第10話 ライバル?
やっと家に着いた。
今日は忙しいから付き合ってもらおうと、学校でルーフスを探したけどいないし。
でも保健医の高橋先生と偶然に帰りが一緒になって、手伝ってもらえたからラッキーだったな。
だけど高橋先生って本当にナイスバデイよね。
おまけに美人だし。
そしてものすごく優しくて、気持ちいいくらい良い匂いがしていた。
すごくドキドキしたのは不思議だけど。
きっと綺麗な人は同性でもドキドキしちゃうものなのね。
それって悪魔でもかな?
最近ルーフスが保健室に入り浸っているという噂を聞いた。
生徒達の間では美男美女だとトキメク者と、ショックだと泣き喚く者の二分化している。
ルーフスもこんな子供といるよりも、いくら人間でも綺麗な女の人の方が好きよね。
契約はあくまでも契約であって、他の人を愛したとしても契約違反にはならない。
でも私以外を愛されるのは、やっぱり悲しい。
「本当に駅までで大丈夫?」
「はい。後は電車に乗るだけだし、駅に着いたら自宅までタクシーに乗るから大丈夫です」
高橋先生に買い物を手伝ってもらい、今から帰路に着くために電車に乗る。
ここからは違う電車に乗るために別れを告げた。
心配そうに、高橋先生は私が見えなくなるまで見送ってくれている。
そんな高橋先生に、私は荷物で手を振れない分頭を下げ続けた。
美人で優しくて本当にいい先生。
感動に浸っていたその瞬間、突然腕を掴まれた。
ギョッとして見ると、そこには青ざめた顔の男が。
それはルーフスだった。
「どうしたの?」
「それはこっちのセリフだ。今までどこにいた? 探してもどこにもいないから心配したぞ」
「私の方こそ手伝ってもらいたくて、学校で探したのよ」
ムッとして答える。
「それは悪かった」
本当にすまなそうに返事をする。
なんか変だ。
ルーフス、いつもと違う。
掴まれた腕はそのままだし。
「腕痛い」
今気付いたかのようにぱっと離してくれた。
「でもここで会えて良かった。今丁度高橋先生と別れたばかりだったから、荷物多くて困っていたのよね。ルーフス持って」
「高橋サキ? 保健医の?」
なぜかフルネームで呼ぶ。
下の名前を知っているくらい親しいって事?
それでも、ルーフスの顔は今まで見た事がないくらい険しい顔をしていた。
家に着くと、いつものようにマレが飛びついてくる。
でもさすがに今日はストップ!と止めた。
だって、ケーキが崩れたら困るもの。
「エル、これ何?」
大きな白い箱をフンフンと嗅ぐ。
「クリスマスケーキよ。今日はイヴだからみんなと家でクリスマスパーティーをしようと思って」
「みんなって?」
あれから家に着くまで黙りこくっていたルーフスが、横から不思議そうに聞いてきた。
「私とマレとルーフスだよ」
「パーティーって、ご馳走?」
目を輝かせてマレが聞く。
「うん。マレも人間になったから色々食べられるようになったでしょう? それに人間になって初めてのクリスマスだしね。それにルーフスと過ごすクリスマスも初めてでしょう? だからみんなで祝おうと思って」
「わーい。ご馳走」
はしゃぐマレ。
マレとは対照的に黙り込んでいるルーフス。
「もしかして、ルーフスは予定があった?」
高橋先生は何も言ってなかったけど、もしかしてデートの約束をしていた?
それで機嫌が悪いとか?
「いや、これから誘うつもりだったから。まだ予定はない」
あ、やっぱり何か計画していたのだ。
でも私の彼氏だから、こっちを優先してくれるよね?
「ん? ちょっと待て」
怪訝そうな顔でルーフスが私に近付いた。
「何?」
「高橋先生とのデートというのはどういう意味だ? 私がデートに誘おうとしていたのはお前だぞ?」
「へ?」
なんとも間抜けな声が出た。
それよりも、また勝手に私の心の声聞いたわね。
「仕方ないだろう。お前の声はデカすぎるのだ」
「うん。エルの心の声大きい」
シレッと言うルーフスに同調するマレ。
ちょっと待ってよ。
それってマレまで私の心の声聞こえているって事?
「うん」
返事してくれちゃうマレ。
ああ、最悪だ。
私の心はダダ漏れ状態って事なのね。
私だけ、なんて不公平。
「それよりも、僕お腹空いたよ。早くご馳走食べたいな」
期待に目をキラキラさせている。
でもそれ以上によだれが光っているのが、美少年なだけにかなり残念だ。
「そうね。もう抵抗しても無駄な事は諦めるわ。ご馳走は買ってきたから並べたら始めましょう」
「わーい。僕お皿並べるね」
「私も手伝おう」
「ルーフスは買ってきたものをお皿に乗せて出してくれる?」
「了解した」
今年のクリスマスは1人かと思っていたから、みんなとやれる事がすごく嬉しい。
きっと1番はしゃいでいたのは、マレじゃなくて私ね。
ルーフスからも、思いがけずに嬉しい言葉をもらえたし。
今年のクリスマスは最高。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます