第30話 100年前のあの時
「ここからが魔王に関する内容です」
〈_年 春〉
サラと共に研究のため”陽の泉”に訪れた。そこはそれぞれの属性の妖精が古来から住んでいると言われている聖水の泉で、邪悪な者は一切立ち入ることも、足を踏み入れることもできぬその場所に奴らは突如として現れた。
どの文献でも見たことのない姿形の奴らは鋭い眼光と牙を持ち、妖精たちをその場から追い出してしまった。俺達はその生物を
妖精たちは住処を奪われ、緑の多い南の地へと命からがら逃げ出していった。
そしてその後、邪気によって誰も立ち入ることのできなくなったその場には奴らが住み付き、各地で
この日記は木の実の染料ではなく魔力を利用して頭で考えた文章をそのまま書き込めるようにしておいて正解だった。魔力の消耗は否めないがこれなら戦いながらでも同時に行える。
〈同年 秋〉
俺は仲間たちと共にその後を追った。辿り着いた先は全てが凍り付き、奴ら《イレギュラー》以外の生物は踏み入るだけで凍り付いてしまう場所となっていた。
奴らの多くは獣の姿をしていることが多く、
〈同年 冬〉
凍り付いたその土地で何が起こっているのか確かめるべく、あらゆる手段を投じてようやく土地に踏み入ることができた。
あの土地は、
〈風〉の魔力で地面から浮くようにして土地に入っても、〈火〉の魔力で地面を焼きながら入っても、〈水〉をあえて凍らせて氷の道を重ねるも、〈地〉の魔力で地面を割って入るも全て不可能だった。
そのため魔力を2つ掛け合わせてみたところ、〈風〉と〈火〉の二重にすることでのみ、土地に入ることを許された。
俺達は奥へと進んでいった。
どれくらい進んだだろうか、拓けた土地に地下へと続く洞窟を発見した。
土地に蔓延している邪気は洞窟の奥からひしひしと伝わってくる。
この先に手がかりがあると考えた俺たちは、外で待つ別の仲間に向けて発光弾を打ち上げ、体制を整えるため一度拠点へ戻ることにした。
〈同年 冬 B8F〉
洞窟に至るまでの間、先日もそうだったが魔物は一切現れることはなかった。しかし洞窟に入った
奴らにも属性があるようだが、大半の攻撃には黒い
そのオーラにはこちらの魔力を吸い取るような作用が確認された。
ここはおそらく地下8階辺りと思われる。
下へと続く道には階段なんてものはないが、大きく下がった道に〈地〉の魔力で手を加えることで階段のように削ることができたが相当硬いらしい。
〈B13F〉
地上からここまで大分降りてきたように思う。下層へ進むにつれ魔物も強くなってきているがまだ道は続いている。
仲間たちにもそろそろ疲労の色が見えてきた。
回復魔法で体力は回復するも、魔力ともなると中々回復できない。
外から持ち込んだ魔力回復効果のある木の実もその内底をつきそうだ。
できるだけ早く最下層に辿り着くことを願う。
〈B_F〉
ようやく最下層らしきところまで辿り着いた。
最下層は細く長い道がどこかへと繋がっているようだ。
ひたすら突き進み、邪気の元へ。
数は奴らの方が多く強靭だがなんとか地表へ追い出すことに成功。
しかし上空に逃げられてしまった。
〈風〉の術者と共にそのまま奴らの後を追っているとはるか上空に歪みを見つけたかと思うと、奴らは一目散にそこに潜り込んでいった。
此処で逃がすわけにはいかない。
更に後を追った。
歪みの奥は大陸だった。俺たちのいる世界と何ら変わらない明るい世界のようだが太陽ではなく月が照らしていた。
黒い靄を身に纏った奴らを追いかけた。
どれくらい飛んだだろう。
突如俺たちの前に巨大な竜が現れた。人間の大きさと比較などできないほどの大きさで突然火を噴いた。
俺たちは何の対処もできぬままそのまま謎の大陸に落下した。
〈__〉
目が覚めると暗い空に月ほどの明るさの太陽が上がっていた。
先頭にいた俺は余程ダメージが大きかったのか、仲間たちよりも2日ほど遅れて目を覚ましたそうだ。傷はサラや回復専門の皆が手当てをしてくれた。
その後回復した俺たちは竜に遭遇した辺りまで飛んでいくことにした。
すると近くに大きな城のような建物とその建物へと入っていく別の竜を発見。
ここが奴らの拠点なのではないか。
そのままその建物に進軍した。
中には
竜を薙ぎ払いつつ奥へ進むと____な男が竜と共に現れた。
男は俺たちに向かって黒い魔力をぶつけてきた。
なんとか防御をしようと、
明るい空に太陽があることからここが元の世界であることが判明。
あれは裏の世界の、”魔王”と呼ばれている者だったのかもしれない。
俺たちが放りだされると上空にあった歪みは消えていった。
〈__〉
その後、腕にはあの時受けたであろう魔力が呪のようなものとなって俺の身体に残ってしまったが、サラや息子たちには何の影響もないようで良かったと思う。
あのあともう一度歪みを探してみたが見つからず、ぱったりと観測報告もなくなった。
今後また奴らは現れるかもしれない。
その時のためにこの日記は息子へ託すことにする。
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