第27話 減点


-Evan-



 アイビーが酒場を出て宿屋の部屋を取ったところで帰還指令が下り、ウィルを連れて帰ってこいとの事だったので3人で騎士団へ帰還。

道中、というか空の上でエドワードとティムに遭遇し、6人で講堂へ。



 で、アイビーが上級に昇格したという話になり、団長が帰ってくるまでウィルに昔話基、先祖の日記を読み上げてもらうことになった。



「ええと、長いかもしれませんけど…」


「構わん。100年前の出来事を文献以外で知っているのは少なくともお前さんくらいだ」



 突如、講堂の入り口から低く、太い声が聞こえた。

と思ったら団長とその他上級達の姿だった。



「団長!戻られましたか!」


 エドワードとアイビーがが団長の下まで駆けていく。中級以下の団員たちは左右に散り、講堂の中心に道を開けた。



「あぁ、警備団とも話が付いた。

これより、中級以上で捜索隊を組む。各隊、隊長・副隊長は私のところに来い。


…そこの少年が勇者の子孫か」


 壇上まで上級を引き連れ歩いていた団長がゆっくりとこちらを向いた。


「そうです。彼の先祖が100年前の勇者と呼ばれていた者です」


「…ではその少年とその仲間も部隊に組み込む。仮入団者もだ。着いて来い」



 え、俺たちも?てな感じでティムがこちらを向いた。

…そういえばだけど仮入団者2人くらい少なくないか?


「あの、エドワードさん…仮入団者って」


「あぁ、今のところ残ってるのはお前ら3人だ。ほら、いくぞ」


 エドワードに背を押され、俺とティム、そしてあのリグとかいう団員の後ろにぴったりとついている娘が団長の後を追う。



「エヴァン、あの娘の名前知ってるか?」


 ティムがこっそりと耳打ちをしてきた。


「いや、聞いたことないな。そういうティムは知ってるのか?」


「知らないから聞いたんだろ!」



 螺旋階段を上りながら小声で喧嘩じゃないけどヒートアップ。

エドワードに聞こえてしまったようで、隣のリグから一声飛んできた。


「あれ、あなたたちこの子の名前知らなかったっけ?

いい機会だし、自己紹介したらどう?どうせ今から部隊も組むことだし、知らないと困るでしょ?」


「え、あ、はい!俺はティムと言います」


「俺はエヴァンです」


 階段を上りながらなので俺たち二人と娘の間には2人分の距離が空いているため少し大きな声になる。

他の団員達も何か話しながら移動しているためちゃんと向こうに聞こえているかはわからないが、向こうからも声が聞こえない。


「この子、声が小さいことだけが今のところの減点項目なんですよね…。勿体ない」


 と、リグの溜息が。うっすら声が聞こえるだけだが、何だかその姿が容易に想像できた。


「まぁまぁ、今ここはうるさいしな。リグが代わりに言ってやれば?」


「え~…、まぁ今回だけですよ。

…この子の名前はヴェルディ。属性は〈水〉歳は…女性だからヒミツね。

後は自分から話しなさい」


 リグとあまり変わらない身長で、1.5m前後くらいか。

ティムで1.8m、俺で1.7くらいだけど、女性にしても小さい方なのだろうか。

…あんまり大きさのことを考えるとリグに怒られそうだな。


 数段上にいる、代わりにリグに名前を告げてもらった娘はアクアブルーの長髪を揺らして頷いたのが見えた。


「ま、自己紹介はこれくらいにして。入りますよ、執務室」


 仮入団者含め、各部隊の隊長・副隊長、そしてウィルとパンジーが一同にだだっ広い執務室に足を踏み入れた。






  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る