第38話 竜の友
-Evan-
あれから黒い何かを追い続けて、丁度北側に位置する山に辿り着いた。
あの黒いモノは洞窟中まで続いていたが、2人だけで入るのは危険ではないか、ということで山の周囲を探索していた。
オーラ自体は地下から漂ってくることが判明し、それは先ほど別れた地点から南東の方角からが一番強いことも分かった。
南東にはおそらくエド達が向かっただろうと推測から、南東エリアは3人に任せ、こちらは森に入った頃から一度も見かけていない魔獣達を探すことにした。
のだが、
「っとに、魔獣達はどこ行ったんだ?あぜ道は黒いし、人間が立ち入らない場所は草や苔で覆われてて足跡は確認できないし…」
「感の鋭いアイツ等じゃ考えにくいけど、まさか黒いモノに触れて魔力も感じられないほどに弱ってる、なんてことになってないだろうな?」
「…まさかな。と思いたいところだけどその線が一番怪しそうだ」
2人で話しているうちに一番考えたくない現状が思い浮かんだ。
野生である彼等がこの禍々しいオーラに気が付かないはずがないが、もし不可抗力だったら?
「弱った魔力は俺達じゃ追いにくい。
ルイスたちと合流しよう」
「賛成だ。ンじゃあ取り合えず空に出るか」
地面スレスレまで下降していた体を木々の背よりも高く、森を見渡せるまで上昇した。
「さて、
「大丈夫、すぐ来る」
すぐ来る、という言葉に魔力を乗せて、ルイスへ風の便りを送る。
勿論、アイビーはこの行為には気が付いていない。
「すぐ来るって言ったって…って、来たわ。
ほんとお前らどうなってんだ?」
「幼いころからずっと一緒だったからな。互いの気配くらいはこの森の範囲内くらいならわかるよ」
西側からルイスとシバが猛スピードでこちらにやってくるのが見えた。
ちゃんとここまでの距離を計算してブレーキをかけているようだけど。
「…よし、来たな。西には何かあったか?」
フルフルと頭を縦に振るシバと、何かを伝えようとキュウキュウと鳴くルイス。
「何があった?って聞いたところでなぁ。俺、言霊の応用魔術は苦手…。
エヴ、お前できるか?」
「あー…言霊かぁ。
細かいことまではわからなくても、大体ならルイスの言いたいことが分かるからやったことないな…」
「えっ、わかんのかよ!
俺、なんとなくしかわかんないんだけど…」
「いや、それ普通だろ。
俺とルイスはほぼ兄弟同然に育ったからな。それでなんとなくわかるだけだよ。
(魔族同士のテレパシーで全て理解できるけどな)」
魔族のみならず、魔力の多い俺は相手が下級だろうが上級だろうが関係ないけどな。
「で、だ。西側には黒い道はあったか?」
宙に浮きっぱなしでは魔力の消費がとんでもないことになる、というアイビーの提案でそれぞれ相棒の背に移り、北側の山の頂上へと降り立った。
そして改めてルイスとシバに西側の状況を聞いている、というわけだ。
『あの黒いモノですが、西側の洞窟へと続くあぜ道の途中から発生していました。
その黒い道は洞窟内まで続いていましたが、私たちの大きさでは入れず、その周辺を探索していました』
そうか、西の山にも黒い道が出現…。
と、いうことはやはりこの深緑の森-ディフォル-の山中、地下に異変が起きていて、地下へと続く道が黒いモノによって遮断されている、ということか。
「黒い道はあったか、という問いに対してシバも頷くってことは、そう言うことなんだな。やっぱりこの森の魔獣達が心配だ。探しに行こう。
シバ、ルイス、西側やここに来るまでの間で地上に魔獣族はいたか?」
というアイビーからの問いには2体とも頭を横に振った。
「そうか…」
「ここで考え込んでいても埒が明かない。
ルイス、シバ、種類は問わない。この森にいるはずの魔獣達の気配を探ってくれ。
黒いモノに魔力を吸われて弱っている可能性が高い。
…できそうか?」
ルイスは真っすぐ俺を見つめて、一度頷いた。
シバも同じように頷くと、2体揃って目を閉じ集中し始めた。
-Luis-
エヴァン様たちと別れ、シバと共に森の西側の探索に来たものの、相変わらず獣族達の姿は見られない。気配を探ってみても、何かもやもやしていて、いまひとつのよう。
『…ここから黒い道に変わっているようですね。どうして途中からなんでしょう』
『さァ。オレにはわからないガ、エヴァンサマならわかるかも知れないナ…』
確かに、エヴァン様ならこんな手間をかけるより早く真相に辿り着きそうです。
ですが、エヴァン様は”遊んでやる”と仰っていた。
…ということは適当に時間をかけてヒトと共に解決するつもりのようですね。
『…と、エヴァン様がお呼びのようですね』
ふとやってきたエヴァン様からの風の便り。内容はエヴァン様の元に帰ること。
シバを見るとお二人の気配のする方角にすでに向いており、
『そうカ。じゃアどちらが早く主人の元につくカ競争ダ』
と言いだした。
言うが早いか、翼を大きく動かしたシバは既に目の前にはおらず。
『シバって時に子供のようですね』
普段は寡黙で、あまり言葉を発しない彼ですが、こうして偶に、飛ぶことを覚えたばかりの子どものようにはしゃぐことがあるのです。
そのスイッチがいつ入るのかは今はまだ何となくしかわかりませんが、子供のころに出会っていたらきっと仲の良い友人になれていたのではないかとも思います。
まぁ、でも、
『スピードでは負けませんよ』
距離を詰めて詰めて。
エヴァン様達の目の前に辿り着けるようスピードも計算しながら、シバを抜かし。
今日も今日とて、私が先にエヴァン様の元に辿り着くのです。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます