第2話冒険者ギルドとは何ですか?

皆さんこんにちは。魔王の娘のセレスです。

私は今、何の因果か戦争中である人族の方々と一緒に荷馬車の護衛をしながら次の街まで歩いています。

はて?一体何でこうなってしまったのでしょうか?

私は考えました。そうです。私は家出の最中人族の方々がコボルト達に襲われている所を私のただの八つ当たりでコボルトを倒し、結果的に人族の方々を命の危険から救った事から始まってしまったのです。


それもこれもみんなお父さん、魔王が私のプリンを勝手に食べてしまうからいけないのです。

なので一番悪いのはお父さん、魔王ですね。うん。


そんな一人自問自答をしていると、助けた人族の方が私に話掛けてきました。この方は確か・・・中年冒険者の方ですね。


「改めてお礼を言わせてくれ。それと自己紹介がまだだったね。俺の名前はウィリアムだ。皆にはウィルと呼ばれている。君は?」


「お礼だなんてそんな・・・。(ただの八つ当たりですし。)私の名前はセレスティアと言います。親しい友人からはセレスと呼ばれたりしていますので、呼びやすい方で呼んで頂ければ。」


「そうか。じゃあセレス、君は一体何処から来たんだい?それにその漆黒の髪に、黒い瞳とはとても珍しいね。俺も初めて見たよ。」


そうなんですか?黒髪黒目が珍しいとは。私のお父さん、魔王も黒髪黒目ですけどね。魔族の中でも黒髪黒目は特に魔力が高いと言われています。魔族界ではこれ、常識ですよ?でもこれを言うのは伏せておきましょうか。きっと話がややこしくなりそうですから。


「私は・・・魔王城から来ました。」


「魔王城!?セレス・・・君は魔王城から来たのかい!?」


「はい。そうですけど・・・?(何か問題でも?)」


「そうか・・・良く魔王城から逃げる事が出来たね・・・大変だったろう?」


「え!?あ、はい。逃げて来ました。(家出しました。)」


「そうか。それならセレスが魔族領の方から歩いて来たのも納得が行くな。うん。」


「そうですね。(お父さん、魔王の領地ですからね。)」


「それにしても良く魔王城から無事に逃げ出す事が出来たね?」


「そうですね。割りとまぁ・・・すんなりと。(普通に城から出ただけなんですけど。)」


「そうなのか?魔王城は意外と警備が手薄なのかも知れんな。これはギルドに報告しておいた方が良さそうだな。」


大丈夫でしょうか?何やらとてつもなく盛大に勘違いなさっている様ですけど。警備は物凄く厳しいですよ?魔王城の外門の上はガーゴイルが鎮座しており、侵入者を素早く発見出来る様になってますし、門の前はガーディアンと呼ばれるゴーレムが立ちはだかってますから。並大抵の強さじゃ門にたどり着く前に死んでしまうと思いますけど?

それに仮に外門を越えたとしても深い堀に囲まれた本城は難攻不落と呼ばれていますよ?

お父さん、魔王の最近の趣味は増築ですから。お陰で娘は大変迷惑してますけど。時々自分の部屋まで辿り着けない時がありますから。先に訂正しておきますけど、決して私は方向音痴ではありませんよ?増築するお父さん、魔王が悪いんですから。

まぁ、これも言わないでおきましょうか。色々と面倒ですから。そういえばウィリアムさんが先程言ったギルドとは何なんでしょうか?


「あのぅ。ウィリアムさん。」


「うん?どうかしたのかい?セレス。」


「先程仰ったギルドとは何ですか?」


「ギルドを知らないのかい?」


「はい。此方の事は何も。(人族の世界の事は良く分かりません。)」


「そうか・・・。君は随分長い間、魔王城に囚われていたんだな。良し。じゃあセレス、君にも分かりやすく説明しよう。」


囚われて?私としても世間知らずな箱入り娘とは多少自覚はありますけど・・・。ある意味囚われてはいたのでしょうかね。お父さん、魔王からは「お前はお嫁に出さない!」なんて言われていましたから。過保護すぎると思いませんか?全く。


「はい。宜しくお願いします。」


「ギルドとは謂わば組合の事だ。俺が所属しているのは冒険者組合。魔物の討伐、素材の採集、今回みたいな護衛任務みたいなのも請け負ったりするんだよ。他にも色々組合があって商業ギルドや工業ギルド様々さ。セレスはギルドに興味があるのかい?」


「いえ。そういう訳では・・・でも確かに少し、興味があるかもしれませんね。」


「もし、興味があったらどうだろう?冒険者になってギルドに入ってみては?君みたいに強い子なら何処の冒険者ギルドでも引く手数多だよ。きっと。」


「そうですか?少し考えてみますね。」


「あぁ。次の街までに考えといてくれると嬉しい。良い答えを期待しているよ。」


冒険者に、ギルドですか・・・人族の生活や情報を知るには良いかも知れませんね。それに私個人としても少しばかり興味があります。このまま何もせず城へと戻ると何だかとても負けた気分になりそうですから。

良し!決めました。次の街に着いたらウィリアムさんに言ってみましょう。


私、セレスティアは冒険者になります。魔王の娘ですけど。



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