【試合】

的中の決まりについて

・的中のルール

最初に説明した通り、弓道には「あたり」か「はずれ」しか無い。○か✕か。

的の枠にあたった場合、矢の外側に繊維一本でも繋がっていれば○。

矢が見えているようだと✕。

枠に「ガツン」したとき、衝撃で的が傾くこともある。傾いて、矢の一部が地面に触れたら✕。的ごとあづちから外れて落ちても、矢の一部が地面に触れてなければ○。細かいねぇ。

試合の雑用は主に下級生の仕事なので、この辺りのルールは最初に叩き込まれる。

(なお、主審など大事な役割は選手から外れた上級生がする。)


・的中の合図

弓道場の近くで、妙な鳴き声を聞いたことがある人もいるだろう。

試合で自分のチームが引いているとき、的場の横の看的小屋かんてきごやという所に二人の部員(主に下級生)が入っている。

そのうちの一人が、選手の矢が的に中ったら「あたーーーーーーりーーー」って叫ぶ。(これを「鳴き」という。)

もう一人は新品の的を一つ持ち、中ったら的の表面を、外れたら裏面をさっと出す。(これを「的出まとだし」という。)

「鳴き」と「的出し」で、審判は中りか外れかを判断して記録帳にハンコを押す。


・鳴きの種類

この「あたーりーーー」の言い方が学校によって特色があって、ウチの部活は「あたーーーーーーりーーー」って感じだった。うーむ。文字だとよくわからんな。

とにかく、10秒くらい同じ高さで鳴かないといけない。声が尻すぼみになるのはみっともないと思われている。「り」よりも「た」が長い。最初はとても恥ずかしいけど、意外とすぐ慣れる。

声が大きく、しっかり長さも保てる下級生はかわいがられる。


・鳴き泣かせ その壱

たまに的枠に「ガツン」って中たるときがある。この場合、○か✕かわからないので、とりあえず鳴いておく。

みんなが四本ずつ引き終わったあとに確認をして、間違えていた場合は訂正するんだけど、

なので一年生は「怪しくば鳴け!」と叩き込まれる。


・鳴き泣かせ その弐

団体戦の場合、選手は順番に引かないといけない。前の選手を追い越した場合、追い越された選手の矢は✕になる。

なので、選手はきっちり時間に余裕を持たせて引くものだけど、たまにせっかちな選手は前の選手が引いてる途中で引き始めて、矢が連続で飛んでくることもある。

もし二人続けて当たったとき、鳴きは「あたーりー、あたーーーーーーりーーー」と続けて鳴かないといけない。これは精神的にも呼吸的にもかなりツラい。

なので、せっかちな選手は下級生からヘイトを集める。

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