第2話探索と記憶
「海辺へきたものの、これからどうするの?」
と、彼女。ユウヒが聞いてきたので、
「まず、漂流物の中で使えそうなものを探そう。もしかしたら結構使えるものもあるかもしれない。」
と俺は答えた。
そうして、俺たちは海辺で使えそうなものを探しはじめた。途中ユウヒが海藻に捕まって転ぶというアクシデントがあったが、それ以外は特に目立ったことは無かった。結果的に見つかったものは、
ビン2本
いい感じの木の枝、棒たくさん
ロープ。穴開き傘。
そして、鉄パイプだ。
「ビンとロープと鉄パイプというより全部嬉しいな。」
(正直、ビン1本の方が間接キスっぽくなって嬉しかったのだが。まあそう思ったところでユウヒは全力で拒否していたところだろう。)
「ビンとロープはわかるけど、鉄パイプって何に使うの?」
と、ユウヒは言った。
「そんなの、この島にMonsterがいないとは、かぎらないだろ?もしいた時は、これで応戦するんだよ。」
と若干、英語風に言ってみた。
「まあ、そうだよね。あとMonsterのアクセント違うわよ。」
どうせ俺が勉強ができないとバカにしているのだろう。
(実際、俺は英語が全くできないのだが、
国語、数学はかなりの点数をとって英語を除けば、学年4位というけっこうな位置にいたのだが。英語を除けば…。)
この時俺は、無意識の内にこれを思っていたのだが…
昨日はこの記憶がなかったことに気づいた。
そのことに気づき再度その記憶を思い出そうとした。
しかし、記憶には霧がかかりもう思い出せなかった…。
まるで、"なにかの阻害"をうけているように。
そして、今になって気づいた。よく見るとユウヒが下から俺の顔をのぞいているではないか。
どうやらかなり長い間考え込んでいたらしい。
「ねえ、ねえってば。聞いてるの?」
その声を聞くと俺は聴力をも思考に使い込んでいたようだ。
とりあえず俺は、
「悪い、聞いてなかった。なんか記憶が思い出せそうだったんだ。」
と、返事をした。
(そういえば、過去の記憶といえばもう一つ思い出した。それは俺がコミュ障だったということだった。それなのになぜユウヒとはこんなにも話せるのだろう。多くは、この状況のおかげだが。)
ユウヒは理解したように、
「で、なにか思い出せたの?」
どう話すべきか迷った。
なぜなら、どちらにせよ、ロクでもないことを思い出していたからだ。
この時俺は、なにか重要なことがわからなくなった気がしたが、気のせいだと思い、
「うーん、何もわからなかった。」
と、答えた。
「そう……。」
と、ユウヒは残念そうにした。
ふと、何かに当たった気がして、俺は空を見上げた。
「雨だ!早く雨宿りできるところを探さないと!」
と言い俺はユウヒの手を引っ張り、流れ着いてきた穴開き傘を開き一緒に相合傘をした。
(成り行きとはいえ、だいたんな行動だったか?)
と、俺は思った。
だが、ユウヒは怒っているのか恥ずかしいのかときめいちゃったのか、顔を下に向けてだまっている。
とりあえずなんか言わないといけないと感じた俺は、
「な、なんか、ごめんなさい…。」
と言った。
「べ、別に、嬉しくてときめいちゃったんじゃないんからね!」
ほほう、と俺は思った。
(つまり、ロリでツンデレか…ヒャッハー‼︎俺得だぜー‼︎)
なんて荒ぶっている俺の心を悟られないように、最大限に俺はいたって冷静に言った。
「さて!これからどうしますか!」
明らかにテンションがおかしい。
これは、二度目のグーパン待った無しか…
と覚悟した俺だったが、ユウヒからは何も返ってこなかった。
代わりに、
「バタッ‼︎」
と後ろで何かが倒れたであろう、音がした。
俺は、やな予感がして後ろを振り返った。ユウヒが倒れていた。
「おい、ユウヒ!しっかりしろ!おい!しっかり……」
遠ざかる意識の中、私は彼が心配してくれているその声を聞いて私は意識を失った。
ーー記憶の中ーー
「……ユウヒ、おい、影野 ユウヒ!」
「は、はい!」
私は、名前を呼ばれ飛び起きた。
まわりがクスクス笑っている。
(ここは、学校の教室だろうか?私は、なぜここに…。)
とりあえず、今はこの状態に従うしかない。
じゃあ起きたところで影野、この問題わかるか?
中3には多少難しいであろう問題だったが、私は難なく解いてみせた。
「おお!正解だ。」
先生は驚きの声をあげた。周りからは感嘆の声と同時にブーイングの声も上がっている。
その時、キーンコーンカーンコーン
と、授業の終わりのチャイムが鳴った。
この先生は私のクラスの担任でもあり、
「今日はここまで、帰ってよろしい。」
と言い、去っていった。
突然、背後から
「ユウちゃん、一緒に帰ろ!」
と言われ、私が振り向くと見た目は同じぐらいの少女、いや、幼馴染の恭子(キョウコ)がいた。
「うん。」
と返事をすると私は恭子の後ろをついて行くように、教室を後にした。
帰り道、
「ユウちゃんが寝ちゃうなんて珍しいね。もしかして、夜まで勉強してたの?」
と聞かれ、
「うん。1時ぐらいまで。」(実はアニメなのだが。)
と、答えた。
「偉いね。私なんか全くしてないよ。」
と言われたので、
「それでも、頭いいからいいじゃない。」
と、お決まり事を答えた。
私は、この後用事があったので、
「じゃあね。」
と言い、交差点で恭子と別れた。
行く先は本屋である。
今日、新発売のライトノベルの続編があるのだ。
それもかなりの人気作だ。
毎回並んでも買えるかどうかだ。
今日は、学校があったので買えるかどうか不安だったが、
どうにか最後の10冊に滑り込めた。
私は、早く帰って続きを読みたかったので、
いつもと違う道だが10分以上早く着ける道を選んだ。
その途中に、細い路地があるのだがそこに、小さい少女がいた。
私は、その子をギリギリで避けたのだが、
その子は私の制服を掴んだ。そして、いった。
「ここには、来ちゃダメだよ……。」
その言葉は、妙に重みがあり、
私は背筋に悪寒が走るのを感じて、
少女の手を払いのけ、全力で家まで走った。
だが、少女は宙を浮き、追いかけてくる。
「ウフフ、ウフフ、ウフフフフフ!今、もう一度!記憶を消してあげるからね!逃がさないわ!」
(え?今、記憶を消す?だって⁉︎)
この時、ユウヒは思い出した。無人島に漂流していたのを。
せめて、彼にこのことを!
そのためには逃げなければ!
しかし、後ろを見るともう30センチまで迫っているではないか。
後、家まで10メートル、5メートル、1メートル、0!そして鍵を開け、入りすぐ閉める!
「はあ、はあ…。」
その時、私は、肩を叩かれた。やな予感がして振り返る。
しかしその想いとは裏腹にそこには何故か、彼がいた。
「おかえり。ユウヒ。そんなに走ってなんかあったのかい?」
それですべてを思い出したのもつかの間、私はいつの間にかいた少女に掴まれ気を失った。
「逃がさないっていったでしょ?」
私の最後の記憶には、少女がお兄ちゃんを……
「…ユウヒ、…ユウヒ‼︎
良かった。やっと目を覚ました…」
一体、私は…。
「逃がさないっていったでしょ?」
その言葉が脳裏に繰り返されるばかりである。
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