第5話冒険者ギルドに入りました。(半強制的ですけど)

私は今、冒険者ギルドと呼ばれている施設の応接室のソファーに腰掛けています。一体何故こうなってしまったのでしょうか?


無事に人族の街に入る事が出来た迄は良かったんですが、何故か助けた人族の冒険者の方々に両脇を抑えられ笑顔で連れていかれまして今、こうしてソファーに座っています。


それにしても・・・連れて来られたギルドという施設はその・・・なんともまぁ・・・良い意味で外観もそうですが内装も味わいがあると言いますか古めかしいと言いますか・・・ハッキリ言ってボロいです。良く似た建物でそうですね・・・ゴーストやリッチ達の住み処に良く似ていますね。それ位のボロさです。


そんなゴースト達の住み処の様な建物の一室でソファーに腰掛けて待っているとコンコンと扉をノックし、一人の壮年の人族の男性が入って来ました。


「君がウィリアム達を助けてくれたという・・・セレスさん・・・だったかな?」


「はい。セレスティアと言います。」


「そうか・・・。この度はあいつらの命を救ってくれてギルドを代表して感謝する。本当にありがとう!」


そう言うと壮年の人族の男性は深々と私に頭を下げています。

魔族の、魔王の娘である私にギルドの代表とやらが頭を下げてるなんて、やや滑稽な感じもしますが感謝をされると悪い気はしないですね。


「処でセレスさん、ウィリアム達の話だと君は冒険者になりたいと聞いたのだが。」


「えっ?えぇ・・・まぁ・・・。(冒険者になりたいって言ったかな?)興味があると言いますか・・・その・・・。」


「そうか!ならば話が早い!是非セレスさん君に我がギルド【月光花】に入って貰えないだろうか?」


「えっ?(月光花って何でそんな顔に似合わない様な名前をつけたのですか?と声を大にして言いたいです。)」


壮年の人族の男性は厳つい顔を近付けてお願いしながら圧をかけて来ます。近い、近いです。人族でありながらこれ程までに私に圧をかけて来るなんて。侮れませんね。


「良し!善は急げと言う事だし、早速セレスさんの冒険者登録を済ませるとしよう!他のギルドの奴等に渡す訳にはいかんからな。」


「あの・・・私はまだ入るとは・・・。」


もしもーし聞いてますかー?ダメですね。


全く私の声が耳に入っていないようです。

何やらそそくさと私を冒険者にする為の準備をしている様です。


壮年の男性は何かを棚の引き出しから取りだし私へと手渡した。


「あの・・・これは?」


「あぁ、これはギルドカードと呼ばれる物で錬金術で作られた特殊なカードなんだよ。このカードはそのまま身分証の役割も兼ねており、本人以外は使う事が出来ず偽造も出来ない様になっているんだ。それと、各ギルド毎にカードの色彩とかは違うからどのギルド所属かも一目で分かる様になっているんだよ。なっ?便利だろう?」


「はぁ・・・。」


人族は錬金術なる物を使いこの様な物まで作り出しているのですか。益々人族には警戒が必要かもしれませんね。

薄くて硬いですね。このカードとやらは。

それにこの紋様はここのギルドのマークですかね。月光花の花の紋様ですね。

本当厳つい顔のこの壮年の男性には些か似合わないギルドのシンボルマークですね。


「うちみたいな弱小ギルドにセレスさんが入ってくれれば、うちのギルドの株も急上昇で加入者も増えて一躍人気ギルドの仲間入りだよ!ガハハハハ~ッ!」


「あの・・・私がギルドに入るのと人気になるのとどう関係があるのですか?」


「ん?あぁ、そうだったね、まだその辺りの説明がまだだったね。ギルドにも人気ランキングという物が存在してね。依頼実績によってランキングの順位が変動する仕組みになっているんだ。つまり、各ギルドに所属する冒険者達が高難易度の依頼をこなせばこなすほど実績を積めば積むほどギルドのランキングも上がるって事さ。ただし!ただ単純に高難易度の依頼をこなせば良いってもんでもないんだ。依頼には高難易度の依頼もあれば小さい依頼もあるからな。それらもまんべんなくこなしていかないとダメなんだよ。とは言っても、うちみたいな弱小ギルドは冒険者の数も少なければ高難易度の依頼をこなせる凄腕もいないとくりゃあ後は小さい依頼しかないからなぁ~ってそんな時にセレスさん君がうちのギルドに来た訳だ。」


フム。成る程。そうなんですね。だったら別に私はここじゃなくても良い気がするんですが、まぁ何処に所属しても変わらないでしょうけどね。半ば強引にこのギルドに入る体になってますしね。


「分かりまし・・・。」


「それじゃあセレスさん、先ずはこのギルドカードにセレスさんの魔力を通して登録しようか。魔力にも個人差があるからギルドカードに直接魔力を通す事によって個人認証の役割にもなるんだ。」


私が答える前にこの壮年の人族の男性は言葉を被せていき、先程と同様に笑顔で圧をかけて来ます。押し売りにも程がありますね。


こうして私は半ば強引にギルド【月光花】に所属する羽目になりました。


人族とはなんて恐ろしいのでしょう。


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