第13話 再会



「で、カレンさんが個人任務のために今日一日は俺達3人で行動することになった。

俺は上級のエドワード。好きに呼んでくれて構わないよ」


 大広場でエドワードを待つこと十数分。昨日見たスキンヘッドの男も一緒になって出てきた。どうやらカレンという名の女は別の任務のためにスキンヘッドと3人で任務に向かうことになったようだ。


「俺はティム。出身はここより西の街。俺とドラゴンは〈地〉の魔力を持っている。…よろしく」


 スキンヘッドで体格のいい男は名をティムといい、〈地〉の魔力の持ち主らしい。俺よりも身長が高いおかげで少し見上げる形だが、よく見ると男前のような顔つきだ。なるほど、あの女が目をつけた気持ちも分からなくもない。 

 

 そして3人の名を明かしたところで、依頼主の待つ酒場へと向かって歩いている。

歩いているわけだがドラゴン達は、森から大広場までは飛んで移動したものの、流石に街を歩くのに大きすぎるということで、そのまま大広場で待機させている。

それから城を出て大通りと幾つかの路地を抜け、見覚えのある酒場に到着した。





《酒場 ワイドベリー》



「エドワード、依頼というのはこの酒場の主人からですか?」


「あぁ、ここは俺の行きつけの酒場で仕事終わりにサービスしてもらう代わりに、こうして依頼を受けているんだ」


 エドのいう酒場とは俺が初めてこの街にやってきた時に泊まった宿屋兼酒場のワイドベリーだった。



「あ、いらっしゃい、エド!」


 エドを先頭に木の扉を軽く押して中へ入るとあのエルフ族のマーガレットが朝にも関わらず忙しそうに注文を運んでいた。


「あら?エヴァンじゃない!

あなた入団試験に合格したのね、おめでとう!」


「マーガレットありがとう。今日はエドワードと仕事に来たんだ。よろしくね」



 3日前の俺のこともちゃんと覚えておいてくれたみたいで、エドの後ろに俺がいることに気が付いて仕事そっちのけで飛んできた。(相変わらず器やら材料は飛び続けている)



「なんだ、エヴァンも来たことがあったのか。なら仕事もしやすいだろ。

マーガレット、仕事はいつもと同じルートでいいのか?」


「えぇ、ルートはいつも通りよ。

ただ今回は荷物の中にウルフの好む香草があるから獣が出やすいかもしれないわ」


 ルートは南の方角の隣町、ニコラスからワイアット間の森を通って街を囲む外壁の南側のゲートまでの道のりで、ひとまず隣町まではドラゴンに乗っていくらしい。正直この辺りにどんな街があるのか何一切わからないが、周辺探索の感覚で今回の任務に取り掛かろうと思う。


「大丈夫だ、俺もいるし今回は仮入団の2人がいるからな。

店に戻ってきたら3人分の昼餉を頼んだぞ」


「それは腕によりをかけて作って待ってるわ!気を付けてね!」



 そして、ルートを確認したところでいったん店の外に出てエドが首から下げていた橙色の笛を鳴らした。


この笛の音色はある特定のドラゴンに聞こえるようで、直径がワイアットの街の中程であればどこにいても聞こえるという。

それと似たものに、俺たち魔族には風の便りがある。

魔族の場合は〈風〉属性でなくても風の便りという呪を使うことができ、どこにでも誰にでも声を届けられるようになっている。


…話しが外れたが、その笛の音色を聞いたらしいトルマンが他2頭を連れ、店の前の広場へと降り立った。






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