第33話 日記の



ゴゴゴゴゴ……!!


 思わず耳を塞ぎたくなるほどの地響きが森中に響いた。


 持ち上げられた地面はやはり砂や土といった感触のものではなかった。

冷たくもなければ熱くもなく、自然に発生したものとは思いにくい。

石のように硬く見えるが、手で触れるとふわふわとした感触がした。

それから、”何か良くないモノ”といっていたモノの気配の正体に一つの推測が思い浮かぶ。


「…土だったものが腐りでもしたのか」


 腐葉土の感触と似ているような気がするが、ソレはただふわふわしている。


 掴んでよく観察しようとしたところで、何かに魔力が引かれる感覚が俺に雷のように走った。


 見ると先程掴もうとしていた黒い何かの色が白っぽいような、緑っぽいような、〈風〉の魔力を衝撃波として扱った時に具現化されたあの色になっていた。


「…これが、」



 これがあの日記にあった魔力を吸い取る作用のものなら、上空にいる場合はどうなのだろうか。


「ルイス」


『少々お待ち下さい』



 この森の上空を飛んでいるシバ。

おそらくこの黒い物体は触れたものの魔力を吸い取るような作用があると考えていいだろう。

風を送ればわざわざルイスを上空に放たなくても結果なんてすぐわかるが、地上から上空のシバまでヒトの聴力で拾える範囲を大きく逸脱している。

こんなしょうもないことで不信感を抱かせるわけにはいかないからな。



『シバには何の影響もありませんでした。何かよくわからない気配は上空にも漂っていますが、本体に触れなければ吸収されることはないと思われます』


 と、いうことは…。



「エドワード、此処からはドラゴンを足にした方が良さそうです。

先程コイツを掴もうとして魔力を吸われました。ルイスやシバの様子から、この黒い物体に触れなければ影響はないと思います」


「そうか。これが日記にあった魔力を吸い取るものか…。

しかしここは道がそんなに広くないからな…。

しかたない、上空から調査するしかないか」


「俺は〈風〉の魔力でできるだけ地上の近くで調査を続行します。

なにかあれば発光弾を打ち上げてください。すぐに向かいますんで」


「わかった。ウィル君とパンジーさんは俺と行動してくれ。アイビーはエヴァンと。いいか、エヴァンもアイビーも無理はするなよ。

日が暮れる前にニコラス側の入り口に集合だ。いいな?」


 エドと他2人がトルマンの背に跨り、木々に擦れないギリギリの高さまで上行し、シバは引き続き上空から見張りなどをしてもらうためルイスと共に引き続き上空へ。

俺とアイビーは〈風〉の魔力を発動させて飛行状態となり、3手に分かれて奴らの痕跡、手がかりを探しに出た。



「よし、エヴァン行くか。万が一のためにペアは崩すなよ」


「了解した。アイビーこそはぐれるなよ」

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