第3話腹が減っては……?


「一体、私は…。」


「急に熱を出して倒れたんだ。」


「そう、なの……。ところで、ここはどこ?」


「滝壺というべきかなほら初めてこの島で目を覚ました時小川があったろ?そこの上流に来たら小さい滝があってここはその裏さ!」


 彼はこう得意げにいったが、何もなかったらどうしていたのだろう?

いやいやそれよりも先にいうべきことがあるだろう。


「えっと、助けてくれてありがとう。」


「どういたしまして。」

(俺は当然のことをしたまでなのだが。)


「えっと、聞くのは悪いと思うんだれど、なんか、夢でも見てた?うなされていたんだ。」

(やはり、情報収集は大切だとしてもこういうことは気がひける。そもそも、これは情報収集なのか?)


「うん。見てた。内容は、うっ!」


「おいおい、大丈夫か!?」


「大丈夫。気にしないで。で、内容なんだけど……うっ、うっ、うっ…。」


「まさか、泣いてるのか?」


と、言いながらユウヒに近づく。


「いや、夢が思い出せないの。で、思い出そうとすると

 "外部から操作"されているように、霧がかかって思い出せないの。とても重要なことだったと思うのに。うっ、うっ…。」


「大丈夫、大丈夫。」


と、俺は背中を撫で、なだめてあげた。

初めてこの行動をしたはずなのにやけに慣れた手つきでこれを行なった。背中を撫でながら俺は考えていた。


(ユウヒが霧がかかって思い出せないといったが、同じ経験を俺もどこかで……)


「とりあえず、今日は寝るか。」


「一応掛け藁、敷き藁、猛反発マクラ(別名:石)の3点セットだ。」

という俺の渾身のギャグ?をスルーしてユウヒは言った。


「あの、手を握ってもらっていい?」


「ああ。」

(さすがに考えないようにしよう。)


と、俺。

こうして二日目は幕を閉じた。


 へんな夢を見た。

それは、ユウヒが家にすごい勢いで帰って来てそうと思えばすぐ倒れたではないか。


「おい!ユウヒ!大丈夫か?」


俺は声をかける。しかし返事はない。


不意に、俺は誰かに足を掴まれている感覚に気づき、自分の足を見た。そこには、見たことのない少女が…。


「ウフフ、あなた"も"来ちゃったのね。いいわ、あなたの記憶も消してあげる!」


俺は何の抵抗もできず、脱力感が身体を襲い倒れ込んだ。


「俺の名は……aげ野 ……。」


 俺は、そこで目を覚ました。

さっき見ていた夢はもう霧がかかっていて思い出せない。


「うーん……あ、おはよう。」


と、ユウヒが声をかけてきたので、


「おはよう。悪い、起こしちゃったか?」


と、俺は返した。


「いや、普通に起きただけ。」


「なら、良かった。で、どうだい?調子は。」


「うん、大丈夫。」


と、その時腹の虫が鳴き始めた。


「そういえば、何も食べてなかったな。」


「ちょっと待っててくれ。」


と、俺は言い外へ出ていった。


(さて、あれはどうなったかな。よし!うまくいった!)


さて、あとは火だ。あれがないと、どうにもならない。

とりあえず必要なのは、っと、

乾いた木の皮、

藁、木の棒といったところか、

あとは根性だ。

素材は簡単に集まった。

あとは、これを持って、と。

俺は、ユウヒを心配させないように、

なるべくはやく戻った。


「おかえり。どこいってたの?」


「これを取りにさ。」


俺は昨日、みつけた資材をつかって、簡易的な魚用トラップを不器用なりに作り、仕掛けておいたのだ。

結果成功し、いまここに生け捕りにされた魚(フナ?)が2匹いる。


「え?すごい!」


ユウヒは興奮したようにフナをみている。


「さて、火をおこしますか。」


俺はテレビで得た知識を元に、全力で木の棒を素手で回した。


「うおりゃー‼︎」


されども、火どころか、火種すらもできない。


それを見てユウヒはクスクス笑っている。


「何が、おかしい。何ならユウヒもやってみるか?

火がついたら、俺が土下座。

つかなかったらおまえ、土下座な。」


「ええ、いいわよ。」


ユウヒは、いかにも簡単そうに答えた。


「後悔すんなよ。あとで、無理でしたって言っても、土下座させるからな!」


「ええ、いいとも。」


「じゃあ、始めるわね。」


 というとユウヒは、木の棒の先を少しとがらせ、ロープを棒にくくりつけ、

弓のようなものを作った。

俺は、何をしているのか、わからなかったが、

やっと本題に入ったらしく、弓の弦の部分を使い棒を回した。

わずか30秒ぐらいだった。

すぐに火種ができた。

それを藁に移し木に移しすぐに火が灯った。

俺は、


「嘘だろ…。いまさっきの俺の努力は…。」


と、言った。

この瞬間俺の負けは確定したのだ。

ユウヒは、誇らしげな顔をして、


「はい、私の勝ち!じゃあ、約束どうり土下z…。」と、言おうとしたが、途中で、


「も、申し訳ありませんでした!」


という、土下座している彼の声に妨げられた。


「あ、あの。最後まで聞いてよ。じゃあ、約束どうり土下座を……して欲しかったところだけど、恩があるから今回はいいわ。って、言おうとしたんだけど…。」


「え?も、もう一度言ってくださいませんか?」


妙に俺は敬語口調になったが、


「だから恩があるから、土下座はいいわ。って言ったの!」


「え、ええ〜⁉︎」

俺の土下座損である。


「たしかに、私の勝ちだから、土下座をしてほしかったんだけど、今回は、感謝の気持ちを込めてやらなくても良かったんだけど……ね。

ふふっ。で、いつまでその態勢を?」


(ツンデレじゃ、ないだと!?)


俺は、


「べ、別にいいだろ!」


「それで、その火起こしの方法はなんだよ!」


と、起き上がりながら言った。


「今のは、ユミギリ式(あるいはマイギリ式)よ。

あなたがやってたキリモミ式

(ゴリ押し)より軽い力で火が起こせるの。」


「まあ、まず火でフナを焼いちゃいましょう。

私、もうお腹ペコペコだわ。」


「ああ、そうだな。」


と、言いフナの内臓を取り、口から木の棒を奥まで差し込んだ。


(自分でも、慣れた手つきだな、と思うほど早く行なった。)


「そういえば、ユウヒ、おまえこういう系のやつ大丈夫か?」


「うん、ある程度なら(ゲームで)慣れているから。」


「じゃあ本日初かつこの島初の、食事用意完了!」


「ちゃっちゃと焼いちゃいましょう。」


「ああ、そうだな。」


ーー5分経過


「もうそろそろかな?」


「じゃあ、いただきまーす!」


俺たちは夢中で焼きフナにかぶりついた。食べている間は、互いに何も話さなかった。


「はあ、食った食った。」


「こんなに美味しいなんて。」


「さて腹もいっぱいになったところで、探索に行きますか。」


ーー森の奥深くーー


霧が立ち込めたところに少女がいた。

その影には建造物が……


「……Delete,all complete.」


邪悪な声がこだまする……

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