第9話やり過ぎました?
本当どうしましょうね?この方達。
あっ!皆さんこんにちわセレスです。今、私は人気のない路地裏で愚かにも魔王の娘である私を襲おうとした無頼漢の二人を拘束中です。しかも喚き散らさない様に黙らせています。
「はぁひゃひひゃはれぇ!!」
(放しやがれ!!)
「ほひょっ!くひょはぁまっ!!」
(このっ!糞アマっ!!)
この二人が何を言っているのか全然聞き取れないですけど、私の悪口を言っているのは確かです。
「ふぅ。」
私は小さく溜め息は吐いた。この無頼漢の二人をこの世の理から消すのは意図も容易いのだけれど、人族の街に来た早々いきなり問題を起こすのも不味いです。私は少しの間、どうするべきか思案しました。
私が無頼漢二人の処遇について頭を悩ませている間、外野の二人はぎゃあぎゃあと騒いでいます。此処まで来ると人では無くただの獣以下ですね・・・・・・。獣以下・・・?
「そうだっ!その手がありましたっ!」
私はハッと閃き両の掌をパンッと鳴らしました。良い事を閃きました。この無頼漢二人には私との間、私という存在の記憶を忘れて貰いましょう。セレスグッドアイデアです!
そうと決まれば早速・・・けれど、今から使うこの魔法は通常の魔法とは違い精神に直接干渉する魔法なので、それなりに魔力と集中力と繊細さが求められます。
私は眼を閉じ精神を集中させていきます。結構な高魔力の影響で私の周りの空気がこうピリッとした感じになっています。正確には空気が震える感じですね。
私の様子を見て無頼漢二人はこれから自分達の身に何かが起こると漸く悟ったのか、ガタガタを震え始め何とかその場から立ち去ろうともがき始めました。今更もう遅いんですけどね。
全身に張り巡らせた高魔力を少しずつ両手に集束させていきます。すると私の両手の周りには今にもパチパチと弾けそうな程、高出力の魔力がその手に集まりました。
「良し。出来ました。では、やりますか!」
私は高出力の魔力を維持した状態で無頼漢二人に近付いて行きます。
「くっ!くるひゃーっ!あっひひへぇー!」
(くっ!来るなーっ!あっち行けぇー!)
「はっ、はひょふっ!ひゃひゅへへくへぇ!」
(たっ、頼むっ!助けてくれ!)
無頼漢二人は何やら私に助けを請うている様ですが、残念です。私には流石に獣の言葉を理解をする事が出来ません。けれど、ここは1つ何かで読んだ『もしも!人族と会話する事があったら?』シリーズの不安を取り除く為のHow-to本に書いてあった、にっこりと微笑んで安心出来る言葉を掛けてあげるのが良いでしょうと書いてあったので私は微笑んで声を掛けてあげる事にしました。
「大丈夫。痛くはありません。直ぐに楽になりますから安心して下さい。」
「「ヒイィィィィッ!!!」」
あれ?おかしいですね?本にはこれで安心すると書いてあったのですが?何故か無頼漢の二人はみるみる内に顔色が悪くなっていくのですが。何か間違いましたかね?それとも読んだ本が間違っているのでしょうか?
まぁこの際、気にしても仕方ないので。では早速。私は無頼漢二人の額にそれぞれ手を当てて唱えます。
「忘却」
すると無頼漢二人の額に当てられた高出力の魔力は眩い光を放ちながら無頼漢二人の頭を包み込む様にスーッと頭の中に光が入っていきました。
「ふぅ。これで良しと。」
私は指をパチリと鳴らし二人に掛けた魔法を解きます。
記憶を消す魔法を掛けられた無頼漢二人はというと・・・あれ?少し様子が変ですね?二人共目の焦点は何処と無く合っていない様な・・・それに二人共、口をパクパクとさせながら涎を垂らしてボーッと立ったままです。
「あれっ?やり過ぎちゃった?」
もう1度説明しますね。記憶を消す魔法は対象の精神に直接干渉する魔法なので、それなりの魔力と集中力、そして【繊細さ】が求められる魔法なのです。
えっ?私ですか?ちょっと自分で自分の事を辱しめる事は言いたくは無いのですが、そうですね・・・ちょっぴりとだけ器用では無いですね・・・ええ。ほ、本当ですよっ!?ほんのちょっぴりとだけ器用では無いだけですからね。断じて不器用ではありませんからね!
それはそうと無頼漢の二人は私という存在と私に関する一切の記憶だけで無く、個人、又は人族である記憶すらも忘れてしまったみたいですね。
あぁ~やり過ぎちゃいましたね。まっ!これはこれで良しとしましょうか。何せ死んではいませんしね。人族としては死んではいるでしょうが。。。
うん。私は悪くない。悪くない。そう自分に言い聞かせながら私はその場を逃げる様に後にしました。
これは後で聞いた話なのですが、その後無頼漢の二人はこの街の教会?とやらに無事に保護された様です。めでたしめでたしですね。
私はその後、街の探索という名の観光を楽しみましたよ?
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