第3話
さて、改めて思うがあいつらは馬鹿なのだろうか?いや、馬鹿なのだろう。
「敵、本隊50万強を確認。奴らに戦争というものを教えてやろう。授業料はそうだな、軽く30万人ほどか」
ノロノロと行軍する軍隊を見下ろす。
「敵のど真ん中に大きな風穴を開けてやる。その後は各自散開し敵を殲滅。総員、広範囲爆撃術式用意」
本来なら使われない魔法陣が銃口に多重展開される。魔力臨界点に近づくと手に持った銃からスパークが起こり始めた。
「「「「神名において、祖国を土足で侵す蛮族に、死という名の祝福を与え給え」」」」
「総員!テェェェェ!!」
銃から熱戦が放たれる。ゆっくりと暴発寸前まで溜め込んだ魔力が生み出す破壊は絶大だ。
地上に赤い
ああ、素晴らしい。あの様な無能ですら散る瞬間はこうも美しくなれるのか。
1人悠々と次々に咲く花を愛でながら神への賛美歌を歌う。神だろうが悪魔だろうが自分を生き返らせた存在なら信仰するのもやぶさかでは無い。
もちろん引き金を引くのは忘れないぞ。
そのくらいには余裕だ。部下が優秀すぎるのも考えものである。
新型の術式を試す為の的としては最適だ。これを有効活用しない手はない。
5つ程試作段階の術式を試した頃
不意にエミリー少尉から通信が入る
「こちらファントム03、敵の本拠地と思しき施設を発見」
「こちらファントム02、こちらでも視認いたしました」
マリー中尉からも同様の通信が入る。
「こちらファントム01、罠の可能性は?」
信頼をおく部下2名からそれはありません、と否定された。
「うむ、そうか、敵の殲滅具合は?」
「5割と言ったところかと」
まぁ、航空艦隊に残しておく分も必要だろう。
「よし、では敵本陣を制圧する。各位私についてこい」
私の目にも敵の天幕が見えた。
通信電波は垂れ流し、平野部に堂々と天幕が貼られている。全く隠す気の無い敵の本拠地を見る。あの中に爆薬しか詰まっていないのではないかと無駄な探査術式を使う羽目になった。
悠々と降下を開始する。
「諸君らに通達する。今ここで降伏するならば、戦時国際法に則り諸君らを捕虜として扱う旨をあらかじめ通告しておく」
さて、返答はいかに?
「ふ、ふざけるな!蜂の巣にしてやれぇ!」
まっ、そうなるでしょうね。
銃弾を防殻で防ぐ。魔導師にとって通常弾を装填した小銃などさしたる脅威ではないのだ。現代で言う対物ライフルくらいまでは比較的余裕で防御できる。もちろん貫通術式がを付与していないことが前提ではあるが。
「状況すら理解できないとは、いっそのこと哀れで仕方がない。喚いてるおっさん以外皆殺しで結構だ」
了解、という短い返答のあと魔力砲によって敵が薙ぎ払われる。
無能な指揮官は衝撃術式でさっさと黙らせた。人的資源の浪費を嘆く、デグレチャフ少佐の言い分も今なら誰にでもわかる。そういう気分だ。
もう太陽が西に沈もうとしている。以外に時間が経っていたらしい。
きっと魔導大隊の方もそろそろ終わった頃合いだ。
ライン戦線では最初の一撃以外、大量破壊系の術式が使えなかったからスッキリした。
あそこは敵味方が入り乱れ過ぎて広範囲爆撃が行えなかったのだ。
おそらくデグレチャフ少佐のことだ前進できるだけ前進するだろう。何も心配は要らないと伝えておいたから確実だ。
「よし記録媒体と敵資料の収集に移る。役に立つかは知らないが手土産にはなるはずだ」
方法までは知らないが、おそらく3個師団を突破した勢いで首都まで乗り込むと考える。
そこで方法までは知らないが軍事工廠を破壊。そのまま公国は降伏する流れとなるだろう。正規軍の7割近くと、工廠を失った以上戦争が続けられる訳もない。
こちらの消費から考えれば良いことしか無いが、1日も保たないならそもそも戦争しようとするなよ、そう考えずにはいられない。
一夜明けて
全く、正々堂々奇襲とは面白いことをする。中身が成人男性であることを考えれば、もう笑うしかない。
笑い転げていたら部下に変な目で見られた。
さてさて、これで少しは休暇がもらえるか、とか考えていたのだが、何やら中央に呼ばれた。急ぎではないとの事だったので列車を使いゆっくりと移動した。
色々とずさんな管理の穴をついて物資をチョロまかしている身からすれば列車の中で食べる食事は少し物足りなかった。
帝都の中心部
周囲に逃げ場はなく、信頼していた部下は既に奴らの手先となった。
「くそっ、私の干渉式があんなにくだらない理由で弾かれるとは」
予想外まったくもって予想外だ。
逃げ出した私を探すためだけに、私ですら苦労した広範囲索敵術式をアーベルの双子は並列起動を用いて成功させた。当然、襲撃を受ける。街中で飛行術式を使わないのは当然として、まさかホバー移動で滑る様に高速移動するとは予想外だった。優秀な部下だよ。
私は捕まえられた宇宙人のように両脇を挟まれ引きずられていった。両手に花とはこのことを言うのだろう(泣)
程なくして1つの建物に入る。中には女性士官の先輩たち。着ていた軍服をぽいぽいと脱がされる。制帽の邪魔にならない高さで結んでいた髪も解かれた。下着ぜんとしたキャミソールを軽く押し上げる発展途上の胸を見てなんだか悲しくなってきた。
先輩たちの私に着せる服に対する議論が遠くに聞こえる。
要するには、過去にターニャも通ったプロパガンダ用の写真撮りだ。あの時は大爆笑していたが、実際自分がやられるとたまったもんじゃない。笑ったの謝るわ。
私の信じる神様は厳粛な存在Xと異なり今頃笑い転げている事であろう。
私はさっさと諦めて自分で衣装選びを始める。
もうヤケクソだスカートが膝上になるのだけは阻止せねば。
「なん、だと」
姿見に映った、どこか儚げな雰囲気すら感じる美少女が私だと⁉︎あの駄神め無駄に全力出しやがった。
銀色の髪はサラサラと煌めき、薄く塗られた口紅が肌の白さを際立たせる。恥ずかしさのせいだと信じるが、頰には赤みがさしていた。
ありえねー。まぁひざ下スカートになったのは及第点だ。白のフリル付きのブラウスに腰部がコルセットになっている、ハイウエストの黒スカート。首元のリボンがいいアクセントになっている。脚部が編み込みのブーツだったのも及第点だ。
え?なに?表情?笑顔?なにそれ?これ以上の黒歴史を作れと?なに?終わらない?
命令?あっはい
『戦場の女神が我らに微笑んだ』
とかいう見出しで発行されたらしい
悶えた。
あっ、使った服は貰えました。あと給料も出た。
祝福された狂気 腐りかけ@ @tamamo
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