第63話 忠告
団長の口から伝えられたものは、思っていたよりもずっと厳しいものだった。
こちらで森から異端者の気配が消えた頃、他の地で異端者たちの魔力エネルギー値が跳ね上がり、応戦した隊員たちは闇に飲まれてしまったという。
そして隊員達は命からがら逃れてきたのだという。
一部の隊員達は依然前線に取り残されたままだという。
「前線にいたの我ら騎士団の他、警備団員、他の地を拠点とする騎士団員達だが、現在挙がっている報告によると各部隊の2割の隊員達の帰還が確認できておらん。
取り残されている隊員達とも連絡はついておらぬ。
そこで一度部隊を編成し直して現状の確認をまず行うこと、との指令が本部から通達があった。
これより名を読み上げられたものは壇上へ」
といって団長は部隊名簿を片手に名を読み上げ始めた。
上級隊員はアイビーとリグしか帰還できていないため、部隊長としてアイビーの名が挙がった。
そして、副部隊長として俺の名が挙がった。副部隊長がリグじゃないのがなぜなのかわからないが。
…どうやら部隊とは名ばかりで、今いる隊員の中で基本的な魔力エネルギーと魔力感知と戦闘力に長けているものが呼ばれたようだ。
そして、最終的な人数は俺とアイビーを含めて3名のみ。
たった3名でどうしろって言うのかと思ったが、どうやら他の騎士団からも人数を絞り出して各地へ向かわせるようだ。
「部隊長アイビー、副部隊長エヴァン、副部隊長補佐リグ。
お主らは西へ向かってくれ。アイビーとリグは先日まで西にいたから他の地へ飛ぶよりは状況を掴みやすいじゃろう。準備ができ次第、出発してくれ。
他の者は傷の治癒に専念するのだ」
その後、団長から紙面で指令書が届き、正式に任務として受理された。
そして俺達は遠方任務に必要な物資を回復薬と連絡用の水晶を魔獣の皮を加工して作られた袋に詰め、
-Ivy-
騎士団を出発して、数刻経った頃、リグが口を開いた。
「…エヴァンさんに言っておかなければならないことがあります」
と、話しだしたのでリグの隣にエヴァンが来るように、並列飛行で飛んでいた隊列を少し組み替えた。
「言っておかなければいけないこと?
それはこれから行く前線にについてのことか?」
リグが首を縦にそっと振った。
「これはわたしたちが帰還する数刻前の話です。
西の地は多くが湿地帯で、至る所に底なし沼が発見されています。
…底なし沼といっても、誰も潜ったことがなく、人の体長を飲み込むだけの深さがあることからそう言われています」
「…うん。で?」
「西の騎士団と協力して、イレギュラー達の発生源となっている沼を突き止めたのですが、何の前触れもなく沼がパックリ開いたのです」
沼が開いた、という衝撃的な発言を受けて流石のエヴァンも驚いた表情をした。
「開いた沼の底には黒い穴が開いていました。イレギュラーの魔力はその穴からのものだと気付いた他の上級や他の騎士団員は一時後退したのですが、一番手前にいた隊員達は吸い込まれるように穴に落ちていきました」
「…吸い込まれた?」
「…はい。みんな上空に後退したのですが、
決して弱いわけではない
「深緑の森では黒い土に触れた者は魔力を吸い取られたが上空にいた
エヴァンは少しの間考え込むように一点だけを見つめていたが、しばらくして顔を上げた。
「よし、まずは俺とルイスだけで沼に近づいてみる」
「えっ!?危険すぎます!」
「何言ってんだエヴァン?!リグの話聞いてたか?」
いくら魔力量のあるお前でも危険すぎる発言だぞ、それ。
「もちろん、魔力壁は何重にもかけて近づくさ。
…もしかすると、あの沼が例の奴か?」
エヴァンが指さす方向には件の沼が肉眼で確認できるところまで近づいていた。
「そうです。
…本当にエヴァンさんと
「(一度俺は森で黒い土に触れてるから2人よりも大分危険だが黙っとこう)
…一度俺は森で黒い魔力を感じているから、魔力感知をするなら俺が先に行った方が手っ取り早いかもしれないだろ?」
「…わかりました。念のためこの魔結晶石を持っていってください。
属性に関わらず、己の魔力を増幅させる上級アイテムです」
リグの手からエヴァンの手に結晶石が渡り、増幅された魔力でエヴァンは自分自身に何重もの魔力壁を展開させた。
「じゃあ二人は吸い込まれない距離まで下がっててくれ」
「わかった。けど、絶対に無理はするなよ」
「わかってるさ。じゃ、ちょっと行ってくるな」
と告げてエヴァンは
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