第35話 燃え続けるもの


-Edward-


 南東の山の麓に降り立った俺達は、地面の色が真っ黒であることを確認して、何とかドラゴンに乗ったまま山中に入れないかと辺りを捜索していた。



「にしても、辺り一面真っ黒ですね。本当、足の踏み場もないってやつですね」


「エヴァン達ならこんなところで立ち止まることもないけど、俺達じゃなぁ…」



 生憎、オーラの漏れ出ている入り口はドラゴンには小さく、入ることはできない。あの二人ならお得意の魔力で難なく進めるだろうが、俺達には難しいところだ。



「仕方ない、此処には目印を置いて、この山の上空から探ってみよう。

トルマン、可能な範囲で構わないから洞窟の入り口に近づいてくれ」



 木々の上を旋回していたトルマンに、洞窟の入り口にできる限り近づくよう指示を出した。目印を作るために。


「エドワードさん?目印なんてどうするんですか?

エヴァンさんのように地面を持ち上げることなんてできないし…」


 確かにエヴァンのような〈地〉の魔力は持ち合わせていない。

俺が持っているのは〈炎〉の魔力のみ。


一つしかなくても経験値を積めば、〈炎〉の魔力でもできることは他にも増えるもんだ。



「そうだ、此処でいい。このまま少し留まってくれ」


 トルマンには地面から1、2mほど離れた空中で保持するよう頼み、洞窟の入り口に転がっている岩石に目をつけた。

そして示指だけを伸ばし、縦に振り上げ呟く。



『〈炎〉よ 消えることなく 燃え上がれ』



 岩石に〈炎〉の魔力を纏わせ、〈炎〉属性の岩へと変換させる。

そして空気に触れたその岩石から火花が散り始め、やがて炎となった。



「え、エドワードさん、この炎は…!?」


「ん?俺の魔力を岩に纏わせて発火させただけさ。

この森は澄んだ空気で満ち溢れてるからな、炎の付きが良いな~」


「え、いや、でも森の中で燃え続けるのって危なくないですか?」


 ま、知らない人は皆そう言うよな。

万が一、木々に炎が移りでもしたら任務どころじゃないもんな。

ま、でも、



「それなら大丈夫だ。

対象物が元から燃えにくい・燃えないモノであれば、基本的にこの炎に自分以外のモノを燃やす力はない。


今回、俺が使ったのは岩石で、これは元から燃えにくいモノだ。


幾ら風が吹こうが雨が降ろうが、魔力が足されようが、木々に炎が移ることも、人的被害も起こさず、俺が消さない限り炎が絶えることはない。そういった種類の炎ってわけさ」


 「そんな〈炎〉の魔力もあるんですね…!

僕、初めて見ました!」


「ウィル君も〈炎〉属性であるならいつか使えるようになるさ。

もし練習したければいつでも聞きに来てくれて構わないよ。


て、ことで目印は此処に置いておいて俺達はこの山の上空へ向かおう。

敵さんが地下したにいるのか上にいるのかわからんが、此処で時間をつぶすよりもずっと良い」



 トルマンに上昇の指示を伝えると、紅い翼を大きく広げ、上昇した。

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