第4話深い森の奥へ

ーー第五章 深い森の奥ヘ?


「では、行きますか!」


と、俺は言った。


「どこへ行くの?」


「うーん、森の方行ってみますか。」


「そうだね。まだ、森には行ってないわね。」


(と、いうより平原、海辺以外全部行ってないような気がするのだが)


ーー森の入り口


「うわ、暗いな〜なかなか広そうだし迷いそうだなぁ」


とユウヒは言った。


「目印は、必須か。一応、安全の為にロープで互いの身体を結んどこう。


俺は、ユウヒに了承を取ってから、互いの身体をロープできつく結んだ。


ーー森の中


「一応、目印はつけているけど、もう、結構歩いたよ。」


「この先になんかあるような気がするんだ。」


そうして俺たちが歩くこと、1時間。ついに、俺たちは明らかな変化に気づいた。


「霧が濃くなってきたな。今日はここら辺で引き返すか。」


俺は、後ろを振り向きながらユウヒに言った。


 しかし、ユウヒはいない。


念のためにロープで身体を結んでいたのだが、そのロープは、鋭利な刃物か何かで乱雑に切られていた。いやな予感がした。


「おーい、ユウヒ!どこにいるんだ?」


しかし、返事は聞こえない。


俺は、焦った。ここで見失ったら二度と会えない気がして。


 俺はがむしゃらに走り、ユウヒを探した。

もう、何度走りながら木を避ける動作をしたのだろう。

俺は、スタミナを温存するために最低限の動きで木を今回も避けた…はずだったのだが。


「ゴツン!」


俺は木に当たったのかと、思ったのだが、それは明らかに木とは異質な音だった。


「痛たたたた。」


遅れて頭に衝撃が来た。

霧が深いなか、よく目を凝らしてみると、そこは、遺跡のようだった。


(なぜこんなところに遺跡が?

うーん危険だろうけど行くしかない!

もしかしたらユウヒだって、これを見つけて中に入ったかもしれない。)


どうにかして俺は、入り口を見つけた。

よし、こうなったら覚悟を決めて。


(突撃!!)


などと心の中で思うことで恐怖が多少、薄れたように俺は感じた。


 中に入るとそこは、まるで別世界、のように俺は感じた。


それは、明らかに異質、そして現代よりもずっと先の空間のように思えるからだ。


俺は正面に気配を感じて、1本の柱の裏に隠れた。


話し声が聞こえる。


「たしかに、人の気配を感じたんだよな。」


「多分、気のせいだ。」


明らかに、俺を敵だと認識している。

俺は、直感でそう理解した。


(少なくとも、今は相手の情報が少なすぎる。

どうにかして、相手の戦力を確認しなければ。)


そう思った俺は、身を少し前に乗り出した。それが、間違いだったのかもしれない。


 俺は、足元にあった小石に気づかずに

1歩前に踏み出した。


「カランコロン」


と、小石が転がる音がした。


「誰だ!」


やばい、猛烈にやばい。


この状況下においては、もう戦うしかないだろう。


「もう、どうにでもなれ!」


俺は、念の為持っていた鉄パイプを手に取り、相手の前に躍り出た。


が、相手は人では無かった。

「コボルト」


と、言えばいいのかわからない俺より少々小型なそのモンスターはいきなり、襲いかかって来た。


いきつく暇も無く、コボルト1体が弓を構えて攻撃して来た。


とりあえず俺は回避しようとした。だが、未知の生物を見た焦燥からか、俺は正確な行動ができなかった。


「ぐあっ!」


コボルトが射抜いた矢は、俺の脇腹を抉った。

想像を絶するような痛みに

俺は、意識を危うく持っていかれそうだったが、なんとか耐え俺は、射抜いてきたコボルトを攻撃した。


コボルトBは避けようとしたのだが、俺の想像以上に早い攻撃を避けることができず、絶命した。


(なぜ、こんなに早い攻撃ができたのだろう。)


俺の中に、一つの記憶が蘇った。


そこは、表彰式。俺は、一番上に立っている。

夏季剣道全国大会の表彰だった。

準優勝の人の表彰が終わる。そして、俺の名前が呼ばれた。


「そして優勝は、」


会場全体がシンとなる。


「影野 蒼(カゲノ アオイ)君です!

おめでとうございます!」


(な、なんだと!?もしかして、俺とユウヒは兄弟なのか?)


「君の剣技の速さとテクニックには、目を見張るものがあったよ。優勝おめでとう!」


こうして、拍手に包まれながら、俺は会場を後にして、待機部屋に戻った。


「コンコン、コンコン。

蒼いるの?開けてくれる?」


俺は部屋の鍵を開けた。

そこには母らしい人物と、

よく見慣れた顔のユウヒがいた。


「優勝おめでとう!お兄ちゃん!」


「…………。」


記憶はそこで途絶えている。


 俺は、現実に戻った。


(色々、考えてる暇もないみたいだな。)


もう一体のコボルトが、わずか2メートルのところまで迫っていた。


「よくも、兄貴を!」

怒りに任せてコボルトは木刀を振る。


勢いよく振りかぶった木刀が迫ってくる。


俺は馴れた手つきで、軽く相手の攻撃を受け流した、と同時に攻撃にうつった。


もう一体のコボルトは


「あ、兄貴。俺もそっちに行くよ。すまねえ仇、取れなかった……。」


と、いい絶命した。


「さて、気になることがあるが、先に進むか。」

冷淡な口調で言った彼の傷はすでに治っていた。

そしてコボルトが持っていた木刀を拝借して、俺はさらに奥へ進んだ。

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