第10話 匂い


-Luis-



 外を知る良い機会と思い、エヴァン様と目の前の男に森に連れてきて頂いた。

木々の生い茂るここは獣族にとってはそれなりに心地のいい場所となっているようです。

その後エヴァン様は(恐れ多くも)私の躰を一撫でして、塔へと戻られました。

 そして、エヴァン様の魔力によって元の大きさに戻った私ですが、どこからか集まってきたドラゴンに四方を囲まれております。




『オマエ、ヒトの匂いがしないナ。ドコからきタ?』


 私を除いたこの場にいるドラゴンでは一番大きいであろう竜が私の目の前に立ちはだかります。


『私は魔界からやってきた次期魔王様のお付きの者です。ヒトの匂いがしないのはそのためでしょう』


 私が他のドラゴンを知るのに良い機会と申し上げた際、エヴァン様は竜には私たちの正体を隠さなくてもいいと仰ったので、何一つ隠さず話しています。

何故なら、ヒトは上級位であっても獣族の言葉を理解できないと、先ほどの男が部屋に案内していた時エヴァン様に話されていたからです。



『なるホド、というコトは先程いらっしゃったのがアの小さかった王子というわけカ…』


『エヴァン様をご存じなのですか?』


『そりゃア、ドラゴンなら生まれたてでナイ限りしってるサ。

そうカ…100年前はアんなに小さかったのになァ…』


 これまでずっと魔界にいた私は知らなかったことですが、

ドラゴンは魔界に住んでいなくとも風の便りで大方の魔界の状況を皆知っているのだとか。

流石に魔王様が世代交代されたのはつい最近のことなので知らなかったようですが、ここにいるドラゴン達は皆、エヴァン様のお仲間だそうです。


『そうカ、オマエがルイスだな。…オマエの親父様は元気か?』

『父様ですか?…えぇ、私が魔界を出るときも先代の魔王様と共におられましたよ。貴方は父様もご存じなのですか!』


 まさか私の父様を知る方までいるとは驚きです。


『オマエは知らないだろうガ、100年前まではオレはオマエの親父様の部隊に居たのサ。オレは先代の魔王様の命で、アの時まだ子供だったここのドラゴン達を連れて降りてきたのサ』


『…そうだったのですね!私とエヴァン様は勇者とやらを探しに来たのです。

その道中、偶々ここを見つけて入ったのです』


『そうカ、そうカ!さっきも言った通り、ここのドラゴン達は皆次期魔王様の部下になる。オレ達はオマエとエヴァン様を歓迎するヨ。

オレはエドワードと契約しタ、トルマンだ。よろしくナ!』



 まさかこれほどとは思っていなかったのですが、ここにいるドラゴン達の素性を知ることができ、仲間であると快く受け入れて下さいました!


 周りにいたドラゴン達は私とトルマンさんの話を聞いて羽を擦り合わせてくれました。竜にとって、羽を擦り合わせるというのは相手を信頼するという意味があるのです。



『改めまして、私はエヴァン様お付きのルイスと申します。


以後、お見知りおきを!』



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