矢について

甲矢はや乙矢おとや

矢には甲矢はや乙矢おとやの二種類がある。

矢羽やばね(羽の部分)が反時計回りになっているのが甲矢で、逆になってるのが乙矢。

試合では二本か四本のセットで引くけど、甲矢・乙矢・甲矢・乙矢の順番で引く。練習のときも人によっては気にして順番に引く。僕は気にしなかった。


・矢を買おう

買うときは6本セットで。仮入部から本入部になったあたりで弓具係の先輩に連れられて買いに行く。

シャフト部分はジュラルミン製が一般的。竹の矢もあるけど、学生には値段的に厳しい。

羽の部分は本物の鳥の羽。七面鳥の羽が安いので、だいたいの学生はそれ。

羽がボロボロになったら矢の寿命だけど、ある部員が自分で修理しようと頑張ってたのを今でも覚えてる。

要するに鳥の羽をくっつければいいのだ、と道場に落ちていたカラスの羽を矢にボンドで付けてた。

みんな、ドン引きしてた。

……僕は内心、ちょっと良いなと思ってた。


・矢の補修

矢羽は糸で巻き付けていて、その上で透明なコーティングがされて固定されてる。

使ってると、ここのコーティングが剥げてくるので、透明のマニキュアで補修する。なので、男子部員でもほぼ全員がマニキュアを持ってる。知らない人が見ると気持ち悪いね。


・矢の個性

①シャフトの色

②矢羽の色

③糸の色

この3つの組み合わせで自分の矢を見分ける。

色を好きに組み合わせるオーダーメイドも可能。

オーダーメイドだと、巻いた糸の部分にさらに別の色の線を入れられる。

甲矢なら線を一本、乙矢なら線を二本入れると、すぐに見分けられて超便利。これは部内で大流行した。

僕の矢はどんなのかって? ふふ。


シャフトは漆黒。

羽も黒く。

糸も黒い。

糸に入る線だけが赤い。

(京極夏彦風)


……うん、わかってる。何も言うな。

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