第7話特別緊急クエストだそうですよ?
掲示板には依頼の大小関係なく様々な依頼が貼り出されています。
えっと・・・何々・・・。
「飼い犬が逃げ出しました。どなたか捜してくれませんか?」
「旦那がぎっくり腰の為、庭の草むしりをお願いします。」
「彼氏が浮気しているかもしれません。浮気の有無を確認してくれませんか?」
「はぁ・・・はぁ・・・あの子の身につけている物を何か取って来てくれ。」
はい?何なんですか?この依頼の数々は。私が思っていた冒険者という者の予想を遥か斜め上を行った感じですね。寧ろこれは雑用ではないのですか?それにこれ、最後の依頼は何ですか?幾ら私でも少し寒気を感じる内容ですよ。
そんな中にも1つだけ何枚もの依頼書がそれを隠すかの様に重ねられ刷りきれた感じの依頼書が私の目に止まりました。
これだけ重ねられたら余計目立つと思いますが、まぁ気にしてはいけませんね。
これは・・・えぇっと・・・砦の救援とありますね。
「現在モンスターの群れに襲われている。至急応援を!!!場所はマール砦。」
マール砦?はて?マール砦とは一体どの辺りなんでしょうか?
私が今いる所が人族領の最前線にある街ですからマール砦という所は此処とは離れた所にあるのでしょうか?
それにモンスターの群れとは一体?
これだと詳細が書かれていないので判断のしようがないですね。
モンスターの種類に数、それに砦の規模に被害状況その他諸々。説明書きがザックリし過ぎですね。
けれどおかしいですね。最近お父さん、魔王の話だと人族とは今は停戦中の筈ですが?
大規模な戦闘行為はなく、極々小規模な戦闘が突発的に起きたという事でしょうか?
取り敢えずエリスさんに事の内容を確認してみましょうか。
「あのぅ、エリスさん、ちょっと良いですか?」
「何ですか?セレスさん。何か分からない所でもありました?」
「えぇ。これなんですが・・・。」
私は先程のマール砦救援の依頼書を手に取りエリスさんに手渡しました。
「これって・・・。セレスさん!これ本当に受けるんですか!?」
「えっ?何か不都合でもあるんですか?」
「すみません。セレスさんにはまだ説明が無かったですね。これは特別緊急クエストと言って他のクエストの依頼書と違ってこれは赤い羊紙でしょ?うちらの間では通称赤紙って言うんですけど、これは冒険者のランクに関わらず受ける事が可能なんですけど、赤紙は大抵冒険者ランクが少なくてもB以上ないと厳しいんですけど・・・。」
「成る程・・・そうなんですね。わかりました。じゃあこれでお願いします。」
「はっ!?えっ!?セレスさんウチの話聞いてました?これは最低でもB以上ないと命の保証が出来ないんですよ!?」
「はい。勿論聞いてましたよ?まぁ大丈夫じゃないかと。(私、魔王の娘だし。そこいらのモンスターには負けないですから。)私の他にも冒険者の方々もいらっしゃると思いますし、邪魔にならない程度に頑張ろうかなと。」
「はぁ・・・。(この人本当に大丈夫?)セレスさん!冒険者には一応身の丈に合ったクエストがありますし、それに!生きて帰って来る事も冒険者にとって大事な事の1つなんですからね!わかります?」
「そうなんですね。わかりました。生きて帰って来ますね。」
「セレスさんウチの話ちゃんと分かってます?」
「ムッ!失礼ですね。エリスさん。ちゃんと分かってますよ。砦に行って無事に帰って来る簡単なお仕事ですよね?大丈夫です!任せて下さい。砦の人達を守れば良いんですよね?(後の方々は知りませんが。)」
「いや、ウチの言いたい事はそうではなくて・・・セレスさんは実力がある人だとは聞いてますけど、冒険者としては新人なので、イキナリ危ないクエストはしない方が良いと言ってるんですけど・・・。」
「でも、ここにこれがあるって事は砦の方々は助けを求めて依頼を出しているんですよね?それに、まだ誰も受けてはいないって事ですよね?助けを求めている方々がいるのでしたら放っておくわけにはいかないですよ?(人族の砦の造りも確認しておきたいですし。今後の参考に。)」
「それは・・・ウチらだって助けに行きたいんですけど・・・ウチらのギルドは弱小で・・・。」
あら?私また何か余計な事を言ってしまいましたか?エリスさんがドンドン小さくなってしまいました。困りましたね。こんな時にかける言葉が見つかりません。
「と、兎に角私はこの赤紙を受けますね。大丈夫です!無事に戻って来ますから。エリスさんはゆっくりお茶でもして待ってて下さい。」
「ううぅぅ~約束ですよ?セレスさんまで何かあって死んだりしたら手続きが色々あってウチが大変なんですからね!」
あっ!そっちですか・・・。エリスさん・・・本音が口からもれてますよ?
「じゃ、じゃあ早速行って来ますね。」
「はい。お気を付けて。冒険者に幸あらんことを。」
「はい!・・・所でこのマール砦って場所は何処に行けばあるんですか?」
「えっ!?セレスさんっ!場所も分からず行く気だったんですか?」
だって仕方ないじゃないですか。私は魔王の娘で家出中なんですから。そんなジト目で私を見ないで下さい!
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