スランプについて

・スランプ

どんなスポーツにでも「スランプ」はあるよね。弓道でも、もちろんある。

精神面の影響が強いからか、他のスポーツや武道に比べても調子の浮き沈みが激しいように思う。

連続でバンバンてられるときもあれば、ぜんぜんあたらなくてイライラすることもある。

自分じゃ気付かないくらいの些細な感覚の違いで、調子が良くなったり悪くなったりする。

がむしゃらに練習すれば上手くなる、ってわけじゃないところが、難しいよねぇ。


早気はやけ

弓道家の二人に一人は経験しているであろう(個人の感想です)超メジャーなスランプ。

簡単に言うと、「かい」を保てなくなる病気みたいなもの。

弓を「引分ひきわけ」ながら矢を下ろしてくるでしょ?

もうね、我慢できなくて、矢を途中で離しちゃうの。

筋肉が足りないだけなら話は早いけど、そういうわけじゃない。

精神的な要因が大きいって言われてる。

でね、これのタチの悪いのがさ、最初の頃はかいが無くてもあたるんよ。だから調子に乗ってどんどん引いちゃう。で、どんどんかいが短くなる。

気付いたときには、もう手遅れ。かいを保てなくなってる。狙えない。あたらない。

……一種のホラーですわ。


遅気もたれ

これは早気はやけと逆で、離そうと思っても離せない症状のこと。ただ、早気はやけよりは病状からの回復は早い人が多かった。

早気はやけと違って、的中率が下がることが多いみたいだから、治そうとする意識が強くなるのかもしれない。

こっちには僕はかかったことがないので完全に伝聞。

早気はやけもツラいけど、こっちもツラいらしい。


・ビクン(正式名称不明)

遅気もたれの人が無理やり離そうとすると、「離れ」をしたつもりでもかけから弦が離れなくて、右腕ごと「ビクン」って戻っちゃう。

遅気もたれじゃないでも、勝手かってに力が入ってたりすると、こうなることがたまにある。

これは僕も何度か経験ある。

「ビクン」ってしたあと、もう一回「かい」まで持っていかなきゃいけないんだけど、筋力的にかなりツラい。腕がプルプルする。

試合でそんな状況になると、周りから「がんばれ!」って声をかけられる。

本人からすれば「十分がんばってるよ!」って思う。

これでてると、根性あるな、って妙に褒められる。


・踊り

これは正確にはスランプじゃないけど、クセになってしまう悪い引き方という意味でここに書くよ。

「踊り」といっても、いきなりダンスするわけじゃない。

いや、ダンスなのか、あれは。

弓を引いている途中で、押手おしての肩が上手くハマらなくて、「あ、このまま離したら中らない」って自分でわかるときがあるのよ。

そんなとき、「離れ」の瞬間に押手おしてを身体ごとまとに押し込もうとする。で、「離れ」のあと勢い余ってそのまま的の方向に歩いちゃうわけ。

これが外から見ると踊ってるように見えて「踊り」って言われてる。「残心」のカケラも無いねぇ。

これもさ、タチの悪いことに「的中にこだわった結果だ!」みたいに正当化できちゃうわけよ。だから、先輩のそういう姿を見た後輩も、そういう引き方を覚えてしまう。

射型を取るか、的中を取るか。学生弓道のジレンマですな。


僕?

一度だけ踊ってみたことがあるよ。

けど、という、あまりにも恥ずかしいことをやってからは、一度も踊ってない。

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