第28話 警備団総本部


 

《警備団総本部》


-Argand-


 この世界においての警備団は本部を本拠点とし、ワイアットよりずっと北に位置している。建物は大きなロの字型をしており、各地方の拠点ごとにフロアが分れており、ここのトップは正面玄関から一番奥の防音壁で作られたこの部屋にいる。



「…各騎士団団長殿、今回集まってもらったのは他でもない。

各地で起こっている異変についてじゃ。


森、湖、山岳地帯…今のところ一般住民が危険に晒されたという報告は受けていないが、時間の問題と思っても良いじゃろ。


そこでじゃ。今回の騒動の元を探そうと思う」


 凛とした警備団総本部の総括者、ジェイムス殿は精霊遣いとも言われているだけあって保有する魔力は世界でもトップクラスだ。


そのジェイムス殿が従える警備団はこの本部だけでもざっと100人。各拠点に20人前後。勿論、個人の強さも半端ではない。

その警備団だけでも探せるだろうに、わざわざ各地の騎士団の団長を招集したのだ。

今回の騒動はそれほど何か大きな力でも働いているのだろうか。



「アーガン」


「何でしょう。本隊長殿」


 全ての目がこちらを見据える。


各地の騎士団数は大きいもので東西南北にそれぞれ1つで、

ワイアットがドラゴンで〈風〉と共にあるものならば、

他はゴーレムで〈地〉だったり、ケルピーで〈水〉、サラマンダーで〈火〉など。


実際、実体があるのはドラゴンくらいで、他は所属している人間の属性がその通りであることが多い。


ワイアットはドラゴンさえ扱うことができれば、魔力が重複していても入団は可能だが、他は純粋な魔力のみの団員らしい。


そのせいか、各騎士団の中でもワイアットの規模が一番大きく、強いとされている、らしい。



「何か考えでもあるのだろう。話してみろ」


「…本隊長殿にはなんでもお見通しのようですね。


実はニコラスの街に勇者の子孫を名乗る少年を発見したとの報告が団員から上がり、その先祖の日記には『人間界に進軍してきたのは人間界には存在しないはずの生物であった』と記載があったようです。


今回の騒動と類似している点があるので、少なからずその”魔王”が関係しているのではないかと」



 ここ100年間は特に何の噂もなかった”魔王”。

それがどうして突然、という疑問は浮かぶが闇の世界に生きる住人たちの考えは理解できない。


「”魔王”か…。

文献によれば相打ちになったという報告以降の足取りは掴めておらん。

探すとなれば困難を極めるかもしれんな…。


アーガン、お主のところの騎士団に捜索本部を設置し、その子孫と協力して”魔王”の居場所を叩きだすのじゃ」


 ”お主の騎士団が一番力もあるし、何よりその子孫の少年がいるならその方が手っ取り早いじゃろ”


 敬礼が早いか、返事が早いか。

こちらが捜索本部設置の許可を求める前に指令を下すとは…。

最前線で戦っておられたあの頃の感は鈍ってはおられないようですね。


「承知いたしました。我が騎士団の精鋭部隊より、捜索隊を選出いたします。

何か進展あれば随時報告させて頂きます」



 

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