第3話お金って何ですか?私持ってないです。

こんにちは。魔王の娘のセレスです。

魔王城である家から家出をして、ひょんな事から人族を助けまして今は人族の方々と一緒に街に向かって歩いています。

人族の皆からは私は魔王に囚われていたとても可哀想な子だと思われていまして、口々に皆から励ましの言葉を頂いています。

1つ訂正しておきますけど、私は決して可哀想な子では無いですよ?私自身、自分の意思で家出をしてきたんですからね?

それはさておき、魔王城を出てから街道沿いを歩く事3日漸く街に着いた様です。

ここは魔族領と人族領の丁度国境線上にある街みたいです。人族領にとっては最前線の街と言うだけあってさながら要塞都市と言った感じでしょうか。

街を丸ごと囲む城壁は高く造りも頑丈そうで街の入口にあたる門も厚くそこらの魔物では例え攻撃したとしてもびくともしないでしょう。

人族も中々侮れ無いですね。そんな中、あれは一体何をしているのでしょうか?

皆さん入口付近に列をなしています。


「あの、ウィリアムさん。あれは何をしているのですか?」


「うん?あれか?あれは街に入る為の審査待ちの列だよ。一応身分証の確認をしているんだ。それがどうかしたか?」


「いえ、別に。そうなんですね。」

(どうしましょう?私、身分証等という物を持っていないのですが。う~ん。強行突破するのもやぶさかではありませんが、それだと反って騒ぎになって余計面倒になってしまいますし。困りましたね。)


そんな事を考えている内に私達の番になってしまいました。もし、入れなかったら仕方ありませんね。悔しいですが引き返す事にしましょう。


「どうもこんにちわ。ルイさん。身分証の提示をお願い致します。」


ルイさんとは私が助けた商人さんの名前ですね。門番の方が随分親しい感じで話掛けているみたいですね。


「ウィルの旦那もお疲れ様です。それにサラちゃんにマイクも、あれ?キースの奴は?あいつは一緒じゃなかったんですか?それに・・・おや?そちらのお嬢さんは?」


「あ、あぁ。この子かい?俺達はこの子のお陰で魔物の群れから命を救って貰ったんだよ。街に帰る途中コボルト達に襲われてしまってな。その時にキースはコボルトにヤられちまったよ・・・。残った俺達もあわや全滅って時に、この子、セレスに助けて貰ってな。ルイさんと俺とで無理言って一緒に来て貰ったんだよ。」


「そうだったんですね・・・。キースは残念でしたね。

事情は分かりました。ですが、身分証が無い方はいくら貴方方の命の恩人とはいえ、国の決まりで入れる訳にはいかないのですよ。」


それはそうですよね。おいそれと素性の分からない者を入れる訳にはいかないですよね。さて、これはいよいよどうしたものでしょう?やはり強行突破するしか無いでしょうか?それとも引き返しましょうか?


「いや、ちょっと待ってくれ。この子、セレスはどうやら魔王城に囚われていたみたいで、此処まで逃げて来たんだぞ!しかも俺達の命を救ってくれた恩人を身分証が無いって理由で追い返したら、それこそ人道にも劣る魔族と一緒じゃないか?」


ん?ちょっと待って下さい。今、何か失礼な事を言いませんでしたか?人道に劣る?私達魔族が?私達魔族が人族に劣るなんて事は万に一にも有り得ませんよ。

それに人道って何です?貴方達人族だって私達の魔道を知らないじゃないですか。

ちょっとだけ気分が悪いですね。ここまで言われるのは。やはり強行突破しましょう。何だか癪ですし。


私は体内の魔力を放出して大きな爆発を引き起こしてやろうかなと思って集め出した瞬間。ルイさんとウィリアムさんが門番さんを説得し始めました。


「どうだろう?私とウィルさんでセレスさんの身元を保証すると言うのは?それならば問題無いでしょう?

我々は長年この街にいて、顔だってそれなりに知られている事ですし。どうだろうか?」


「俺からもお願いしたい。このままセレスを追い出したら命を救って貰った俺達はきっと死ぬまで後悔するだろう。だから頼む!」


「もう!分かりましたよぅ。いつもお世話になっているお二人にそこまで頼まれては・・・仕方が無いですね。今回は特別ですよ。」


どうやら門番さんは二人の説得に折れた様です。

お二人のお陰で街の中に入れるみたいですよ。


「では、セレスさんでしたっけ?どうぞこちらへ。本当ならば身分証の発行は正規の手続きを取ってもらわないといけないのですが、今回はルイさんとウィルの旦那のお二人が貴女の保証人となって下さるそうなので、身分証を発行致します。身分証の発行には銀貨2枚必要です。」


私は門番さんに言われるがまま詰所へと通され身分証の発行の手続きをしていましたが、門番は私の知らない単語を仰っていました。銀貨2枚とは何でしょうか?


「あの・・・銀貨2枚とは何でしょうか?」


「はい?一応身分証の発行には銀貨2枚のお金が必要なんですよ?ご存じ無いですか?」


「お金って何ですか?私持っていないのですが。」


「えっ!?お金を知らない?」


「はい。」


門番さんの顔がひきつってますけど。人族の世界にはお金という物が必要なんですね。


「セレスさん、貴女は囚われていたとお聞きしましたが、何時?どの位の間囚われていたのです?」


「何時?生まれた時からですけど?

(魔王の娘ですし。)

どの位の間とはついこの間ですけど?

(お父さん、魔王と喧嘩して家出する迄、魔王城にいましたけど。)それが何か?」


あれ?今度は門番さん目に涙を溜めてますけど、どうかしたんですか?コロコロと表情が変わって忙しい方ですね。


「セレスさん!貴女は生まれて間もなく魔王城に囚われ今日まで辛い思いをしていたんですね!それならお金を知らなくても納得です。」


あれ?また何か誤解なさってます?そしてまた私の事を可哀想な子として見ています?だから私は決して可哀想な子では無いんですって!お願いですからそんな憐れむ様な目で私を見ないで下さい。お願いします。


どうしましょう?私の周りの人族の間で私が可哀想な子で定着していきそうなんですけど。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る