第29話 3の昇級


-Evan-


「これより、捜索部隊を結成する。


各部隊の隊長・副隊長以外の隊員は向かって右側へ集まってくれ」



 エドの掛声で一斉に群が2つに分かれた。

勿論俺たち3人は右側へ、のはずが。


「あ、仮入団者は一旦前へ。団長から話があるそうだ」


 ということで上級群のそのまた奥へ。

実を言うとしっかりと話をするのは入団試験以来だ。



「…うむ、まどろっこしいことは抜きで早速本題だが…、


この場を持って貴君らの仮入団期間を終了とする。


ティム、ヴェルディはそれぞれの属性の下級へ。

エヴァン、お前は中級へ。他者共々異論は認めぬ」


 ん?いきなりぶっとんで中級?

いや、まぁヒトにしちゃあ多すぎる魔力だとは思うが、そんな飛び級でいいのか。



「上級含め、それぞれの隊長・副隊長皆の意見をもとにしての采配だ。

3人とも、それぞれの配属先で精を尽くしてくれ。


ティムとヴェルディはその他の下級と共に通常任務にあたってくれ。

…戦況次第では下級の力も借りることになるだろう。

その時のためにしっかりと牙を研いでおけ」

 

 2人は凛とした眼差しをエドに向け深く、一度頷いた。

 そして中級へとぶっ飛びあがった俺に対してティムとヴェルディは「頑張れ」と一言告げて下へと降りて行った。




「…さて、ここからが本題だ。

そこの勇者の子孫よ。言った通り、100年前の出来事について知っていることすべて話してもらおうか」



-Will-



 …僕は今、普通じゃ立ち入ることのできない騎士団の本部に、しかも団長さんの部屋にいる。


 

先ほどまでいたティムさんとヴェルディさん(?)は颯爽と部屋を去り、部屋中の目線が僕に向いていた。



「100年前の出来事は祖父の残したこの日記に記されていること以外は僕にもわかりませんが聞いて下さい」


「…因みに100年前の勇者である君のお祖父さんはただの術者だったのかい?」


 アイビーさんが手を挙げ、目線を僕に合わせるように少し下を向いた。


「祖父は100年前には少なかった精霊遣いであると同時に、各地の生物を調べる生物学者であったと祖母から聞きました。

魔王討伐に至った経緯についてもおそらくこのことが関係しているんじゃないかと僕は思っています」


「成程、以前ニコラスで君が見せてくれた時にその日記で使われている文字の染料が〈水〉と〈地〉の魔力でかかれた特殊なモノだったもんだから、少し気になってな。…あぁ、すまん、話してくれ!」


 そうだったのか…。そういうことなら、幾ら水に濡れても文字が薄まらないなぁと思っていたことに合点がいくよ。



「じゃあ聞いて下さい。

この日記の始まりは—…」





 







 

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