好調時について

・好調なとき

スランプとは逆に、好調なときってのは大抵一過性で終わることが多いんだけど、それでも「んー、なんか今日は調子がいいな」ってのが続くときがある。

肉体的な疲労があまり溜まってなくて、精神的に安定してるときが調子良いのかな。

「明日までにレポート書かなきゃ! でも考えたくないから弓引こ」みたいなときは、あんまり調子出ない。

他にも要因がありそうだけど、それがわかれば苦労しないよね。

とにかく、好調なときってのは、身体のすみずみまで意識を配ることができて、自分の思う通りに引くことができる。

たまーに、そういう時間があるんだけど、試合の日じゃなくて、なにげない練習中のことがほとんどなのが残念。


・「ゾーン」について

いろんな漫画や小説で、極限まで集中力が高まった状態の描写があるよね。『ピンポン』の真っ白な世界とか、『黒子のバスケ』で眼が光ったりとか。

あれって、現実のスポーツ選手のインタビューなんかでも本当に言われてるんよ。通称「ゾーン」。もちろん眼は光らないけど。

これね、実は一度だけ経験したことがある。ほんとだよ!

あれは三年生の頃だったかな。

なんかね、いつものように引いてたら、突然水の中にいるみたいな感じになったんよ。

周りの音がぜんぶ聴き取れる。

どこの的で中ったかとか、誰がどこで引いてるかとか、自然に把握できる。

でも、気が散ってるわけじゃなくて、中心にはしっかり自分がいる。

もちろん身体のすみずみまで意識ができて、思う通りに引くことができる。

的も大きくハッキリ見える。

いつもより弓が軽く感じて、外す気がしない。

不思議な感覚だった。で、実際にめちゃめちゃ中るんよ。

それはちょうど試合の日で、選手を決める直前の練習中だった。だから、このまま行けば確実に選手に選ばれるし、かなり良い成績を出せる。いや、今なら二十射皆中かいちゅうだってできる!

そんな雑念が入っちゃったからなのかな。

昼飯食べたら、いつもの状態に戻っちゃった。

むしろいつもより調子が落ちてしまった。


その日はずっとベンチウォーマー(弓道の場合は、タタミウォーマーか)だった。悔しい。


精神と肉体って、切り離せるもんじゃないんだなーって思ったよ。

あのあと、集中する方法を試したり、水の中をイメージしたり、色々やってみたけど、あんな状態にはなれなかった。

不思議。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る