第4話お金は無いけど、石は持ってます。

皆さんこんにちわ。私は今、人族の街の入口の詰所で何故か門番さんに悲しみと憐れみが同居した様な表情をされています。セレスです。


どうも魔族である私と人族の間で何か大きな誤解が生まれつつあるように思えています。

私は魔王城である家から出て、ここ人族の街に着いてから幾人かの人族の方々と話をする機会があり、話をしたのですが皆さん口々に私の事を可哀想な子だと勘違いしているみたいなのです。

今だってそうです。確かに私は人族の通貨を持ち合わせてなく多少困ってはいますが。何もそんな目で私を見なくても良いとは思うんですよね。

お陰で少し気分が悪いです。それはまぁこの際置いておいて所で私達魔族の通貨はこちらで使えたりするのでしょうか?

今は持ち合わせが少ししかないのですが、取り合えず出してみます。


「あの、銀貨2枚の代わりと言っては何ですがこちらは使えますか?」


私はそう言って小袋の中から小さい石を何個か取り出して机の上に置きました。すると、門番さんは急に驚いた表情をしています。


「こ、これは!?」


「えっ?これは紅玉ですが?」


「ルビーですか!?ちょっ、ちょっとお待ち下さいね!今、確認して来ますから!」


そう言って門番さんは慌ただしく詰所を出て行きました。ルビー・・・人族の世界では紅玉はルビーと言うのですね。また1つ勉強になりました。


門番さんが詰所から出てからほんの少しした後、門番さんは商人さんであるルイさんを連れて来ました。

どうやら私が出した紅玉が本物かどうか確認して欲しいそうです。

失礼ですね!月のお小遣いとして貰ってますから本物に決まってるじゃないですか。人族は疑り深いですね全く。


「ルイさん!ちょっとこれを見て下さい!先程セレスさんに身分証の発行に銀貨2枚をお願いしたのですが、セレスさんは銀貨2枚はおろか通貨すら知らない様でして、銀貨2枚の代わりとしてこちらを出されたのですが・・・何とルビーなんです!しかも何個も。大変申し訳無いのですが、ルイさんにはこちらのルビーが本物かどうか鑑定して貰えませんか?」


「え、ええ。それは構いませんが、所でセレスさん、こちらのルビーはどうされたんですか?」


「え?これは私のですが・・・?(お小遣いですよ?)」


「ええ。そうなのでしょうけど・・・こちらは何処で手に入れたのですか?」


「魔王城ですけど?(私の家ですが。)」


「そうですか・・・。ありがとうございます。とても参考になりました。これはとても高価な物でして、あまりおいそれとお出しにならない方が良いと思います。なので、今回は私どもを救って頂いたお礼も込めて身分証の銀貨2枚は私が出しましょう。」


「本当に良いんですか?」


「勿論ですとも。命を救って頂いた恩人ですからそれ位お安いご用です。」


「ありがとうございます。ルイさん。」


「と、いう訳でして私が立て替えますからそれで宜しいですか?」


ルイさんは門番さんにそう告げると懐から袋を取りだし銀貨2枚を出して門番さんへと手渡しした。


「確かに。では身分証を発行しますね。少々お待ち下さい。」


暫くして身分証を発行し、私に渡してくれました。


「これで手続きは完了です。ようこそ城塞都市オルグへ。」


「はい。ありがとうございます。」


私は手渡された身分証を手に、無事に街の中へと入る事が出来ました。危うく無理矢理にでも入って街を半壊させる所でしたよ。良かった良かった。


「所でセレスさん、この後、どうするんですか?私は1度商業組合に顔を出さなくてはいけませんから。荷を卸しにも行かなくてはいけませんし。」


「私はそうですね・・・取り合えず色々と街の中を見て回りたいと思います。後の事はそれから。」


人族の街の暮らしも見ておかなくては。あぁこんな事ならもう少しお小遣いを持って来るべきでした。私とした事が失敗しましたね。


「もし、セレスさんさえ良ければ1度冒険者ギルドにも寄ってみてはいかがです?貴女程お強い方なら直ぐにでも上位冒険者になれると私は思いますよ。では私はこれで失礼しますね。本当命を救って頂きありがとうございました。」


「はい。ルイさんもお元気で。」


ルイさんは一礼をしてお別れしました。って冒険者の3人は何故まだいるのです?


「おっ!やっと街に入れたか。」


「おーい!セレスちゃーん。」


「こっちッスよ~。」


何でしょう。物凄く回れ右して他人のふりをしたい気分ですね。何故か歓迎ムードなのですが。


「中々来ないから心配したぜ。じゃあ早速ギルドへと行こうか。」


「え?」


「え?セレスは冒険者になるんだろ?だったら俺達と一緒にギルドへと行こうぜ。登録もしなきゃならんしな!」


「ウチもあんなに強いセレスちゃんがウチらの弱小ギルドに入って貰えたら嬉しいなぁ。」


「本当ッスよ!セレスさんが冒険者になって俺らのギルドに入って貰えたらもう弱小ギルドなんて呼ばせ無いッスよ!」


「あの、私まだ、入るとは・・・街の見物も・・・。」


「さあさあ行こうか!」


「えええぇぇぇぇぇぇぇ!?」


半ば3人に拉致される形で私はギルドへと連れて行かれました。人拐い、いえ、魔族拐いですよ!これは。







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