第11話 脱落
-Evan-
「やぁ、昨日はよく眠れたかい?」
「えぇ、どうやら右奥の部屋は俺しか使っていないみたいですし、思っていたよりも快適でしたよ」
昨日説明の受けた食堂へ行くとたまたまエドワードを見かけ、そのまま同席させてもらっている。
「今日は街の酒場からの依頼が一件あってな、それに同行してくれ」
「街の酒場からですか。それはどういった内容で?」
今日の朝餉は穀物と色とりどりのリーフのサラダのようだ。
やはりヒトも魔族も何ら変わらぬものを口にしている。
「よくあるのは仕入れだな。この街の外には魔族の獣が多くうろついていてな。
仕入れの馬車が襲われないように警護に当たることが多い。今回もそれだ」
なるほど、商人程度では獣は追い払えない、ということか。
相変わらずヒトとは弱いものだ。
「食べ終わったらルイスを連れて大広場で待っていてくれ。オレは少し団長に用があるんでな。
…あぁ、そうだ。せっかくだからオレの契約している
「トルマン、ですね。では先に行って待ってますね」
食べ終えた俺達は食堂を出たところで一時別れ、ルイスとトルマンの待つ森へと足を向けた。
-Edward-
「団長、エドワードです。定期報告に参りました」
本部の6階に団長と副団長の執務室はある。
いつもの時間に朝餉を終え、いつもと同じように階段を昇り、報告に向かう。
「入れ。…これで揃ったか」
中には既に他4人の審判者が会議の席に着いていた。
今から始まるのは仮入団者についての報告並びに選定だ。
昨日からのひと月の間、週に1度の頻度で行われるが、第1回目は毎回決まって試験2日目となっている。
「…ではこれより定期報告会を始める。
まず受験者エヴァンについて報告を述べよ」
「はい。まず団員との接し方ですが今のところは何ら問題ありません。
昨晩、森の奥へも連れて行きましたが、他の
あの森にいる
人前にその姿を現すことはないが、彼も”審判者”である。
彼が見ているのは
もし強制服従の呪で従わせていたり、試験のその場しのぎなど契約していない
「そうか。では次の報告を」
ひとまずこれでエヴァンは次の審査へ移行できる。
次の審査は7日後の今日。もしそれまでに何か問題を起こせばどれだけ魔獣使いとして優秀であってもそこで終了となる。
まぁ、エヴァンなら問題なさそうだけど。
「…報告によれば、昨晩響いた咆哮は2つ。これで早速2名の脱落者が出た。
内1名は禁忌の呪、もう一人は野良だ。野良に関してはドレッド、お前に任せる。 カレン、禁忌の呪を使用した者については警護団へ移送しろ」
「承知した」
「なんだ。アタシがメンドクサイ方なのね。まァいいけど。了解、団長」
「…ではこれで定期報告会を終了する。各自持ち場に戻ってくれ」
さて、報告も終わったしエヴァンも待たせていることだし早く戻ろう。
…と思ったけどカレンさんが俺の目の前を塞いでいて通れない。
カレンさんはオレよりも後に上級へと上がったが、歳はあちらの方が上なので一応敬称をつけて呼んでいる。
「カレンさん、そこ退いてくれないと俺任務行けないんですけど」
「煩い。エド、アンタ今日の依頼にうちの受験者も連れて行きな」
「え~、別に俺んとこの任務じゃなくても変わらないじゃないですか。
リグのところでどうです?」
警護団へ移送するという個人任務が割り当てられた以上、確かに受験者は連れてはいけないが、何もオレ達の任務に同行させなくてもいいだろうに。
昨日カレンさんが選んでいったスキンヘッドは面倒くさそうだから、最年少で上級へと上り詰めたリグに代わってもらおうと、リグにも話を振る。
「えっ⁉エドさんが頼まれたんですからエドさんが連れて行けばいいじゃないですか!」
リグは心底迷惑そうな顔で螺旋階段を下っていった。
あ~あ、逃げられた。
「て、わけだからアンタが連れて行きな。アタシは今日一日は面倒見ないから」
「…今度夜番代わって下さいね」
カレンさんは首から下げた翡翠色の笛をひと吹きすると、バイオレットの長髪を靡かせそのまま窓から飛び降りていった。先ほど音で呼びつけた
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