第31話 心の危機
-Evan-
「…これが祖父の残した日記です。
魔王がいるであろう世界はこことは正反対と考えていいと思います。
明るい空に浮かぶは月、暗い空に上がるは太陽…。
入り口の手がかりは、”空間の歪み”ということになりますね」
執務室はウィルが日記を
団長は難しい顔で瞳を閉じ、上級も中級も何か考え込んでいるような面持ちだ。
俺はと言うと、今聞いていた話を嘘偽りなくルイスへと風を飛ばしていた。
アイビーの
ルイスの親父さんによると、”特に何の変りもないが、先代の魔王様が顔を見せに帰ってこいと言っている”らしい。
1年も帰って無いわけじゃないんだしそろそろ子離れしよう…父上…。
俺ももう100歳だし、子供じゃないし…。
「空の”歪み”、か…。
100年前のその後観測されていないところを見ると、探すとなると一苦労だな…」
エドをはじめ、団長も頭を抱え始めた。
「歪みなんか俺見たことないぞ…。そもそも歪みってのは目に見えるものなのか?」
目に見えるかもわからない、しかも以前は
確かに、ヒトが探すには厳しい話だな。
「…エヴァン、お前のその高い魔力をもってしても探し出すのは困難か?」
え、まさか団長、俺の正体に気づいてる?え、マジ?
「…まず、魔力についてはお褒めに預かり、光栄です。
俺は気配探査はある程度はできますが、”歪み”については見たことも感じたこともありませんし、自信はありません。
代わりと言っては何ですが、ここ最近に出現した
なんだ…、魔力の高さで話を振られただけか。
俺もよくわからない話だし、ここからが面白そうなのに、俺の正体が魔王だとか知られてここで話が終わるのは面白くなさすぎる。
ていうか、魔力が高いからって俺に探し出せないかって、いきなりすぎるだろ!
「…それもそうじゃ。出現ポイントを調査することが先じゃな。
ドレッド、捜索隊の属性を混合にして各ポイントへ派遣してくれ」
「了解した、アーガン団長」
そしてその後、各属性混合の捜索隊が結成され、俺のチームはエド、ウィル、パンジー、アイビーとなった。…何だか”いつものメンバー”って言葉がしっくりするような並びだな。
俺とアイビーで風属性が重なっているが、俺が〈地〉を、パンジーが〈水〉の魔力を持ち合わせていることからこの組み合わせになった。それにウィルとパンジーは俺達3人と動いていたことが多い、という理由で組むこととなった。
これまでに出現が観測されたのは”深緑の森-ディフォル-”を含めて8か所であり、東西南北それぞれのフィールドで報告が挙がっているそうだ。
そんな中、俺達は南の”深緑の森-ディフォル-”へと派遣が決まった。
調査期間は3日間。そして今日から3日以内にはこの本部へと帰還し、得た情報の整理を行う。詳しい話し合いは今よりも情報を集めてからということで解散となった。
解散となったその足で皆、空へと飛び立っていった。そして執務室には団長と副団長だけが残り、飛び立った俺たちを見送っていた。
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