第6話早速やらかしました。

はぁ・・・。結局半ば強引にギルド【月光花】に入ってしまったセレスです。

私の目の前にいる壮年の人族の男性はどうやらこのギルドの長、ギルドマスターのゴードンさんと言うみたいです。それにしても顔は厳ついです。

ギルドマスターであるゴードンさんの話によればここ【月光花】では私、ゴードンさんを含めメンバーは受付事務も入れて全部で10人程しかいないみたいです。あっ、一人キースさんと言う方がこの前亡くなったので9人ですね。

うん。少ないですね。

弱小にも程があります。

弱小ではなく最弱ですね。

やはり入る所を間違ってしまったようです。


しかし、半ば強引とはいえ最弱ギルドに入ったからにはここを上へと押し上げなければ、私の・・・いいえ!魔族の魔王の娘である私のプライド許さないですね。


それには先ず何をすれば良いのでしょうか?

手っ取り早く高難度の依頼をこなせば良いのですかね?


「あの、これから私は何をすれば?」


「おぉ!そうだったね。ここから先の説明は事務担当の子にしてもらおうか。えぇ~っとおーい!エリス~!ちょっとこっち来てくれ~!」


厳つい顔のゴードンさんは声も大きいですね。


「うるせー!糞親父!いちいちウチを呼びつけるんじゃねー!」


???


一体どういう事でしょう?

私の聞き間違いでしょうか?

何やらとても品性の欠片も無い粗暴な言葉づかいが私の耳に入ってきましたが。


少しすると私達がいる部屋に私よりも年は小さい感じでしょうか。亜麻色の髪が肩の辺りまで伸び少しウェーブがかった感じの二重瞼のとても可愛らしい人族の女の子が現れました。


「ウチはこう見えて忙しいんだ!用件なら早く言え!この糞親父。」


前言撤回します。全然可愛らしくないです。


「すまんね。セレスさん、この子は幼い頃、早くに母親を亡くしちまって男手1つで育てたもんだから誰に似たのかこんな言い方しか出来なくなっちまって。まぁ根はとても優しくて素直で良い子だから。」


そう言いながらゴードンさんはエリスという子の頭をワシワシと撫でています。


「だぁー!止めろー!髪が崩れるだろ!この糞親父!」


「ガハハハッ!どの口が言うんだ~?全くお前という子は~。」


「分かった!分かったからもう止めて~。」


エリスがゴードンさんのワシワシに先に根をあげると漸くゴードンさんの手も止まりました。


「はぁ・・・はぁ・・・はぁ・・・。それで?ウチに用って何さ?ウチ、これでも忙しいんだけど?」


エリスはワシワシされた髪を手櫛で整えながらブスっとした表情でゴードンさんに用件を聞いています。


「あぁ。そうだった。そうだった。エリス、紹介しよう。今日からウチのギルドに入ったセレスさんだ。セレスさんは初心者だからエリス、色々と教えてやってくれ。」


「初めまして。ご紹介に預かりましたセレスティアと言います。セレスと呼んで頂いて結構ですのでどうぞ宜しくお願い致します。エリスさん。」


「えぇ~何でウチがぁ?」


「まぁそう言うな。年も近いみたいだし、色々教えてやってくれ。それにセレスさんは初心者と言っても冒険者が初心者なだけで、ウチのギルドの即戦力になる逸材だから仲良くしておいて損は無いと思うぞ。」


「親父がそう言うなら・・・万年ランキング最下位の赤字経営から抜け出せるなら良いけどさ・・・。セレスさんだっけ?そんな訳だからこれから宜しく!ウチはこの厳つい顔のオッサンの娘のエリス。一応このギルドの事務員兼受付嬢もしてるんだ。」


「はい。此方こそ宜しくお願いします。エリスさん。」


「それじゃあセレスさん、早速依頼の説明とかしよっか。こっちに来て。」


エリスさんはそう言うと私の手を取り応接室を出て下の階へと降りて行きました。

この積極性と言いますか、やや強引さのある所なんかは父親であるゴードンさん譲りな気がしますね。

あの親にしてこの子あり。ですね。


階段を降りて行くと右手に受付カウンターがあります。受付カウンターから真正面に向かうと出入り口があります。


それにしても何とも殺風景な感じですね。

人がいないというのもありますが、今にも潰れそうな寂れた感じがひしひしと伝わりますね。


「昔はもう少しこのギルドも活気があったんだけどね・・・。」


エリスさんは、私の心の声を読み取ったのでしょうか?ボソッと呟きます。私、そんなに顔に出てましたか?


シンと私達の周りの空気だけが重く、静まりかえっています。

私、早速やらかしてしまいましたか?

重苦しく息が詰まりそうです。

早く新鮮な空気を吸わなければ。

ここは、空気を呼んで話題を変えなければ。

セレスはやれば出来る子です。


「そ、そういえばあのボードに色々と紙が貼ってあるみたいですけど・・・あれは何ですか?」


「えっ?あぁ、あれは依頼人がギルドに対して依頼の申請をしているボードなの。ギルドに所属している冒険者達はボードに貼り出されている依頼の内容を自分で確認して、どの依頼を受けるかを判断して依頼の受注をするの。ごめんね。セレスさんに暗くなる事言って。これから皆で頑張って良いギルドにしていけば良いよね。」


「へぇ。そうなんですね。何か色々あって面白そうですね。」


私はボードに貼り出されている依頼書を1枚ずつ眺めていると1つだけ気になる依頼書を見つけました。


この1枚の依頼書によって今後の私の行く末が決まるとは・・・。露にも思いもよりませんでした。


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