが慌てて逃げようとすると銀色の魔法使いが俺の服を引っ張る。


「こっち、ついてきて」

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